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魔王side3


 夏休みに入った。

 やっとあいつと離れられる。


 清々しい気持ちで戻った俺に、いきなり宰相のミトスが小言を言った。


「3か月近くも国を開けるなんて何を考えていらっしゃるのですかっ!? さっさと聖女を消してしまえばよろしいのではないですか?」


「無闇に命を奪うなど人間と同じ愚かな行為をこの俺にしろというのか?」


「ですが、魔王様が監視しなければならない理由があるのですか? 次は私が参ります!」


「記憶操作は俺でなければ出来ないだろう? 俺が行くしかあるまい」


「それでは次はクロードではなく私が一緒に参ります」


「えっ、いやだよ〜。ミトスは転移魔法使えないでしょ? 次も僕が行く〜」


「くっ……しかしクロードが自ら進んで行くと言うなど、もしかして聖女に好意を持ってしまったのではないでしょうね?」


「そんな事したら魔王様に殺されちゃうよ〜」


「当然でしょう。聖女は敵なのですから」


「ううん、そうじゃなくって〜」

「クロード」


「あっ、そうだ、僕、お師匠様の所に行かなきゃ。じゃ、ミトスまたね〜」


「……魔王様何かありましたか?」


「何もないが?」


 全く何を気にしているのか知らないが、帰って早々うるさくて敵わない。




 料理長にハンバーガーやサンドイッチなどの作り方を教えて作らせた。


 ミトスにも食べさせた。


「美味しいですね」


「本当だ〜、すっごく美味しいね!」


「クロードは食べた事がないのですか?」


「うん、僕、聖女の前ではいつも猫になってるんだ〜。ねえ、魔王様〜、僕も今度から人型でいてもい〜い?」


「駄目だ」


「ちぇ〜。ささみ料理もここの料理と比べればとても美味しいんだけど、僕もクレアの作ったハンバーガー食べたいな〜」


「クレア?」


「あっ、聖女って言わなきゃいけないんだった。魔王様に殺されちゃう」


「当然でしょう。聖女は敵なのですから」


「ううん、そうじゃなくって〜」

「クロード」


「あっ、そうだ、僕、お師匠様の所に行かなきゃ。じゃ、ミトスまたね〜」


「……魔王様何かありましたか?」


「何もないが?」


 本当にコイツらは騒がしい。


 ミトスをひと睨みして黙らせ俺も食べた。


 ……美味しい。美味しいのだが、なぜかあいつの家で食べた時ほどの感動はなかった。


 まあ、初めてのものは美化されるからな。


 あいつは今日も何か作っているのだろうか?


 別に、あいつを思い出したわけではない。

 あいつの作る食べ物を思い出しただけだ。

 

 雑念を消すために溜まった仕事をひたすら片付けた。




*****




「お久しぶりです!」


 2か月ぶりに会ったあいつが満面の笑みで言った。


 なぜか眩しくて目を逸らしてしまった。


 聖女の力が覚醒したのか?

 そうではないようだが……


 そして隣国からの留学生が来てあいつの隣の席になった。


「駄目ですよ〜」


 あいつの声に視線を向けると、留学生があいつの髪に口付けていた。


 イラッとした。


 放課後の案内を俺も付き合おうと思っていた。しかし、なんの前触れもなく、突然どこかの空間に閉じ込められた。


 以前あいつが話していた『ゲームの強制力』というものを思い出した。

 それが働いているのかもしれない。


 他の攻略対象が全員婚約者などと上手くいっている以上、あいつの相手はあの留学生しか残っていない。

 そいつと上手くいくには俺が邪魔なのだろう。


 イラッとした。


 最大出力の魔法で空間を切り裂き、やっと外に出られたと思ったら、留学生があいつに口づけようしていた。


 イラッとした。


 俺の魔力の消費が激しかったことを感謝しろ。そうでなければ命を奪っていたかもしれない。


 今日何度目かの苛立ちの後、気づくとあいつの腕を掴んでいた。


 すると留学生が挑発してきた。


「俺が先に彼女を送ると誘ったんだが?」


 何を言っている?


「彼女は俺の婚約者なんだが?」


 人のものに手を出すな。

 腹立たしい。


 いつまでも苛立ちがおさまらなかったが、あいつが余計な心配をしているので思わず抱きしめてしまった。そんな必要はないのに。


 そして、泣き出したあいつの頭に口づけてしまった。そんな必要はないのに。


 俺があいつの存在を確かめたかったなどということは、決してない。



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