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09 白い友情
放課後――
教室には誰も残っていなかった。唯一、久志だけを残して。
「……………………」
それはさながら蝉の抜け殻のようだった。身動き一つ取らず、窓の外に浮かぶ夕暮れの雲を呆然と眺めているだけ。じきにからからと風化してしまい、砂となって散っていくような儚さを全体に漂わせている。そんな生気の枯渇した教室に、ひょっこりと中根が現れた。
「杉森……」
小声で囁くと、彼は久志の机の中に一枚の写真を忍ばせた。
「実は加藤のプレミア写真、俺も買ってたんだよ。本当なら一枚千円で金を取るとこだが……さすがに不憫だからタダでやるよ」
それだけ言い残して、彼は風のように姿を消した。
わなわなと指を動かし、その写真を見つめて、彼の怒りは頂点に達した。
「こんなもん、いるかああああああ!」
力の限りに叫び尽くし、久志は純白の下着の画像を机に思い切り叩きつけた。




