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4-25 転生失敗魔法少女隊ワーストキッズ!

ごく普通の男子大学生、谷得琉たに・えるは異世界転移に失敗して、この世界に戻ってきてしまう。

 そこに現れたのは、異世界、古ブラ界の化け物。同じく転移に失敗した火群明美ほむら・あけみと共に絶対絶命のピンチに陥ってしまった。

 二人を転生させようとした不幸の女神ザムスドラと、星の神クェーサービーストは二人を見捨てようとするが、その時現れた魔法少女を名乗る不審者、ムキムキマッチョな老人なのにピンクのスリングショットという装いの宮城正義みやぎ・まさよし老人に救われる。

 本物の魔法少女の子孫である彼の力を借りて得琉は、女神から己に与えられた人から借りた技能を人に移すチート能力を使って明美を魔法少女に変える。

 そんな彼に実は異世界で死ぬ直前、ドラゴンの能力を奪ったので得留も魔法少女になれると女神は告げるのだった。著作権ゆるキャラ達がお送りする脱線魔法少女ファンタジー。

「おわぁぁぁぁっ! なんじゃこりゃー!!」


 俺、谷得瑠(タニ・エル)は車に跳ねられて死んだ。

 

 そしたら女神を名乗る謎の女が現れて、異世界に転生させてくれるというので二つ返事で了承。

 世界が暗転し、別の世界に飛ばされたと思った途端、身体中に焼けるような痛みが走った。


 目を開けた俺の目の前にいるのは、両生類みたいにヌメヌメの肌。体表から無数の触手をウネらせ、さらに全身に能面みたいな無数の人面を持つ化け物。周囲の景色はどこからどうみても俺が死ぬ前にいた日本の町並みだ。


「はわわぁぁ! なんですかあのバケモノ! なんなんです?」


 素っ頓狂な叫び声に目を向けると、俺の隣では、三つ編みメガネの女子高生が腰を抜かして震えていた。


『あれあれぇ? 転移失敗しちゃいました? おっかしいなぁ』


 俺の頭上から響く暢気(のんき)な女の声。そう、こいつがそもそもの元凶だ。


『せっかくインパクトを出そうとドラゴンの胃の中に転移させたのに溶けちゃったかぁ……』


 おい、こいつ今なんていった? ドラゴンの胃の中に人間を転移させる?


「アホか! そんなことしたら死んじゃうだろうが!」


『そっかぁ地球の人間って貧弱なのね。ゲレンゲレン神話の不幸の女神であるこの私、ザムスドラ様の目も曇っちゃったかなぁ』


 ゲレンゲレン神話って何だ? ザムスドラって聞いたこともない。

 だが今はそんなことを悠長に気にする状況じゃない。ツッコミを入れる前に確認することがある。


「それよりも……だ。クソ女神! この状況はなんだ?」


 目の前の不気味な化け物はクケケケと気持ちの悪い声で鳴きながらにじり寄ってくる。


『う~ん、転生失敗しちゃうと、元の世界の魔力溜りに戻ってくることになってるんだけど、たまたまそこから異世界の怪物が出てきちゃった。みたいな?』 


「タイミング悪すぎだろっ!」


『えっ、だって私不幸の女神ですし! タイミングバッチリ』


「つか、ここでもう一度死んだらどうなる?」


『普通に死ぬね☆』


「いやいやいやいや! 普通に死ぬね☆じゃねぇよ」


 俺一人なら逃げられるかも。と少しだけ考えたが、この隣の()を置いて逃げるわけにはいかない。なんとか助け起こそうと手を伸ばしたのだが……。


「いやあぁぁぁぁぁ! 来ないでぇぇぇ!!!!」


 再びの叫び声とともにとどろく銃声。


 まるで最初からそこにあったように、彼女の手には拳銃、それもS&WのM29なんて物騒なものが握れられていた。

 

 よくわかんねーけど、それって腰を抜かしたまま撃てる銃じゃないよな?


