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豊臣秀俊

 九州平定から戻られた豊臣秀吉様は京に新しく建築された新城、聚楽第に凱旋された。そして天正16年(1588年)後陽成天皇の聚楽第行幸が行われ、秀吉様の天下人としての権威が確立した。その際諸大名からの誓詞を受け取ったのが秀吉様の正室、お寧様の兄上の木下家定様のお子で、その利発さから秀吉様の養子に迎えられた豊臣秀俊様だった。秀俊様は史実でも翌年、わずか7歳で秀吉様の後継者として知らしめるために元服させられていたが、九州平定がトントン拍子にいったこともあるのか、6歳で元服とされたのである。


 秀俊様は現代なら幼稚園や小学校にようやく入学するような年齢で、成人男性扱いとなったため、京にうごめく公家共が、毎晩接待と称して連れ出し、酒を飲ませ、女をあてがう始末であった。


 秀吉様も

「金吾(中納言の別称、秀俊が任官していた)の身体のためにはよくないが、金吾も関白の後を継ぐ者、貴族の習わしには慣れる必要があるだろう…」


 と苦々しく感じつつも手を出しかねる状況のようだった。幼子を弄ぶ悪鬼の所業に俺は家臣団を集め、立ち上がることにした。


 …とある公家の屋敷。豊臣秀俊は公家の宴席に招かれていた。


「もう飲めません。第一酒など飲んでも気持ち悪くなってしまう…」


 ベソをかく秀俊。しかし周りにいる公卿共は


「そんな軟弱では立派な公家になれませんぞ!」

「主上に仕えるには徹夜で宴席を軽々とこなされませんと。」

「さあ気分を変えておなごでも。」


 と全裸に近い格好の遊女に抱きつかせる始末である。


「我はこんなところにいとうない…」

「そんな事を言っていては関白様の名に傷が付きますぞ。」

「さぁ、この女を抱いて一族繁栄の練習をしなされ。」


 とけしかける。


 その時、屋敷の火がフッと消え、縁側に人影が浮かび上がった。


「何奴!」


「ひとつ、人の世の生き血をすすり、

ふたつ、不埒な悪行三昧、

みっつ、醜い浮世の鬼を、

退治してくれよう、桃太郎、桃太郎侍、松平長七郎でござる。」


「桃太郎なのだか長七郎なのだかはっきりしろ!」

「そうだそうだ!」

「曲者だ!護衛のもの!たたっ斬れ!」


 …しかし護衛は反応しない。


「者共!いかがした!この桃太郎だか金太郎だかをたたっ斬れ!」

「その者らならこの『片手千人斬り』土屋昌恒の刃の錆になりましたが。」


 と土屋昌恒が登場。


「忍びの者はいかがした!」

「とっくに伊賀忍軍が処分したが。」


 と両手に爆裂弾を持ったジョー・ダンも登場。


「この長七郎、この世の悪を討つ!俺の名前は引導代わりだ!迷わず地獄へ落ちるがよい!!」

「だから桃太郎と長七郎のどちらなのだ…」


 と悪公家共は呻きつつ、長七郎の一刀のもとに討たれたのであった。


「秀俊様、お助けに参りました。」

「長七郎殿っ!…本当に、本当に嫌だったのじゃ…」

「これからはこの桃太郎侍が秀俊様をお守りいたす。秀俊様は公卿共の頂点となるべきお方、下賤な公家共に惑わされることなく、摂関家のような立派な方々と交わり宮中祭事などに精通され、細川幽斎様から古今伝授を学ぶなど学に励まれるのがよろしいかと。英才と呼ばれる金吾様なら必ず成し遂げられると思います。」

