満月の夜に
本日2話目。いや日をまたいでるから本日1話目になるのかな?
「な、なんで無理なんですか?」
『加護の効果なんじゃが、攻撃職系スキルが習得率100%及び熟練度上昇スピード10倍・攻撃の威力が5倍・補助職系スキルの習得率100分の1の3つじゃ。おぬし脇役Aという職業を持っておるじゃろ』
「え、あ、はい」
『その効果は攻撃職系スキルが習得不可能・補助職系スキルの習得率10倍。矛盾が生じるんじゃ』
「あ」
え、でも、脇役Aが消えれば。そうだよ、脇役Aを消せばいんだよ。
『無理じゃ。その脇役A、儂より高位の神がおぬしに付けたのじゃ。効果の矛盾し合うモノがあった場合、授けた者の存在の劣っている方のモノが消えるんじゃ』
「こ、これ付けたの誰ですか?どこに行けば会えますか?」
『最高神。いや創造神の方がわかりやすいかの?』
創造神、神を作り時間と空間を作り世界を作った原初の神。
そんなん無理じゃん。どうやったって取れねぇじゃんコレ。
『じゃからのおぬしには神具を授ける』
「寝具?」
『違う。神の道具、神具じゃ。といってもそんなたいそうなモノじゃないがの』
やべぇ神具、超ドキドキする。
じいさんが出現させたのは、1つの銀の水差し。
『名は“源泉”。この中から水が消えることはなく、通す魔力の量によって飲料水・魔力水・聖水・神水のどれでも注ぐことが出来る』
「ちょっと失望」
『おぬしは未だ勇者とも英雄とも呼べぬ未熟な器じゃ。おぬしに渡せる限界点じゃな』
「くっ」
『そう悲観するでない。おぬしの器は未だ発展途上、精進すれば英雄にでもなれるじゃろ』
英雄・・・・・・遠いなぁ。
『ほれ、持ってけ』
じいさんが手を振ると源泉は俺の目の前に移動していた。
「コレが神具」
形や効果はどうあれ神具。触れるのも緊張する。
「あれ、結構軽い」
『水差し自体の重さしか感じんように出来てるからの』
「どのくらいの頻度であげればいいんだ」
『出来れば毎日、少なくとも2週に1度。また意識を失った時は孵化させた時と同じように神水に浸け満月の光を当てるのじゃ』
「分かりました。ありがとうございます」
『では、そろそろあっちに戻れ』
「はい」
源泉をポーチにしまう。よし帰ろう!・・・・・・あれ?俺、戻り方知らねぇ!
『そうか。そうじゃったな。生きてるうちにまた来い。その時、器があれば英雄になれるかもしれんの』
じいさんが軽く手を払う。その動作だけで暴風が吹き荒れた。あまりの風の強さに目を閉じた。
◆◆◆
「あれ、扉の前だ」
目
を開けると景色が変わっていて部屋に入る扉の前に立っていた。腕の中にはしっかりとノゾミがいた。
「あ、サトー殿。今お戻りになられたのですね」
敬語を吐く口の上、その瞳には不安があった。
大丈夫さ、イグナ(略)さん。あんたの立場は脅かされねぇからさ。
「はい」
「その、加護は頂けましたか?」
「それがその、俺には加護を与えられないと言う話になって、器が出来た頃にもう一度来るようにと」
嘘は言ってません!
「そ、そうですか。それは残念です。もうお帰りになられますか?時間があるのであれば神殿内を案内いたしますが」
おいおい目が嬉しいって言ってるぞ。まぁいいけど。
「いえ今日はもう宿に」
「そうですか。では門までお送りします」
◆◆◆
今日は満月、ノゾミが目を覚ますには最高の日だ。
ちょうど満月が天頂に来た時、ノゾミが長らく閉じていたその瞼を開いた。
(ん、パパ)
「え?」
今のなんだ。まさかノゾミの念話か
(ノゾミ?ノゾミ!)
(パパッ!)
おうおうおうパパだよぅ。俺パパ。いいじゃんパパ。20歳独身、バツなし、子1人、その名は佐藤慶明!




