相手が油断していたからですよ
上陸した部隊の一部ではあるが、目の前で他国の探索者が全滅した。
正人は助けに行こうとしたのだが、ユーリに止められてしまい結局は動かなかった。
全滅の原因はロイヤルガードが三体出てきたことにある。混乱した部隊では太刀打ちなどできない。生存者ゼロという結果になって、死体が食料庫に搬送されている状況だ。
助けに行くこともできず、ただ見ていた正人たちは罪悪感を覚えながらも今後について話し合う。
「正人はこれからどうするか決めたか?」
「ロイヤルガードと運び屋のどちらかを追跡したいと思っています。ユーリさんはどっちがいいと思いますか?」
「どちらもマザーへつながる道に案内してくれる。追跡するのであれば運び屋だが、先にロイヤルガードは排除しておきたいな」
先ほどの戦いを見ていれば、一般兵の戦いにロイヤルガードが混ざってくる危険があるとわかった。
マザー前の部屋に閉じこもっているだけではなく、重要施設を襲撃する際は駆けつけてくる。しかも数体まとめてだ。
であれば、ロイヤルガードを警戒したほうがいいだろうと、ユーリは判断したのである。
「それなら今から奇襲しちゃいます?」
「ありだな」
ニヤリとユーリは悪戯をする子供みたいな笑みを浮かべた。
わざわざロイヤルガードを見逃す理由はない。
他国の探索者との戦いである程度の実力は把握しているので、正人は自分なら勝てるとの確信があった。
「それじゃ行ってきます」
――転移。
ロイヤルガードが三体集まっている場所に正人が現れた。蟻人族が気づくまで5秒、攻撃に移るまでにさらに3秒の時間を要する。
それだけあれば魔力を込めるのに十分な時間だ。
正人は一撃で仕留めるスキルを発動させた。
――毒霧。
酸性の霧が正人を中心に発生する。近くにいる一般兵は一瞬にして外殻が溶けてしまい、体液を垂れ流しながら崩れていく。ロイヤルガードも似たような状況で、外殻が溶けて脆くなっている。
――エネルギーボルト。
光る矢が数十本浮かぶと三体のロイヤルガードに殺到する。酸性の毒によって脆くなっており、頭や体、手足を容易に貫いていった。
周囲にいた蟻人族は何も出来ずに全滅だ。
すぐに近くにいる蟻人族が殺到してくるが、近づいてくる前に『転移』スキルによってユーリの居場所にまで戻る。
「よくやった。流石、正人だな」
離れた場所からでもわかるほどの活躍であった。
他国の探索者が全滅するきっかけになったロイヤルガードをたった一人で倒してしまったのだから、ユーリが感心するのも当然だろう。
「相手が油断していたからですよ」
「だとしてもだ。俺じゃ、こうはいかない」
覚えているスキル数に違いがあるため、ユーリではロイヤルガードを三体まとめて倒すことは不可能だ。
素直に感心していた。
「でだ、今度は俺が活躍する番だ。生き延びている運び屋を追跡する。正人はマンションに戻って休んでいろ」
先ほど短いながらも仮眠を取れたユーリとは違って、正人は寝ずに歩き回っていたため疲れが残っている。
マザーまでエサを持って行く運び屋の追跡させるのは酷だろう。
また寝不足はミスの発生にもつながるため、安全面から見てもユーリが先行するのは合理的である。
「ありがたい提案ですけど、合流はどうします?」
「適当なところで切り上げて戻ってくる。そうだな。今から24時間後に、集まろう。その時になってもいなければ死んだと思ってくれ」
「ユーリさんも休めてませんよね? そんなに長時間、追跡できますか?」
「現役時代は3日寝ずにダンジョン探索をしたこともある。このぐらいは、どうってことないさ」
正人は何を言ってもユーリの考えは変わらないと察した。
他国の探索者が多数死んだことで、人類側は不利になっている状況だ。蟻人族の侵攻をどこまで防げるかわからない今、一日でも早くマザーを見つける必要があるため、無理をする場面でもある。
「わかりました。ユーリさんにお願いします」
「任せろ」
ポンとユーリは正人の肩を軽く叩くと、『透明化』のスキルによって姿を消した。
正人ですら居場所はわからない。
追跡が無事に終わることを祈り、『転移』によってマンションへ戻ってドアを開くと、廊下を歩いてリビングに入る。
そこには里香、冷夏、ヒナタの三人と弟の春、烈火がいた。
オーストラリア大陸から帰ってくるのを待っていたのだ。
「正人の兄貴! 大丈夫だったか!?」
一番最初に駆けつけたのは烈火だ。全身を見て傷がないことを確認している。
「怪我はしてないよ。でも、他国の探索者が多く死んでしまった」
「それってマズいよね?」
質問してきた春に首を縦に振った正人が口を開く。
「世界的に蟻人族の侵略が進んでいるから、私たちが全滅したら守りを捨てて戦う計画になるんじゃないかな」
各国の軍は自国防衛のために働いているが、もし先発部隊が失敗したら動かざるを得ないだろう。
その時は守りが薄くなるため、一般市民への被害は拡大するはずだ。
「でも、そうなる前に私たちがなんとかする。今はユーリさんが運び屋を追跡しているし、マザー発見も時間の問題さ」
自分自身に言い聞かせるように、正人は弟へ言った。
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