「うむ、うむ。」


 秀俊は激しくうなずいた。


「酒や女はお子をなせる歳となり、一国を差配するようになりましたらいくらでも手に入ります。今はただその身を高めるのがよろしいかと。」

「長七郎よ!そなたのいう通りだ!今からはそなたを父と思って精進するぞ!」

「金吾様の父は関白様なれば…」

「であったな!なれば兄と思おうぞ!」


 といって羽柴秀俊は初めて子供らしく笑った。


庭に出て満月を眺めた羽柴秀俊は長七郎に意を決したように声をかけた。


「長七郎!そなたに頼みがある。」

「なんでございましょう。」

「我に武芸を教えていただきたいのだ。武将としても父、関白殿下に負けないように立派な武士になりたい!」

「良き心がけにございます!されど、それはなりませぬ。」

「何故じゃ。」

「この長七郎、秀俊様に近づく悪を斬るために近侍させていただきます。そして秀俊様には私ではなく、より良き教師を用意させていただきました。武芸だけではなく。」

「良き教師?」

「武芸担当、『片手千人斬り』土屋昌恒です!高天神で襲われていた少女を家康公が暗殺しそうな領域まで育てたことがあります。」

「同じく武芸担当、疋田文五郎です。上泉信綱様の弟子で正直柳生石舟斎より強いです。箕輪城で襲われていた少女を武田の将を討つ領域まで育てたことがあります。」

「同じく武芸担当で今ブラブラしている水野勝成です。単騎で大軍に突っ込んでも生還できる技を伝えたい。」

「同じく武芸担当でブラブラしている仙石秀久です。泥臭くても相手を倒すのが得意です。」

「同じく武芸担当兼和歌など文化も担当の前田慶次郎利益です。なんか朋友ぽんようの直江兼続に頼まれたので来ました。でかい馬に乗るのが得意です。」

「軍略担当、馬場美濃守です。土塁を使った築城が得意です。」

「茶の湯担当ジョー・ダンです。最近のしみったれた利休の茶では物足りない方に新しい世界を紹介しています。」

「政治担当伊集院忠棟です。薩摩の猛者相手に交渉する胆力養成を目指します。」

「計略担当の竹中重治です。寡勢で城落とすと気持ちいいですよー。」

「…なんかすごい方々ですね…」

「「「我々が秀俊様にきっちり学んでいただきます!」」」


「…ところでこの公家共が惨殺されている現場はどうなさるので…」


 と秀俊様は聞いた。


「それは我々におまかせを。」


 と出てきた俺、石田三成が答える。


「ジョー・ダン!」

「ダンクシューーート!」


 と叫んでジョー・ダンは爆裂弾を屋敷に投げ込んだ。ジョー・ダンは日本史上初めてクリスマス休戦を成し遂げた男なのだ。それを聞いたオルガンティノ殿にえらく感激され、


「ならばミカエルと名乗る。」


 といいだし、今の名前は『ミカエル・ジョー・ダン』なのである。ちなみにミカエルの英語読みはマイケルである。


 ジョー・ダンの爆裂弾で貴族の屋敷は焼き払われ、我配下、伊賀忍軍の手のもので完膚なきまでに焼失した。そして俺の手で


「京都で淫蕩・不埒な三昧を繰り返していた公家共がいましたが、不幸な事故で火災がおきて死んだようです。」


 と秀吉様に報告し、


「ふむ…そうか。不埒な奴らがいなくなることは良いことだな。」


 と事後承諾(?)を頂いた。そしてこの事は密かに秀俊様を籠絡しようとしていた不逞の輩に広まり、秀俊様は酒浸りから脱して健康的に武芸と学業に励むようになったのである。


「それは悪しゅうござる!(疋田文五郎の決め台詞)」

「もう限界、許してくだされ!」

「こんなに早くへばっては片手千人どころか三人も切れませぬ!」


 と悲鳴のようなものが秀俊様の屋敷から連日響いてくるようになったけど、まあそれはそれで良いと思うのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 『剣の舞』ネタが出てくるとは脱帽です。
[一言] 殿様と千石とたこに見えた三匹が斬る!派の私 1人は桃太郎侍と中の人一緒だし大丈夫でしょ
[良い点] 秀俊様強化プログラム大変よろしいかと思います。 ありし日の佐吉、虎之助、市松よろしく真田信繁さん徳川秀康さん 宇喜多秀家さん島津豊久さんも加えよう! ガリ勉モノクル秀康とかいいんでないかな…
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