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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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これ、高く売れるんですよね?

 ヒナタに抱きつかれている里香と合流すると、索敵スキルに反応があった。


 赤いマーカーが集まってきている。まるで正人たちをピンポイントで狙っているような動きだ。


 小部屋で休憩していたときと同じ動きに戸惑いながらも、正人は状況を整理しようとする。


(アイアンアントクイーンを倒したから復讐のために集まってきている? いや、それだと小部屋で襲われた理由にはならない。侵入者を排除するためなら、アイアンアントクイーンと出会ったときも他のアイアンアントは集まってきたはず。だが、そうではなかった。アイアンアントクイーンを倒して卵を手に入れて――)


 はっとした表情をした正人はリュックにしまい込んだアイアンアントの卵を取り出した。真っ白で触ると指が沈むほど柔らかい。力を入れてしまえばすぐに壊れてしまいそうだ。そんな卵から甘い匂いが発生していた。


 人の嗅覚ではうっすらとしか感じないが、アイアンアントには一キロメートル先からもでもハッキリとわかるほどの強烈である。


 地上にはない独特な匂いであり、正人は小部屋で出会った男性のパーティーが同じような甘い匂いを漂わせていたことを思い出す。


「もしかして、この卵が……?」


 甘い匂い、アイアンアントの集結、男性パーティーを離れたら追ってこなかった、様々な事実が正人の中でつながっていく。


「卵の匂いに惹かれてアイアンアントが集まってくる! 逃げよう!!」


 卵を放り投げようとした正人の腕を冷夏が止める。


「これ、高く売れるんですよね? 持って逃げませんか!?」

「う、うん。珍味として高く買ってくれる人はいるけど、アイアンアントはこれを狙ってるんだ。捨てた方が安全だよ」

「ギリギリまで持って、それでも危なければ捨てる。それじゃダメですか?」


 毎回、探索すれば利益は出ている。危険を冒してまでお金にこだわる理由が見つからず、正人は戸惑いを見せるが、近づいてくる赤いマーカーが時間をかけることを許さない。


 議論や言い合いをする余裕はなかった。


「わかった! 危ないと判断したら投げ捨てる。それでいいね?」

「はい! ありがとうございます」


 冷夏は深く頭を下げた。

 時間が惜しい正人は、すぐに頭を上げさせると手を引っ張る。二人を見守っていた里香とヒナタと一緒に走り出した。


 迷路のように複雑なアイアンアントの巣は、迷子になったら二度と出られない。そのため探索者は手描きの地図を作りながら慎重に歩くのだが、索敵と地図スキルの組み合わせて使っている正人にはその必要はない。


 全力で走り、アイアンアントがいない通路を選んで出口を目指していく。


 匂いだけで追っているアイアンアントは無駄な動きも多く、効率よく動く正人たちを包囲しきれない。最後まで発見されることなく、無事にアイアンアントの巣から脱出した。


「外だー!!!」


 最初に外に出たのはヒナタだ。先ほどまで酷かった砂埃はなくなり、晴天の空が見える。暗い通路から出た開放感に感動して飛び跳ねていた。


「逃げ切れました!」

「ギリギリだったけど、何とかなった」


 続いて里香と正人が穴から出てくる。最後に冷夏が出てくると、後ろを見た。


「逃げ切れたのでしょうか?」


 卵の甘い匂いは風によって拡散されている。アイアンアントの巣穴から離れれば、後を追うのは難しくなるだろう。


「多分ね……とりあえず、ここから離れよう」


 走り続けて体は疲れ、休息を求めているが、誰も正人の言葉を否定しなかった。次の瞬間に、巣穴から大量のアイアンアントが出てくるのではないかといった恐怖心があるからだ。開けた場所でアイアンアントの群れに襲われてしまえば、逃げ出すのは困難。数次第では最悪、負けてしまう場合も考えられる。


 幸い、砂埃はなくなり視界は良好だ。正人の地図スキルによって現在地もわかる。一行は、探索協会が作った補給地に向かって歩き出すことにした。


◇ ◇ ◇


 アイアンアントの巣から逃げ出して一時間後。ようやく補給地が見えてきた。


 木造の建物が並んでいて、すべてが一階建てだ。中心には櫓があって、監視役として探索者が二人いる。補給地全体は腰ほどの高さのある木製の柵と鉄線に囲まれていて、簡単には入り込めない仕組みになっていた。


「やっと見つけた」


 疲れているパーティーメンバーの代わりに正人がつぶやいた。人がいる、安全な場所で休める、そういった気持ちが湧き上がり、自然と歩く足が速くなる。


 入り口まで近づくと見張りをしている探索者に声をかけた。


「休みに来ました。入っても問題ありませんか?」


 正人の質問ににこやかな顔をしていた見張りの探索者は、次第に顔が曇っていく。穏やかな雰囲気でなくなったことを察した四人は警戒する。


「今の状態ではダメだ」


 補給地は全探索者が利用できる場所だ。探索協会が、そう定めている。現場の人間が変えられるようなルールではないはずなのだが、正人たちは明確に拒否されてしまった。


 疲れから苛立ちを覚えつつも、休みたい正人は食い下がる。


「理由を教えてもらえますか?」


 見張りの探索者は自分の鼻をつまみながら、正人が背負っているリュックを指さした。


「ここまで匂いがするぞ。お前、クイーンの卵をそのまま持ってきたな?」

「どういうことでしょうか?」

「チッ」


 九階層を探索する人間であれば、知っておかなければいけない情報を持っていない。そんな勉強不足な正人たちに舌打ちをしたのだった。


「アイアンアントの卵が発する匂いは、仲間を引きつける。そんな危険な物を持っているヤツは入れられない。どうしても入りたいのであれば、匂いを遮断する布で包むんだな」


 正人たちが体験したとおり、卵を持つとアイアンアントに狙われる。もし運良く手に入れたのであれば、匂いを遮断する布で包んで運ぶ必要があるのだ。マイナーな知識ではあるが、アイアンアントクイーンの卵を狙うのであれば必ず知っておかなければいけない。


 そうしないと、小部屋で出会った探索者の様に物量に押しつぶされて死ぬこととなるからだ。


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