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スリガオ海峡

100万アクセスありがとうございます!この物語も後少しです!どうか最後までお付き合いいただけましたら。

 烏巣の戦いに勝利した俺たち日本・ヌルハチ連合軍であったが、明も残兵をかき集め、ぎょうと南京を挟むような形で防衛線を構築し、ひとまず両軍がにらみ合う事態となった。まだ明の残る兵力も侮れないものがあったのだ。とはいえ、北京はすでにこちらの手中にあった。その北京に太閤、豊臣秀吉殿下がついに秀頼様を連れて乗り込んできたのである。


「家康殿、三成、清正、よくやった。」

「はっ!」

「ヌルハチ殿も素晴らしい戦いぶりだったと言う。その民を愛する仁政といい、ぜひ中華の皇帝に即位していただきたい(以後通詞を通してと思ってくだされ。作者注)」

「我友、朋友加藤清正殿の主である秀吉様こそ中華の王にふさわしい。」

「いやいや、中華の王には大陸のものこそ相応しい…しかしもしよろしければわしの提案を聞いてみてはくれんか。」


 秀吉様の提案は以下の通りであった。ヌルハチ様が中華の皇帝に即位する。しかし、その帝位は日本の天皇が戴冠する、ということであった。


「天皇が…どういう訳で?」

「欧州は羅馬ろーま皇帝が帝国を支配しているが、それは羅馬教皇が認め、戴冠しているのだ。日本の天皇も羅馬教皇同様、政治的な実権は本人は持ち合わせておらず、『権威を認める』存在なのだ。その天皇がヌルハチ殿や、広南、アユタヤなど諸国の王、皇帝を戴冠し、亜細亜の諸国が天皇によって結ばれた兄弟となれば面白いと思わぬか。」

「それは興味深い考え方だ。逆にいうと逆賊が謀反を起こしても天皇陛下が認めなければ」

「すなわち皇帝となることはできない。」

「よろしい!面白い!私が中華の皇帝となり、天皇陛下から戴冠を受けましょう。」

「後まだお願いがあるのだが。」

「なんなりと。」


 とヌルハチ殿は応えた。


「もしよろしければこの秀頼をヌルハチ殿の帝国の『関白』にして欲しい。関白とはすなわち皇帝をたすけるものだ。もちろん秀頼が成長するまでは補佐のものとして加藤清正を置こう。」

「清正殿が助けてくれるならこんな力強いことはない。こちらからもぜひお願いしたい。それともう一つお願いが。」

「なんなりと。」


 今度は殿下が応えた。


「もしよろければ嫡子、ホンタイジの嫁に島津豊久殿の娘を迎えたい。烏巣での豊久殿の働きぶり、強き血を我が一族に取り入れたいのだ!」

「どうだ豊久。」

「この上ない光栄にごわす。」

「うむ。ところでヌルハチ殿、島津の血が皇家に入るとなるとな、」


 と言って秀吉様は続けた。島津は秦氏の末裔であり、秦氏は秦の始皇帝の末裔なのだ、と。


「それならば我が国号は『清』にしましょう!秦そのままだと憚られるので。」


 史実だとヌルハチは『後金』の皇帝であり、後に子孫が『清』と改名したのだが、この世界では島津の縁で早々に清を名乗ることになった。こうして清と日本は兄弟国になった。(ちなみに天皇陛下の下の中華皇帝にあたる格の『日本国王』は秀吉様が『考えがあるのでそれはまたの話で』となった)


清の皇室には島津の血が入り、そのため秦の始皇帝の血を継ぐものが二千年ぶりに中華の皇帝の座に就くことになったのだ。清では北条氏直などが見直した法の整備が進められ、中華は儒教的情実よりも法が重視される社会となっていった。ここにおいて始皇帝の悲願キングダムがなったとも言えよう。


 ヌルハチ殿の即位のための後陽成天皇の行幸は、明がまだ戦機を窺っており時期尚早、とのことで八条宮智仁親王を北京に迎えた。そしてヌルハチ殿は太祖大清皇帝として盛大に即位されたのであった。


 北京で清皇帝の即位を見届けた後、俺は小倉に戻り、試験航海が終わって回航されていた二代目扶桑と同山城を中核とする艦隊に搭乗した。蒸気タービンエンジンを持つ扶桑に帆走では付いてこれないので随伴用にも蒸気艦を建造していたのだ。駆逐艦『時雨』『山雲』『満潮』『朝雲』と、巡洋艦『最上』(本来の史実の本物だと航空機を積んでいた後ろ半分を石炭・水を搭載するスペースにして補給艦を兼ねている)、そして最上の護衛に駆逐艦『電』『雷』を追加した艦隊を編成した。ちなみに駆逐艦、とか言っているけど魚雷の開発は間に合わなかったから積んでないの。その分エンジンが大きくてスペース取ってるから仕方ないの。艦型的に便宜上呼ばせて。


 我が艦隊はスリガオ海峡からフィリピン諸島に侵入し、高山国から南下してくる藤堂高虎率いる戦列艦(ガレオン船)艦隊とともに呂宋、その首府のマニラを挟み撃ちにする作戦だ。

 旗艦山城に搭乗した俺は無事に南下してフィリピンの海域に入り、スリガオ海峡に突入した。


 そこに待ち伏せていたのは日本の侵攻を聞き、スペインが用意した大艦隊『東方無敵艦隊』であった。スペインの国力の半分も注ぎ込んだのではないか、というガレオン船多数を含む大艦隊である。


スペイン艦隊Nieve profundaに座乗する司令官ロベルト・カルロスは日本艦隊を侮っていた。


「聞けばこちらに向かっているのは物見の報告によれば10隻にも満たない艦隊というではないか!いくら日本の艦隊がこれまでの報告通り優れた砲を備えていると言ってもこちらは200隻の大艦隊だぞ。」

「しかし物見は『見たこともないような船だ』と申しております。なんでも帆もなく進むとか。」

「ふん。そんな幽霊船のようなものがあるか!」


 とロベルト・カルロスが言い返したその横で突然水柱が立った!