「クケケケケケケケケッー!!!」


 だが、目の前の化け物は激しくその巨体を揺らして、周囲の車や建物を薙ぎ払っていく。


『ふむ、どうやら魔力による攻撃でなければ傷つけられないようだね。明美、撤退を推奨するよ』


 頭上から響くザムスドラとは違う低くつぶやくような声。


「誰だ?」


『ボクは星の神クェーサービースト。この娘火群明美(ほむら・あけみ)に、この世界(ちきゅう)の武器を自由に具現化して使役する能力を与えて異世界に送り込んだんだよ』


「ここにいるってことは、まさか?」


『そう、あちらの世界の二大勢力が対峙する戦場のど真ん中に降下させたまでは良かったが……あいにく防御能力は付与してなくてね』


「地面に、バーーーーンって叩きつけられたのです! とっても痛かったのです!」


 狂ったように銃を乱射しながら、助けてくれと懇願するように俺を見つめる。

 なんてこった。こいつも転生失敗者かよ!


「おい、ザムスドラ。俺にもこう……なんかいい感じのチート能力とかないの?」


『いっやぁ、それがね。他人の能力を借りて、それを他の人に付与するっていうスーパー技能(スキル)を与えたんだけどさぁ、肝心のスキルを借りられる人間がいないのね。私の不幸パウワーは最強です。えっへん』


 転生神様ガチャというものがこの世に存在するならば、これは大ハズレ引いたわ。この隣の子も、せっかく猛獣すら殺す武器を出す能力を与えられても、よりによって初戦が効かない相手とは運がない。


「ここは俺がなんとかする。火群(ほむら)さんは逃げてくれ」


 俺の不幸に巻き込んで他人が不幸になるのは気分が悪い。


 正直、怖いし痛いのは嫌だが、現世と異世界で二回も死んでるんだ。いまさらもう一度死んだところで、さして変わらない。


「だ、だ、駄目です~。腰が抜けて立てません~」


 畜生、まさに万事休すだよ。せっかく異能者二人もいるのに、為す術もなくこのままやられるのを待つしかないのか?


『いっやぁー今回は大失敗だったわね。次行ってみよー』


『まあ、次の転生候補者を探さないとボクたちもペナルティを受けるからね。異存はないよ』


 あかん。神様二柱は、もう俺たちのことをなかったことにしようとしてる。


 と、その時である。


「待て待てーーーい。邪悪なる異世界の魔物め。このワシ、魔法少女ジャスティス☆ライブラが相手じゃ!」


 名乗りとともに現れた魔法少女を名乗る人物が、手にしたヌンチャクで魔物に殴りかかる。


「ゲヒャーーーーー」


 命中と同時に、ヌンチャクから、無数の空気の刃みたいなものが出て魔物の体に裂け目ができる。


「大丈夫だったかお前たち!」


「はい、俺は大丈夫です。火群さんは?」


「お、お、お兄さん。それよりもこの方変態です!」


「ん? なんじゃと?」


 そこにいたのは、先端にクリスマスツリーの飾りみたいな星形のアクセサリーがついたヌンチャクを手にしたムキムキマッチョの老人だった。ただし、ピンクのスリングショットを着用した。である。


「いや、爺さん。助けてくれたのはありがたいけど、どこからどう見ても変態じゃねーか」


 少なくとも魔法少女ではない。絶対に!


「ややや。これは仕方ないんじゃ。地球では魔力も足りんし、ワシも歳じゃから仕方ないんじゃ」


 この変態を信じるべきか否か?


