人質が欲しいな(ペルゾ)
ラオキア教団から派遣された褐色肌の男――ペルゾは正人の戦闘を観察している。
鳥人族と戦いながら『短距離瞬間移動』で場所を点々としていても、『索敵』『透視』『遠視』のスキルを同時使用して見失うことはなかった。彼の興味は正人が戦いの中でどのようなスキルを使い、敵を倒すかだけに限られていて、共闘している仲間がどれだけ死のうが動くことはない。
(大教祖から聞いていた通り希少なスキルを多数覚えて使いこなしている。ほぼ間違いなくスキルを習得するスキル、それを持っているだろう。難敵だな)
数多くのスキル保有者を見てきたペルゾであっても、正人は頭一つどころか二つ、三つ飛びぬけている。それほどの差が現時点でもあり、時間をかければ書けるほど広がっていくだろうことは容易に想像できる。
だからこそ、この場で仕留めなければ。
ペルゾは改めて気持ちを引き締め、近くにいる鳥人族へ声をかける。
「敵がお前たちの町で暴れているようだ。全戦力を持って潰しに行け」
家族が危険だと知り、鳥人族は反発などせず一斉に行動を始める。
両腕の翼を動かして全速力で移動を開始した。
町に向かう鳥人族からペルゾは意識を正人に戻す。状況は変わっていない。鳥人族やテイムしたモンスターと戦っていた。
あまりにも敵が多いため『エネルギーボルト』『毒霧』『氷結結界』『風刃』などの攻撃系スキルを使っており、能力を把握していくと異変に気づく。
「ん? 急に動きが良くなったな。戦いの最中でも進化するのか」
戦っている最中に正人は『視野拡大』スキルを覚えたのだ。『高速思考』と組み合わせることで集団に囲まれても対処しやすくなった。
手持ちの戦力で倒せれば良いのだが、前線力を投入してもこのままでは正人を強化させるだけで終わるだろう。別の手立てが必要なのだが持てる手札はすべて使ってしまった。
正面から戦うのは危険、リスクは高い。
であるなら、勝つために新しい手札を用意すればいいのだ。
「人質を手に入れるか」
視線を一層に続く階段へ向ける。警戒している里香たちが見えた。
彼女たちの情報も大教祖経由で手に入れている。レベルは四まであるが正人ほどのスキルは持っていない。三人まとめて相手にしても、ペルゾは勝てると考えていた。
鳥人族が全滅する前に捕獲するべく、竜巻とともに空中を移動する。
「なんか、やばいのきたみたい!」
いち早く危険を察知したヒナタが叫ぶ。
隠れていたのに居場所がバレてしまい驚いているが、すぐに武器を構えると里香は遠距離系のスキルを使わずに走って近づく。ペルゾは竜巻を操作してぶつけようとするが、火球が飛んできたので目標を変更、衝突させる。爆発したが竜巻の威力は衰えない。
それでも諦めず冷夏は『ファイヤーボール』を連発して注目を集め、里香をサポートしていく。
(大教祖から正人以外は脅威にならないと聞いていたが……意外とやるな。地球人でなければ部下として向かい入れていたぞ)
異世界で部隊長として働いたこともあるペルゾは、彼女たちなら優秀な駒として活躍するだろうと感じていた。これまでの動きは合格点をあげても良いレベルで申し分ない。
だが残念なことに、歴戦の戦士でもあるペルゾを倒すにはすべてが足りない。竜巻のスキルすら突破できず、里香は足を止めてしまい回避に専念している。冷夏も同様だ。複数の竜巻に追われ、階段近くにまで後退してしまった。
だが二人は諦めていない。
その理由は友人を囮にしてまで後ろへ回り込んだヒナタにあった。
――縮地。
直線距離を一瞬でつめるスキルだ。レイピアがペルゾの背中に迫る。
「良い連携ではあるが、相手が悪かったな」
戦いながらも常に『索敵』スキルを使っていたため動きには気づいていた。
突如として砂を巻き上げる竜巻が発生し、ヒナタは上空へ吹き飛ばされて奇襲は失敗してしまう。体が回転して上下の感覚は喪失しており、体勢を整える余裕なんてない。このままでは十メートル以上の位置から落下してしまうが、ペルゾは待つつもりなんて無かった。
――空気弾。
圧縮した空気の塊をヒナタの上空に発生させ、落とす。一発目は運良くレイピアに当たって防いだが刀身は砕けてしまう。二発目は足に、三発目は胸に当たって、骨が折れるほどの衝撃を受け意識を失ってしまった。四肢から力は抜けて頭から落下していく。
「ヒナターーーーっ!」
襲ってくる竜巻を避けながら叫ぶ冷夏。鳥人族と戦っていた正人が『転移』によって出現すると、落下しているヒナタを抱きかかえた。
「どうしてここが!?」
驚くペルゾに対して返事代わりにスキルを放つ。
――水弾。
連続して放たれた水の塊を『風壁』のスキルによって周囲に突風を発生させ防いだが、先ほどまでいた場所に正人の姿はない。『索敵』スキルによって脳内でマーカーを確認してから振り返る。正人を発見した瞬間、背中に光の矢が突き刺さった。
意識されなくなった瞬間を狙って里香が『エネルギーボルト』を放ったのである。さらに正人から見えない『風刃』、冷夏は『ファイヤーボール』を放っていく。ペルゾは『風壁』を使って防御に専念するしかなかった。
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