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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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ニンゲンカ

 山に入る直前、正人はスキルを使う。


 ――隠密。


 存在感が一気に薄くなり、目の前にいても見失ってしまいそうになるほどだ。遠くから戦況を確認しているアラクネであれば、正人が消えたことすら気づけないだろう。


 ナイフを両手に持って山道を進む。しばらくすると赤いマーカーと青いマーカーの集団が衝突した。大蜘蛛と探索者の戦闘が始まったのだ。


 遠くから爆発音や怒鳴り声が聞こえる。順調に動いていた赤いマーカーはベースキャンプ前で止まっていて、動く気配はない。探索者たちの足止めが成功したと、正人は確信する。


 仲間の探索者を信じて山道から離れ、傾斜の厳しいエリアに入っていく。普段は人が使わない場所であり、歩くのに適した場所とはいえない。土から露出した木の根に足をとられないように注意しながら、赤いマーカーの裏側に位置する場所にまで移動した。


 移動に使った時間は三十分ほど。

 眼下にはベースキャンプがあり、大蜘蛛と探索者の戦いが見える。


 ファイヤーボールやエネルギーボルトといった遠距離攻撃で先頭の大蜘蛛が弾き飛び、運良く鉄製の柵に近づいた大蜘蛛は探索者の武器によって屠られる。一方的な展開である。さらに大蜘蛛が集まっている中心地で、槍を舞うように振るっている女性が戦う姿も見えた。遠目からもわかる美しさは、アイドル探索者の宮沢愛だ。治療テントに小鳥遊がいたことから予想できていたことだが、正人はこの場に日本最強と呼ばれている道明寺隼人のパーティーがいると気づいた。


(彼らがいるならベースキャンプは大丈夫だ。あとは、コイツをどうやって処理するかだな)


 正人から約五メートル下に位置する場所にアラクネの姿があった。下半身は真っ白い蜘蛛で上半身は女性の姿をしたモンスターである。普通は裸体を晒しているはずなのだが、目の前にいるアラクネは探索者から奪い取った鎧を身につけており、スナイパーライフルも持っている。使い方は熟知しているようで、スコープを覗いて獲物を探していた。


 全体を俯瞰して見える場所にとどまっていた理由は、考えるまでもない。

 狙撃するためだったのだ。


 モンスターは地上に出て賢くなったことは、探索者たちだけでなく世間でも知っていることだが、せいぜい陽動といった原始的な作戦を使うようになったというレベルであり、銃器を扱えるほどとは誰も気づいていない。


 ボス個体だからこそ短期間で高い知能を手に入れたが、数年、数十年と経過すれば普通のモンスターだって銃器を扱い、車を運転するぐらいは出来るだろう。


 人間の想像を超えて進化しているモンスター。その事実に気づいた正人は、全身に悪寒が走った。


 この場で殺さなければ!


 仕事ではなく家族を守るために殺意が高まる。それは一瞬だが隠密スキルの効果を突破するほどであり、トリガーに指をかけていたアラクネの動きを止めた。


『ン?』


 背後を振り返ったアラクネの目には木々があった。生き物の気配を感じたのだが、気のせいだったかもしれない。いや、違う。あれは明確な殺意だった。きっと隠れているのだろうと、アラクネは悩んでしまい隙が出来てしまう。


 ――短距離瞬間移動。


 空中に出現した正人は、ナイフを逆手に持ってアラクネの頭を突き刺そうとする。


 回避する時間はないように見えたのだが、アラクネの指が僅かに動いただけで近くに張ってあった糸が一斉に動きだし、正人の体は絡め取られてしまう。宙吊りになったのだ。


 顔を上げたアラクネが呟く。


『ニンゲンカ』


 目を見開き蜘蛛の糸から逃げ出すことを忘れ、正人は驚いた。モンスターが言葉を発する事例はない。


 獲物である正人が動きを止めている間に、スナイパーライフルの銃口が動く。撃たれるかもしれない。そういった危機感が正人の思考を強引に動かし、正常な判断が出来るようになる。


 ――ファイヤーボール。


 周囲にいくつもの火の玉が浮かび、糸を焼いていく。アラクネは熱に怯えて後ずさる。


 ドサッっと地面に落ちた音が聞こえた。


 アラクネが地面を見ると、誰もいない。


「こっちだッ!」


 背後から声が聞こえた。振り返るが、誰もいない。隠密のスキルを使って気配を消した正人が、視界の外からナイフを投擲する。


 ――投擲:魔力爆発。


 複合スキルの力をまとって刀身の光るナイフが、アラクネの右腕に接触するのと同時に爆発。右腕が吹き飛び、スナイパーライフルが宙を舞う。


 スキルの連続使用で魔力が大きく減った正人は、追撃はしなかった。残った一本のナイフを構えて、悶え苦しんでいるアラクネの様子を見る。


『シネ! シネ! シネェェェッッ!!』


 痛みを感じて周囲の木をなぎ倒しながら、アラクネは暴れていた。


 やはり聞き間違いではなく、確かに言葉のようなものを発している。モンスターが独自の言語を使った。その事実を再確認した正人は、報告するべき事が増えたと心の中でため息を吐いた。


 現代文明が崩壊する前兆と向き合っているのかもしれない。そんな絶望感が湧いてくる。


 正人は慌てることなく、アラクネが暴れ疲れるまで待つ。


 時間にして十分ほどすると、息の乱れたアラクネは動きを止めて正人の姿を捉えて鋭い目で睨みつけてきた。

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