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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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この数を四人で倒したのか

「そんな便利なものがあるんですね……。ここでは売っていませんか?」


 匂いを遮断する布さえ手に入れば、補給所で休める。移動が続いていたこともあり、正人は簡単には諦めない。


 見張りをしている探索者にしつこく食い下がっていく。


「補給所には売ってないが、俺は持っているぞ」


 正人と話している探索者は腰につけたポーチから、小さく折りたたまれた黒い布を取り出した。光沢があり一見すると絹のように見えるが、探索者協会が研究した末に完成した合成繊維で作られた匂いを遮断する布である。


 布を広げると一メートル四方の大きさになった。アイアンアントの卵を包むには十分なサイズだ。探索協会のショップで購入すれば一万円程度で購入できるほどで、探索者向けの道具では低価格の部類に入る。


「売ってやってもいいのだが……ここはダンジョンの九階層、地上と同じ値段では売れない。それはわかるよな?」


 山頂にある自販機の価格が高いのと同じように、ダンジョン内で物を買うのであれば定価より高くなるのは当然だ。正人はうなずいて肯定する。


「……おいくらになりますか?」


 チラリと正人の顔を見ながら、見張りの探索者は販売価格を考える。


 正人が注目の新人というのには気づいているので、あまりにも高い値段で売りつけてしまえば、探索協会から不興を買ってしまうかもしれない。補給所の見張りという仕事をもらっているため、そういった危険は避けなければならない。


 だが、定価より高く売れるチャンスであるのも事実だ。いくらまでなら文句を言わずに買ってもらえるか、適正にぼったくれる金額を算出した。


「十万だ」


 見張りの探索者が提示した金額は相場の十倍。九階層にまで到達する実力を持った探索者であれば、少し痛いが支払えない額ではない。知識不足だった自分が悪い、勉強代だと割り切れる絶妙なラインであった。


「わかりました。現金は持っていないので、魔石と交換でもいいですか?」

「もちろんだ。交換するものを見せてくれ」


 現金は紛失する可能性が高く、また電子機器が動かないので電子マネーは使えない。ダンジョン内でお金を持ち歩いている散策者はおらず、取引では物々交換が主流なのだ。特に魔石は買取価格が一定のため、貨幣の代わりに使われてることが多かった。


 ただ、補給所にある店であれば話は変わる。探索者の免許を見せれば後日、口座から使用金額が引き落とされるので、魔石を所持していなくても施設の利用は可能である。


「これです」


 リュックから取り出したのはアイアンアント、ファイヤードラゴンフライ、ビッグコガネの魔石を見せた。


「ほう、流石だな。この数を四人で倒したのか」


 魔石は数十個もある。探索者免許を取得して一年も経っていない新人が手に入れられる量ではない。流石、探索協会が注目する新人だと驚いていた。


「それでは、この魔石を二つもらおう」


 見張りをしていた探索者は、アイアンアントの魔石を二つ手に取った。探索協会が運営する買取所の販売価格で十万に満たない金額である。


「それだと少し足りませんか?」

「ピッタリ十万というわけにはいかないからな。これでいい」

「そういうものなんですね」


 魔石をしまった見張りの探索者は、匂いを遮断する布を正人に渡した。


 早速、アイアンアントの卵を包むと甘い匂いが消える。効果は抜群であった。


「この布、すごいですね」

「だろ? マイナーな商品だから知らないヤツも多いが、アイアンアントの卵を狙うなら必須アイテムだ。覚えておくといい」

「ありがとうございます。勉強になりました」


 リュックに卵をしまうと、見張りの探索者を見る。


「これで中に入っても大丈夫ですか?」

「もちろんだ。我々は君たちを歓迎しよう!」


 手を差し出されたので正人は握手した。里香、冷夏、ヒナタも続いて握手をすると、ようやく補給所に入れたのだった。


◇ ◇ ◇


 補給所の見た目を一言で表すならゴーストタウンもしくは限界集落が近いだろう。木で作られた建物はボロボロで出歩いている人は、ほとんどいない。モンスターに滅ぼされた村のようにも見えて、事前にここが補給所と知ってなければ廃墟だと勘違いしていただろう。


 補給所唯一の通りを歩く正人たちは、建物に掲げられている看板を見る。宿、食事処、武具のメンテナンスなどの店はあるが、風呂場はなかった。貴重な水は飲み水としか使用できないのだ。


 女性の多い正人のパーティーでは不満の一つでも出そうではあるが、そこはプロ意識を持った探索者である。思っていても言葉には出さなかった。


「とりあえず宿で休もう。夜になったらご飯を食べに行く。それでいいかな?」

「私も疲れたので休みたいと思ってました」


 里香が正人の提案に同意すると、残りの二人もうんうんと、うなずく。ヒナタは「ダンジョンでお昼寝が出来る!」と喜んでいた。


 行き先は決まった。補給所にある唯一の宿に入る。


 ボロボロのドアを開けると、一階はエントランスになっていた。椅子がいくつか置かれていて休めるようになっている。奥にはカウンターがあり、私服を着た男性が一人、立っていた。


「手続きをしてくるから、ここで待ってて」


 三人はエントランスにある椅子に座り、正人だけがカウンターに向かう。


「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」


 建物の見た目にそぐわない丁寧な言葉遣いだった。無法地帯であるダンジョン内でも安心して利用できそうだと、正人は感じた。


「四名です。一人部屋と三人部屋はありますか?」

「ええ、空いてますよ」


 補給所に訪れる探索者は少ない。多くはここまでたどり着く前に探索者人生を終わらせるからだ。訪れるメンバーは決まっているので、宿が満室になることは稀だった。


「代表者だけでいいですので、探索者免許を見せてください」


 言われたとおり正人は探索者免許を出すと、店員は宿泊リストに名前と人数、そして免許の番号を記入していく。


 後日、ここに記載された探索者に利用金額が請求されるのだ。


「利用料金はすべて後払いです。後日、神宮正人様の口座から四人分の金額が引き落とされるのでご注意ください」

「わかりました」


 割り勘はできないのですかと、質問しようとした正人だったが止めた。ここは街中ではない。柔軟な会計処理はできないと気づいたのだ。


 鍵を二つ受け取ると里香たちと合流する。四人は一階の細長い通路を歩いて、それぞれの部屋に入っていくのだった。


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