また、あいつらかっ!!
正人がコックピットから客席に戻ると、添乗員から各国の近況が報告された。
顔色が悪いことから予想できたことではあるが、良いニュースではない。
「現時点で四分の一が全滅ですか……」
思っていたよりも状況が悪い。空と海のモンスターが多すぎるのだ。事前に学者が予測した数を優に超えている。自然ではあり得ない。誰かが放っているのではないかと、そういった懸念が強まっている。
「蟻人族のゲートを閉じているはずなので世界間の行き来は不可能です。今も異世界からモンスターを連れてきている可能性は低いで、あるとしたら出現時に母体を持ってきたか、召喚系のスキルを持っているかですね」
レイアの言葉で、正人は召喚スキルを使って渋谷で混乱を起こした事件を思い出した。
人が多い場所で行われたからすぐに発覚したが、人里から離れた場所で使われたらどうなるか。
討伐されることはないので発生の速度は飛躍的に上がってしまう。
異常発生している現状に納得のいく説明であった。
「召喚のスキルカードだったらラオキア教団が大量に保有していましたね。この状況、彼らが作っているのかもしれません」
大教祖がスキルで洗脳してしまえば、召喚したモンスターに殺されると分かっていても信者は実行はするだろう。
探索協会からの情報提供とネット上で出回っている目撃証言、そして実体験から、里香は半ば確信を持って言った。
敵はモンスターだけではない。探索協会やラオキア教団といった人間側にもいるのだ。
「また、あいつらかっ!!」
川戸を殺された恨みもあって、ユーリは激しい怒りを込めて座席を叩く。
「でも同じスキルカードを揃えることってできるのかなーー? 普通は無理じゃない?」
当然の疑問をヒナタがぶつけた。
スキルカードの出現率は非常に低い。さらに同じものを狙うとしたら、時間がかかるだろう。海や空に大量のモンスターを放とうと思えば数年では足りない。最低でも数十年は必要だ。
さらに探索協会に気づかれることなく集めるのは不可能に近いと言える。
「教団内にスキルカードをコピーするスキルを持っている人がいるかもしれません」
予想外の発言をいたレイアに全員の視線が集まった。
元となるカードさえあれば、何度も複製できるユニークスキルだ。一日一回という制限はあるが、非常に強力である。
また美都が覚えている、強制的に体内からスキルをカード化して抽出する『強奪』とも相性が良く、この存在をラオキア教団に知られたら、狙われ続けることは間違いない。
レイアの言葉で美都が危ないことに気づいたユーリは、さらにイラ立ちが高まる。
最低でもスキルカードコピーの能力を持っている人間を殺さなければ、落ち着かない。探索協会の問題を抜きにしても、安全には暮らせないだろう。
蟻人族と同じく、絶対に倒すべき相手である。
ユーリはラオキア教団に対して、密かに殺意を高めていた。
「そんなスキルがあったら、やりたい放題ですね。ようやくラオキア教団が大きくなった理由が分かりました」
正人はラオキア教団信者の急速な広がりと暴れ方は、スキルカードコピーの能力があってこそ、と納得したのである。
もはやパブリックエネミーとも言える規模と動きになっており、世界中で布教活動の禁止や解散命令は出ているが、ラオキア教団は根強く残っている。社会に見捨てられたと思い込んでいる人々は、インターネットの深いところで連絡を取り合っているのだ。
モンスターが地上に出て社会が混乱している今が革命の時だと、異世界人の大教祖に煽られて活動を活発化させていた。
「蟻人族の次はラオキア教団だ。洗脳スキル持ちの大教祖とスキルカードコピーしているヤツをぶっ潰すぞ」
ユーリはヤる気に溢れているが、話を聞いている添乗員は状況を冷静に状況を分析していた。
ラオキア教団が邪魔なのは間違いないが、探索協会にとってスキルカードコピーは喉から手が出るほど欲しい。
レイアが存在すると言っているのだから完全な妄想ではないだろう。
探索協会がスキルカードコピーを持っている人間を手に入れるのであれば、正人たちが蟻人族の拠点を襲撃しているときの方が良く、情報共有は早くしておくべきだ。そう判断した添乗員が動き出す。
「トイレに行ってまいります」
宣言をした添乗員は飛行機内にある一人用のトイレで、急ぎ豪毅にチャットを送った。
返事はすぐに来る。
『各支部に連絡をして確保を急ぐ。蟻人族の襲撃が終わった後、美都だけは確保しておくように』
先ほどユーリが懸念していたことは的外れではなかった。
美都に聞きが訪れている。
片方だけでも非常に強力なのに、組み合わされば社会の破壊や想像を絶する金儲けができる。
誰もが欲しているのだ。
運悪く強奪のスキルを覚えたために、美都の自由な生活は遠のき、親しい仲間を危険な目に合っていく。
まるで泥沼のようで、近くにいる人まで危険に巻き込んでしまう。
他人のことを考えれば美都は一人で死ぬか生きるべきなのだが、そのようなことはユーリが許さない。どのような結果になっても、二人は最後まで共にいるはずだ。






