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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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補給所の現実を教えようと思ってな

 補給所の責任者である草薙は、話があると言って正人が借りている部屋に入った。


 ベッドには女性陣の三人が座り、正人は壁に寄り掛かりながら立っている。草薙は小さな椅子に座っていた。


「疲れているところ悪いな」

「いえいえ、気にしないでください。それで、話とは何でしょうか?」


 正人はやや警戒したような声色で質問をした。

 東京ダンジョン内に唯一存在する人類が作った集落。そこの責任者に話があると言われたのだから、そういった態度に出るのも無理はないだろう。


 また、宿に来るタイミングも良かったこととも正人の警戒心を上げる要因となっている。


 草薙は入り口を管理している探索者から、新人が入ったと報告があって様子を見に来ただけなのだが、正人はスキル昇華の存在に気づかれて狙われているんじゃないかと、軽い疑心暗鬼に陥っていた。


「少しでも早く補給所の現実を教えようと思ってな。お前たちは四階層と六階層では、探索者に大きな違いがあるのは知っているか?」


 スキル昇華について聞かれると思っていた正人は、予想外の質問がきて言葉に詰まった。


 そんな正人の姿を見た里香が代わりに答える。


「戦闘能力の違い、ですよね」

「その通りだ」


 六階層にたどり着くためには五階層にいるボス――オーガを倒す必要がある。ゴブリンやオークといったモンスターとは比べものにならないほど強く、勝つためには純粋な力が求められるのだ。里香の言うとおり、戦闘能力は大きく変わる。


 正人たちもオーガを倒してレベルアップし、スキルを習得して能力が向上したこともあって、この場にいる全員が実感していることでもある。だが、草薙の考えは他にもあった。


「それとな、他にも明確な違いがある。それは戦いへの慣れだ」


 戦闘経験と言い換えても良いだろう。それは日本で普通に生活しているだけでは手に入らないものだ。


 しかも草薙は、ゴブリンを囲んで袋叩きにするような一方的な暴力ではなく、死ぬ可能性もあるような緊張感のある戦いへの慣れのことを言っている。


 そうやって戦いに慣れて順応していくと、本人ですら気づかない間に思考も変化していく。暴力が最高の解決方法だと思ってしまうのだ。


「五階層を越えたヤツらは一度、死闘を乗り越えたことになる。生きるか、死ぬか、その経験をするとモンスターとの戦いに恐れなくなる。暴力という手段に慣れてしまう」

「探索者としては望ましいですよね?」


 話の流れが見えてきた正人が軽いツッコミを入れた。

 探索者は戦い続ける職業である。いつまでも戦うことに怯えているようでは話にならない。そう言った意味では彼の言葉は正しいのだが、それには条件がある。


「理性が伴っていればな」


 これがなければ、野生の動物やモンスターと変わらない。


 地上であれば法や他人の目、そして家族といった人間関係がストッパーの役割を果たすが、ダンジョン内であれば、それら全てがなくなる。自分を律せない人間は容易に暴力に走る。敵対する相手を屈服させるために、暴力を振るう探索者は少なくないのだ。


 金や地位ではなく力が支配する世界。六階層以降、そして補給所の実態である。


「ここは法の及ばない場所だ。トラブルが起これば、力でねじ伏せようとするヤツらのたまり場だと思ってもいい」

「他の探索者に気を付けろ、そういった忠告でしょうか?」

「だな。特に補給所の常連は十階層の壁を越えられず、くすぶってるヤツらばかりだ。ストレスを発散したいといった理由で絡んでくることもある」


 九階層までたどり着くような探索者は、生活に困らない程度の稼ぎは得られている。やり方次第では、プチ裕福層と変わらない生活ができるだろう。


 生きるためにこれ以上、危険を冒す必要はない。だから九階層で打ち止めになる探索者は多いのだが、そしてそういったヤツらに限って嫉妬しやすい。


 特に自分より若く有望な探索者――正人たちは標的にされやすいのだ。


「注目の新人を妬んでいる奴らは多い。お前たちの場合は取引だって不正されることの方が多いだろう。探索協会に雇われている人間は信用しても大丈夫だが、それ以外の人間は絶対に信じるな」


 先ほど草薙に追い払われた探索者もそうだが、正人のことは探索協会が注目する新人だと知って、絡んできていた。俺より優遇されている、評価されている、そういった負の感情から高圧的な態度に出ていたのだ。


 それは彼らだけが特殊というわけではなく、ここにいる探索者が同じ考えを持っていると、草薙は忠告したのである。


「それほどまでですか」


 生活のため、スキル昇華の存在がバレても自由でいられるようにと、必死に戦い成果を残してきた。その結果、反発する探索者が出てくるとは、正人は想像すらしていなかった。


 里香や冷夏、ヒナタだって同じだ。まさか未成年で未熟な自分に嫉妬するような大人がいるだなんて、そんな考えなんて持ちようがない。特に里香は孤独な生活を過ごすことが多く嫉妬する側だったので、その驚きは大きかった。


「そうだな。人の悪意は甘く見ない方がいい……と、ここまで脅してなんだが、さすがに補給所内で手を出してくるヤツはいないだろう。有望な新人を潰したとなれば、各所から責められるのは間違いないからな」


 だから、人目のないところだけは気をつけろ。

 そう付け足すと草薙は立ち上がる。


「まあ、困ったことがあれば俺を頼れ。大抵のことはなんとかしてやる」


 正人の肩を叩いてから宿を出て行ってしまう。

 来るのも突然であれば去るのも同じだった。

 残された四人はお互いに顔を見る。


「草薙さんの話が本当かはわからないけど、他の探索者にも気をつけようか」


 その言葉を否定する人はない。正人の言葉に三人はうなずいた。


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