『そのお爺さんの言葉は真実だよ。遠い昔にこの地球に流れ着いたミャーギ流魔法少女術の最後の継承者。それが彼だよ』


 これは面白い物を見つけたぞ、とでも言いたげに、クェーサービーストが教えてくれる。


「もしやこの声、どなたか神々がおられるのか? いかにも、ワシこそが開祖である異界の魔術師、エルネスト・ミャーギより続くミャーギ流魔法少女術正当継承者宮城正義(みやぎ・まさよし)ですじゃ」


『魔法少女術は少女型の生体ゴーレムを召喚して使役する面白い術でね。地球のように魔力の薄い空間だと魔法少女の体を作るにも一苦労なんだ』


「つまり、今のワシにできるのは、敵の持つ僅かな魔力で攻撃魔法を叩き込むくらい。孫娘が継承できる年齢になるまでは老体に鞭打って、ワシがやるしかないのじゃ」


 その変態みたいな格好で鞭打ってとかいうとただの変態にしか見えないが、この宮城って爺さんは本物の魔法少女の継承者で、無理をしてでも俺たちを助けてくれようとしているのはわかった。


 ん? 本物の魔法の継承者。それってつまり……。


「おい、ザムスドラ。この宮城さんの魔法少女術を借りて、火群さんに付与するってできるのか?」


『もっちろんよ。魔力をベースにした技術ならホイホイ付与できるわ』


 魔法少女術っていうからには女の子の方が適性も高いだろうし、それに銃器を使う魔法を彼女も使っていたから、さっきのヌンチャクみたいに銃弾にも魔法を付与できるんじゃないか?


「火群さん、やってみてくれるかな?」


 俺の言葉に、え? 自分がみたいな顔で自分を指さしていた火群さんだが、シュワシュワと音を立てて傷を修復する魔物の姿を見て覚悟を決めたようだ。


「はい。どのみち戦うしかないなら、私やります」


「宮城さんも戦い方を教えてください。お願いします」


 無言でうなずく宮城さん。俺が二人の手を取ると、普通とは違う力があることを確かに感じる。誰に教えられたわけでもないのに、やり方は体が知っている。魔力の流れをボールのように丸めて俺の体の中を通して二人の間を受け渡す感覚だ。


転移変生魔法(テクマク・マヤコン)


 魔法の言葉を唱えると、宮城さんの中に在ったパワーが火群さんに移っているのがわかる。


「お嬢さん。変身した自分を強く意識するのですじゃ……」


「よくわからないけど、なんだかできる気がします。え~~い、変身!」


 変身の言葉と同時に彼女の体から光があふれ出し、まるでリボンがほどけるように体が光のリボンに変換されて消失した。直後に彼女のいた正面に3Dプリンタで出力されるように、本人そっくりの少女の身体が出力されていく。さらにセーラー服を模したような魔法少女のコスチュームが現れて、その身を包む。ブワッと光が弾けた後には一人の魔法少女が立っていた。


「これが本当にゴーレムなんですか? 全然違和感ないんですけど」


「それが魔法少女。お嬢さんの本体は今は頭部のサークレットに収納されておる」


 へぇ、そういう仕組みなのか。ともかくこれで戦う準備はできた。


『あれあれぇ? エルくんの中に技能(スキル)反応が残ってる。あ~。エルくん。向こうで死ぬ前になんかした?』


「何をしたかはわからないが、溶ける直前になんか柔らかいものをぶち抜いたような気がする」


『そっか、エルくん。君は一部だけどドラゴンの能力を奪いました。その力を使えばエルくんも魔法少女になれちゃいます』


 この俺が魔法少女に? 本当に? 決断の時は唐突に訪れたのだった。

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[一言] 【タイトル】どことなく、昔のOVAとか映画にありそうなタイトル。 【あらすじ】「ファルシのルシが~」みたいな、作品固有の名前が多くて読みづらいあらすじ。ゴチャゴチャしていて、どこが肝なのか…
[一言] 4−25 転生失敗魔法少女隊ワーストキッズ! タイトル:ちょっと待って? 転生失敗ってどうなるんだろうか? あらすじ:『まどかまぎか』を思い出した。男子も魔法少女になれるん? ひと言感…
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