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ファイト西軍!本気を出せばこんなものよ。

週2-3回ぐらい目標で更新させていただきます。よろしくお願いします。

霧の中を進んでいく部隊がいる。松平忠吉とその舅、井伊直政の部隊だ。先陣の福島正則の先に出て抜け駆けしようというのである。


「そろそろ敵の部隊が見えてくる頃合いかと。」

「あの旗印は…立花宗茂?」


眼前に現れたのは史実の宇喜多秀家ではなく、立花宗茂の隊であった。


「脇坂や長束の情報では立花宗茂は大津に向かったはずなのでは?」


 どうやら長束正家や脇坂安治は事前に東軍に情報を流していたようだ。

しかし話が違う。とは言っても相手がどうであれ、戦うだけだ、と井伊直政は気を取り直した。


「かかれ!」


 早速鉄砲を撃ちかける。ものすごい轟音と共に相手も撃ち返して…来なかった。


鉄砲を物ともせずものすごい勢いで突撃してきたのだ。


「松平忠吉め。先陣はわしの役目だったはず。抜け駆けしおって。」

福島正則は烈火のごとく怒っていた。しかし武人としての誇りからか、

戦いの場にある今は、松平忠吉に怒りを向けることはせず、その力を冷静に眼前の宇喜多秀家の部隊に向けることにした。


(前日酒を飲んでなくて本当に良かった・・・)


部下たちが顔を見合わせる。そして福島隊は冷静に宇喜多隊に向かって銃撃を始めたのだった。


「さすがは井伊の赤備えこちらの突撃にあっても崩れませぬな。」


立花宗茂の家老が話しかける。


「うむ。井伊の赤鬼が先頭で槍を奮ってよく支えておる。しかし…。」


松平忠吉の部隊はよく戦っていた。しかし天下に勇名が鳴り響く西国無双、

立花宗茂の攻撃に対してやや乱れが生じてきていた。


「今だ!一気に松平隊を打ち破れ!」

「いかん!若様をお守りしろ!!」


迅速に対応したのはさすがは井伊直政である。しかし松平忠吉を守るために自らも銃弾を受けてしまった。

「井伊様!」

「大した傷ではない!下がるな!下がるな!」

統率は保たれているものの、直政まで負傷してしまい、流石に押されて後退しはじめるしかなかった。


 「福島正則なんぞ朝鮮でも糧秣補給の官僚働きが本分だったではないか。

  猛将などと称しているが我が父上といい勝負よ!」

 

 本多政重が言い放つ。そうだそうだ、と同調する明石全登と共に福島隊に襲いかかった。

福島は侮辱されても、実際には優れた大将である。宇喜多隊とは十分に渡り合っていた。

しかし史実では松平忠吉隊と共にあたってもやや押され気味ぐらいだったのが、

単独で2倍の数の宇喜多隊と衝突することになったのである。

 

「ぬうぅ。討ち取っても討ち取っても敵の数が減らぬ。」


笹の才蔵こと福島家の先鋒隊長可児吉長がぼやく。


「打ち捨てにしても次々と現れて息もつけないな。」


 とはいえ、さすが可児吉長である。福島隊も押されて後退はしているものの統率は乱れず組織的な戦闘を継続できていた。


「大谷刑部の部隊、多くないか?」


 ぼやいたのは藤堂高虎である。数的にはこちらが優位と思っていたのだが、

どうも想定していたよりも敵が多い。


「さすがは太閤殿下に百万の軍勢を任せたい、と言われた男よ。」


 藤堂高虎は感心した。しかし藤堂高虎も180cmを超える巨体を誇る偉丈夫、

築城で有名だが肉弾戦も強いのである。また藤堂隊は伝統的に自らの損害を顧みず積極的に攻撃をしかける傾向にあった。


「藤堂高虎、流石に崩れませんな。」


大谷吉継は感心して言った。とはいえ、戦況はこちらが押し気味である。


 全体的には西軍が押し気味ではあり、東軍側は押し込まれつつはあるものの決して崩れて逃げ出してしまうような部隊はなく、その戦いにほころびを見せることはなかった。

しかし想像以上に積極的な西軍の攻勢に徳川家康は苛立ちを隠しきれず、爪をかみだした。


「調略で動かない部隊のほうが多かったはずではないのか?」

「調略は水物ですからなぁ。それに小早川以外に応じた部隊の姿が見えないようで。」


本多忠勝が応えた。


「小早川の部隊に鉄砲を打ち込み、裏切りの催促をせよ!」


 黒田長政は面食らっていた。


調略したはずの諸将は戦場に全く見当たらなかった。


小早川は藤堂の担当である。佞臣石田三成を討ち果たすつもりで突撃したら、

そこら中に溝が掘ってあってそこから鉄砲を撃ちかけてすぐ隠れてしまう。

いくらつついても溝にこもって鉄砲を撃ってくるばかりで出てこない。


「三成の卑怯者!臆病者!正々堂々と出て来ぬか!!」

「正々堂々ならわしが付き合おう。」


 声のする方を振り返るとそこに翻るのは島津の丸に十文字。


 「九州では黒田家には世話になったな。おかげで九州統一の夢が果たせなかったわ!」

島津義弘が吠える。


「わが父(いいほうの家久)が急に死んだのもどうせ黒田官兵衛の仕業だろう。この恨み晴らしてくれる!」


 と吠えたのは島津豊久である。


 …なんで島津隊がこんなところに。黒田長政は訝しんだ。


「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」


島津隼人が凄まじい勢いで突撃してくる。


「はははは。正々堂々と戦いたいなら島津殿と戦えばいいだろう!

カッコつけて戦闘に出張ってくるほうが悪いのさ!」


俺はそれを見て言ってしまった。

 島津隊との戦闘に入った黒田長政がこちらを睨んで「お前絶対ぶち殺す」という

顔をしていたのは俺は忘れない。


万が一負けたらこの黒田長政殿は捕縛された俺に陣羽織をかけて優しい言葉なんてかけてくれないだろうなぁ。


負けないけど


黒田隊も朝鮮で鍛えられた精鋭揃いである。島津の猛攻に後退し始めたが、こちらも

また、崩れることはなかったのだった。

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