みんな! 私に触れてくれ!
「なななにあれ!!」
現代化学兵器の威力に驚いたヒナタは、爆発があった場所を指さしながら顔を青ざめさせていた。味方だと思っていた人間から攻撃されるとは思っておらず、想定外の出来事に思考は完全に停止している。冷夏はそんな妹を落ち着かせようとして話しかけており動けない。正人は『索敵』スキルを発動させて敵の状況を把握しているが、赤いマーカーはない。
スキルの範囲外からの遠距離攻撃をされているのだ。
明らかに正人を殺すためだけに動いている。
そこに確かな殺意を感じた。
「あそこが一瞬、光りました!」
一キロほど離れた木の上。そこから光を反射したスコープを見つけたのだ。正人は考えるよりも先に行動をする。破壊されて一枚しか残っていない『自動浮遊盾』を射線に割り込ませると、弾丸が衝突して破壊された。
「今度は狙撃かッ!」
このまま開けた場所にいるのは不利だ。
装甲車に乗ればスナイパーライフルからの攻撃は避けられるかもしれないが、ロケット弾は難しい。自動追尾してくることも考えると、ダンジョン内へ逃げた方がよい。その後、転移スキルで別の場所に行けばいいのだ。
「てった――ッ!?」
指示を出そうとした瞬間、空中に複数のドローンが浮かんでいるのに気づく。監視用と考えるのは甘いだろう。囲むようにして近づいてくるのだから、自爆型だと考えるべきである。
爆弾の量は人を殺す程度の量しか搭載されておらず、ロケットミサイルほどの威力はないだろうが、とにかく数が多い。走れば振り切れるだろう。しかし青函トンネルで遭遇した地雷が仕掛けられていたら、それこそ終わりである。実際、『索敵』スキルには多数の黄色いマーカーが浮かんでいるので、正人の杞憂とは言い切れない。
――自動浮遊盾。
破壊された半透明の盾を復活させ、さらに大量の魔力を注いで強化すると、ドローンへ向かって突撃させた。
接触するとプロペラが破壊されてドローンが次々と落ちていく。時折、起爆ボタンを押されて爆発する個体はあったが、半透明の盾は止まらない。数秒ですべて全滅させた。
その間にライフル弾が何度か撃ち込まれたが、魔力を大量に注いだ『障壁』で防ぎきる。
敵はこのぐらいの動きはするだろうと予想していたため、この程度では止まらない。高レベル探索者を殺そうとしているのだから、さらに強力な武器を用意している。
エンジン音と土のこすれ合う音が聞こえた。
視線を向けると戦車が一台ある。
「もしかして自衛隊が、ワタシたちを攻撃しているの?」
里香は反射的に探索協会が裏切ったと感じた。
良好な関係を築いていたのになぜ、と疑問が浮かぶ。
だが本来、そんなことを考えている余裕なんてない。早く行動しなければ肉体は粉々になって散るだろう。
「みんな! 私に触れてくれ!」
焦りを含んだ声で正人が叫ぶと、三人は抱きついた。
ここからは時間との勝負だ。『障壁』を維持しながら、五つの半透明の盾を戦車の前に並べる。さらに魔力で三人を覆って転移する準備を進めるが、『索敵』『罠感知』のスキルも同時に使っているため、時間がかかっている。
砲身が動いて正人の方を向くと、砲弾が放たれた。
反動で戦車が大きく動く。
着弾した場所は正人がいる位置から十メートルほど右側。土が飛び散って『障壁』に当たった。操作しているのは訓練された自衛隊員ではなく、鹵獲した後に操作を学んだラオキア教団の信者であるため、狙いが甘かったのだ。
砲身を調整して戦車は二発目を発射させようとする。
上空からは追加のロケットミサイルが三発ほど見える。
全員を魔力で覆うのが完了し、転移の準備は整った。
後はどこに移動するか。
最初はダンジョンの入り口付近に転移して現代兵器が動かない場所へ逃げようと思ったが、視界の端にビックエイプと鳥人族の姿が見えて考えを変える。
「あそこに敵がいるから飛び込もう」
逃げるのではなく戦うことを選んだことで里香たちは一瞬だけ驚いたが、鳥人族の姿を発見して納得した。依頼は続行である。ラオキア教団、そして大教祖の手がかりが手に入るかもしれないと考えれば、見逃すには惜しい。
「戦車やミサイルは大丈夫ですか……?」
だが敵の攻撃も侮れない。里香の不安も当然である。
近づいてきたロケット弾は半透明の盾に当たって爆発し、破片が散らばる。
「接近戦をしていれば仲間への誤射を懸念して撃てないよ」
「モンスターと鳥人族ごと殺す判断をするかもしれません」
「そんなことをしたら戦場が混乱するだけだじゃない? 私たちを逃がしたくないのであれば、ギリギリまで手を出さないと思う」
砲撃によってビックエイプを含めたモンスターを攻撃すれば、ターゲットが正人たちから攻撃者へ変わる。ラオキア教団の敵が増えるだけだ。モンスターと鳥人族が壊滅的な打撃を受けるまでは、戦車の砲撃やロケット砲などは使えない。できても狙撃ぐらいであるが、動き回っている正人を狙うのは難しいだろう。
「わかりました。戦いましょう」
冷夏、ヒナタも力強くうなずいて同意する。
狙いをダサメタ戦車から砲弾が放たれたのと同時に『転移・改』を発動すると、ビックエイプが率いるモンスターの集団の前に移動した。
突如として出現した正人たちに驚き、敵は動けない。
先制攻撃をするチャンスだ。
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