魔王side1
「魔王だ!」
「みんな避難しろ!」
また呼び出されてしまった……
「クレア、無理はするな!」
「アレックス様がいれば何も怖くはありません」
「私が必ずお前を守る」
何度も聞いたそのセリフ。
一緒にいる相手はいつも違っていたのに、最近はずっとその男だな。そいつに決めたのか?
「私たちは決して貴方に屈したりはしない!ディバインレイ!」
屈するも何も、こちらは何もしていないのだが……。
そして必ず最後に彼女は周りに聞こえないような小さな小さな声で呟く。
「魔王様、ごめんなさい……」
苦しそうに。
…………
そしてまた巻き戻る。
一方的に呼び出され、そして倒される度に時間が巻き戻る。
何度も何度も。
ただただ繰り返される。
終わりがないという恐怖。
頭がおかしくなりそうだった。
色々と試してみたが結果は同じだった。
苦しげな彼女の声を思い出すものの、もう彼女を消すしか方法はないと思った。
そして彼女のいる学園に潜り込んだ。
逃げられないよう、俺のことを彼女が一番好ましく思っている者として認識する魔法をかけた。
俺が倒される時「アレックス」という者と一緒にいることが多かった。
だから俺のことを「アレックス」と認識すると思っていた。
俺を見た瞬間、恋焦がれたような熱を帯びた目と歓喜の表情をしたので、魔法が効いていると思った。
なのに……
「魔王様……」
「えっ?」
この世で一番発されるはずのない呼び名に、人生で初めてと言い切れるほどの間抜けな声が漏れた。
しかもあまりにも予想の斜め上のさらにその上の出来事の連続に、ただただ混乱するだけだった。
「え〜っと、ゲームというのは娯楽の一つなんですけど、魔王様が出てくるゲームは、選択肢や結末が幾つもある小説みたいなものです」
こいつ、俺が「ゲーム」そのものを知らないと思っていないか?いや、それよりも今とても重要なことを言っていなかったか!?
「結末がいくつもあるのか!? では俺が倒されない結末もあるのか!?」
「いえ、魔王様は絶対に倒されます」
ふざけるなっ!!!
なぜいくつも結末があるのに俺の倒されない結末はないんだ!?
「魔王様を倒さないと国に平和が訪れないので……」
いい加減にしろっ!
こちらからは何もしていないのに勝手に結界を壊して侵入して搾取して、抵抗すれば「平和を脅かされる」などと、どの口が言うのかっ!
「今回も呼び出されたんですか?」
「あっ、いや、今回は自分から来た」
「……」
おかしい。
どうも調子が狂わされている。
こいつが聖女の卵だからか?
いついかなる時も、こいつに倒される時でさえ冷静なこの俺が、先程からずっと慌てさせられてばかりいる。
一刻も早くこいつから離れた方がいい。そう思った時だった。
「一目惚れなんです!」
何っ!?
また俺を混乱させようとしているのか?
でもこの必死さ。本当のことを言っているような気がする。
『魔王様、ごめんなさい……』
いつも俺を倒した後、苦しそうにそう言っていたのは俺のことが好きだからなのか?
俺の姿が見えているのは、俺のことが好きだからなのか?
こいつの側にいるのは危険な気がしたが、今まで一度もなかった状況に、もしかしたら「繰り返し」を終わらせる事ができるかもしれないと思った。
そして側で監視することにした。