「敵襲!砲撃です!」

「なんだと、敵の姿は見えないではないか。」

「見張りが水平線にゴマ粒のように浮かぶ煙を吐く船があり、そこから撃ってきていると!」

「馬鹿な。そんな距離で!」


 と言ったロベルト・カルロスの目の前で僚艦のガレオン船に砲弾が直撃し、炎を上げながら沈んでいく。


 俺、石田三成は『扶桑』の戦闘艦橋で双眼鏡で戦況を見ていた。


「うっぷ…戦闘艦橋高いところにあって揺れが大きいから苦手なんだよね。砲撃は無事に直撃しているな!このまま前進しつつ敵を殲滅!うっぷ…俺は下の航海艦橋に帰るから後よろしく!」


 とバケツを抱えて吐きながらまだ揺れがマシな航海艦橋に戻る。あかん。今後の人生を賭けて酔どめ薬を開発したい。


 とはいえ、戦艦とガレオン船で勝負にはならなった。ガレオン船のカノン砲の有効射程が800m程度なのに対して『扶桑』の主砲28cm砲の有効射程は20000mに達するのだ。駆逐艦の主砲は規格統一狙って8.8cm砲なのだが、(というか整理のため28cm,20cm,8.8cmしか艦載砲作ってない。機銃も全部12.7mm)それすら有効射程は10000mを超えており、完全にアウトレンジでスペイン艦隊はろくにこちらを視認すらできない状態で、次々とこちらの砲弾は直撃する始末。戦艦の主砲に至っては至近弾でもスペイン船は沈み始める様子であった。命中精度を上げるため近づいていったが、それでも相手の有効射程からは数倍の距離があり、鎧袖一触というか一方的虐殺というか…東方無敵艦隊は東方無艦艦隊になりつつあった。


 スペイン艦隊旗艦、Nieve profundaを率いるロベルト・カルロスは狼狽していた。


「なぜ、なぜだ!なぜこちらが一方的に攻撃されて沈んでいくんだ!これになんだ、あの悪魔の城のような船は!」


 と扶桑を指差して絶叫する。


「提督!すでに生き残っている艦艇はもう数えるほどしかありません!」

「斬り込め!直接乗り込んで制圧するのだ!」

「提督!直接接舷して近接戦闘ならすでに多くの船が試みております!

…しかし敵に近づく前に」


 と言った目の前で敵艦隊に果敢に向かっていったガレオン船が突然傾いて沈んでいく。その影から現れたのは駆逐艦『電』であった。


「なんだあの帆がなく煙を吐く船は!それに速い!速すぎる!」


 ガレオン船の速力は7ノット程度である。帆船の速度は後年の快速クリッパー、カティーサーク号でも17ノットを超えるぐらいであった。それに対して兵装を8.8cm連装砲3基と機銃に抑え、相対的に大きな蒸気タービンを積んだ駆逐艦群の速力は…実は明治に建造され、あの名作『ゴールデンカムイ』に登場している初代の『電』でも30ノットを超えているのだ。


 『電』のみならず『時雨』『満潮』など他の駆逐艦もスペイン残存艦隊に突入し、次々と屠っていく。

 ここにいたり、スペイン艦隊提督ロベルト・カルロスは旗艦Nieve profundaで脱出を図った。しかしそこに駆逐艦『電』が追いつき、そのままNieve profundaに突っ込んだのである。いくら駆逐艦といっても鋼鉄艦と木造船では話にならず、Nieve profundaは敢え無く真っ二つになって轟沈してしまったのであった。


「沈んだ敵も、できれば助けたいのです。」


 と『電』に座乗していた堀秀政殿は生存者の救助に努めたが、その後には無数の木材が浮かぶばかりとなっていた。


 東方無敵艦隊を失ったマニラ総督府は山城・扶桑の艦砲射撃を受けて瓦礫の山と化し、マニラは組織的な抵抗もすることなく降伏した。イスパニア軍のゴアへの退去を確約させ、南方艦隊はついにフィリピン全土とボルネオ島、ブルネイをその傘下に置くことに成功したのである。その後油田の開発が進められ、様々な技術革新がなされることとなっていったのであった。


 呂宋フィリピンを支配下に置いた後、アユタヤなど諸国には使者を送り、天皇陛下から戴冠される兄弟国家に加盟するように要請を行った。もちろん天皇陛下は『象徴』であり、各国の宗教的な立場などを束縛するものではない、と付け加えて。強固に抵抗する国には兵を送り、こうして東南アジアの諸国も次々に『天皇陛下の兄弟国』の版図となっていったのであった。


 俺はフィリピン制圧後山城を旗艦として堀秀政殿に託して南方総督とし、扶桑で旅順港に戻った。いよいよ亜細亜統一の仕上げが見えてきた。

清と秦は中国語だと読みが違うよ、とか細かいところは置いておいてね。繰り返すけどこのお話、最初から2日で関白宣下の勅許取ってくる話ですから。細かいところはそういう事で。


後2話、明日で完結です。

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― 新着の感想 ―
[一言] え、後二話で三成さんまたチェスト関ヶ原されるん?ウッソだろ(エヴィン感)
[一言] 完結まじですか、、 。。。もはや家康も関係なくなってきてて夢幻の如くルートかと思ってましたが
[気になる点] 究極のスキルゲットは明日ということですな [一言] 信長様はどうなったんですか?なんか妙な予感が
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