九州平定 I
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豊後の大名、大友宗麟が大阪に来て島津が九州を席巻していて滅ぼされそうだ、助けて欲しい、と訴えてきた。
「三成、どう思うか?」
と関白太政大臣、豊臣秀吉様に俺は尋ねられた。
「大友家といえば名家中の名家ですが、正直大友宗麟はバテレンかぶれで征服地の寺は打ち壊すは、家臣の妻に手を出すような淫蕩。息子の義統も織田信雄様が英傑に見えるほどの出来栄えで島津が勝つのはそりゃ当然かと。」
「しかし島津一家に九州をすべて取られるのは統率が効かなくなって甚だまずいな。」
「同感です。」
「となれば大友の求めに応じて島津を討ち、後に我が手で九州の支配を作り変えるが良いな。」
「御意。」
「よし、秀長に黒田孝高や毛利勢を率いさせて攻めさせよう。」
「西国といえば秀長様の真骨頂でございましょう。」
「しかし毛利などが準備をするには時間がかかる。故に讃岐の仙石秀久に四国の諸将を率いさせて先遣とさせよう。」
「はっ。」
…来ちゃったよ。仙石秀久様の九州攻め。このままだと戸次川で島津家久の策に嵌ってお味方全滅、秀久様改易だよ。秀久様には長浜時代からすごくお世話になっているのでここはなんとかしたいのだ。俺は秀久様の所に急いだ。
「秀久様!」
「おう、佐吉か!今度は九州攻めの先鋒の軍監だよ!上手く行ったら日向ぐらいもらえたりして。」
「秀久様、それどころではありません。」
「おう、どうしたそんな景気の悪そうな顔をして。」
「そもそも四国の諸将、十河殿以外は最近まで秀久様の敵で、言うことを聞くかどうか不安です。」
「うーん。だけど今は秀吉殿下の威光に従っているわけだからそこまで表立って反抗はしないんじゃない?」
「…少し考えが楽観的すぎる気が…」
「そうかなぁ、ま、気をつけるよ!」
「問題はそこだけではないのです。」
「ん?どした。」
「秀久様は殿下から『とにかく本隊が着くまで守りを固めて島津の動きを止めさえすればよい。』と命じられたはずです。」
「おう、その通りだ。でもそれって『わしが来るまでにお前なんとかしてみろ、別に倒してしまっても構わん。』だろ?」
「違います!!!!」
俺は大声を出してしまった。
「びっくりしたぁ。違うの?」
「この場合は本当に守りを固めてください。なにせ相手はあの『島津家久』なのです。」
「島津家久。聞かないけどな。」
「耳川で大友の大軍を全滅させ、沖田畷で龍造寺隆信を討ち取った名将です。島津四兄弟でも最も恐ろしい武将です!ちなみに両方の戦いともに島津のほうが圧倒的に寡兵です!」
「おお、そんなに恐ろしいやつなのか。なら俺が直接槍で…」
「直接やれれば権兵衛様ならあるいは仕留めることができるかも知れませんが、まず直接相まみえることができないのです。」
「というと?」
「島津家久は『釣り野伏』という戦法をつねづね使います。」
「釣り野伏せとは?」
「中央の敵が一見弱そうに見えて攻め進むと両側に臥せておいた伏兵が襲いかかり、長く伸びた味方は囲まれてしまう、という恐ろしい戦法です。しかも大抵の場合伏兵は鉄砲をたくさん装備してます。」
「そんなの引っかかるの?」
「立花道雪抜きだった大友家はともかく、龍造寺隆信は決して凡庸な将ではありません。鍋島直茂という名将が補佐をしていても大将が撃たれてしまったのです。」
「…分かった!とにかく豊後についたら防御を固めて絶対に殿下が着くまでに打って出ない、だな!」
「そうです!そのとおりです!この通りお願いします!」
「長篠や中国、信濃で数々の武功を上げてきた佐吉の言うことだ!信じるぜ!」
「ありがとうございます!」
…これで九州で仙石秀久様が失敗して『三国一の臆病者』とか呼ばれることもなくなるぜ、と気が軽くなって本隊の出兵に向けて準備していたある日、
「九州に派遣した先遣隊が全滅しました。長宗我部信親様、十河存保様討ち死に!」
…思わずお茶吹いた。
「なんでそうなったのだ!仙石秀久様はどうなさったのだ!」
…まさかその場のノリで作戦変更してやっぱり突撃したのか?詳しく聞いてみると
「仙石様は『うまく言えないがとにかく島津の大将の島津家久っていうのが恐ろしい大将でよ、弱そうに見えても絶対に攻めてはいけないのよ。だから川を渡るとかしないでもうちょっと引いてあのへんの丘陵に陣をしいて島津が攻めてきたら鉄砲で押し返そうぜ。時間が建てばこっちのほうが弾は多いから守り通せるし、殿下が来たら圧勝だからさ。』と諸将に申し出たそうなのですが…」
うんうん。対応として完璧じゃないですか。で、どうして?
「それを長曾我部元親様や十河存保様は『島津の恐ろしさは伝え聞く。ここは仙石のいう通り守りを固めよう。』と言ったのですが、名目上は大将の大友義統殿が『あんな小勢を恐れて手を出さぬとは仙石殿は『三国一の臆病者』ですな。と嘲笑い。』
「それで仙石様が切れたのか?」
「いえ、それでも仙石様は『駄目だ!島津家久に攻めかかっては駄目なんだ!守っていれば手は出せないって!』と言い続けたのですが、大友様が『こんな臆病者、秀吉殿の所に返品しよう』と言い出して秀久殿をひっ捕らえて縛ってしまい、箱に詰めて讃岐に船で送りつけてしまったのです。」
え?讃岐に船で送りつけた?
「残された兵に島津家久に攻めかかるように大友義統が音頭を取り、攻めかかったお味方は…」
「釣り野伏せで全滅、か。」
「そのとおりでございます。大友義統は真っ先に逃げ出して、『攻めろと言ったのは仙石秀久の責任だ!』と騒ぎ立てましたが、十河殿、長宗我部信親様は戦死しており、元親様は嫡男の死に茫然自失として誰もそれを糺せるものがなく…」
「仙石殿の責任とされてしまったのか。なんてことを。仙石様も妙に義理堅いというか男らしいというか、責任は自分にあると、とってしまったということか。」
「そのようで。」
あああああ。なんてこった。おのれ大友義統人面獣心なり。




