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小牧・長久手の戦い III 終焉

7000ポイント超え70万PV超え本当にありがとうございます!

頑張ります。

 その頃、徳川家康は羽柴秀次の本隊を襲撃し、それを敗走に追い込んでいた。


「秀吉の血縁とのことだが、弱い。実に弱い。…しかし敗走した秀次の部隊を吸収し、鉄砲で防御陣地を構築した堀秀政、さすが『名人久太郎』よ。」


 堀秀政はほぼ全軍が鉄砲を装備しており、家康と相対する丘陵に陣を敷いていた。


「これは長篠を思い出すな。今度はこちらが武田の立場だが。

もしこちらが迂闊にかかれば鉄砲隊に補足されてこちらの出血ばかりが増えるだろう。

もはや秀次は逃げおおせただろうな…しかしそうなると何故秀政は後退しない?すでに役目は果たしたのでは…?」


 家康は不審に思った。その時、使番が飛び込んできた


「家康様!後方から森長可が接近中です!」

「直政め、討ち損なったか。して池田隊は?」

「池田の姿は見えません!森だけです。」


 …池田は仕留めたか…なら直政の手柄も悪くはないか…と思いつつ、


「数はこちらのほうが多い!森隊にも対応して仕留めろ!大名首ぞ!」


 と家康は指示を出したが


「家康様!森隊は例の新式銃を装備しております!下手にかかるとこちらが一方的に撃たれて危険です!」

「なぬ!ならば無理押しはしなくてよい!守りを固めよ!」


 家康の指揮に馬廻りは素早く防御態勢を固めた。

 そしてその徳川勢を迂回する様に森長可は前進し、ついに堀秀政の部隊と合流することに成功したのであった。


「秀政は森隊を待っていたのか…なぜそれが分かる?」


 退却を始めた堀・森双方に対して追撃を禁じた後、家康は一人考え込むのであった。




 羽柴秀次の隊が敗走し、池田恒興の隊が壊滅に追い込まれたとの報を受け、羽柴秀吉は動いた。


「それはすなわち小牧に家康がいないということ!好機だ!」


 そして馬廻り2万を率いて出陣する。


「七銃士よ!また見せ場を作れ!」


 と発破をかけた秀吉、しかし秀吉が見たのは2万の敵にわずか500で立ちふさがる本多忠勝の姿であった。


「家康のために命を捨てて時間を稼ぐか。美しい姿だな。しかし死ね。」


 と号令一下に秀吉の部隊から凄まじい銃撃音が響き渡った。


 …しかし本多忠勝は全くの無傷のまま、そこに佇んでいた。


「なぜじゃ、なぜ当たらぬ!」

「 正 し い か ら 死 な な な い。」


 人々は本多忠勝の美しさに息を呑んだ。まさに軍神、とはこの人のことであろう。

 忠勝は名槍蜻蛉切を高く掲げるとまるで舞うような動きをした、と思いきやこちらの陣に飛び込んで前衛を薙ぎ払った。死が秀吉の陣営に広がる。


「撃て!撃て!」


 次々と銃弾が放たれるが本多忠勝には全く当たらない。ぶどう弾までもがまるで忠勝を避けるかのように飛んで、かえって味方に飛び込んで死傷者を出す有様だったのである。


「あ、現人神だぁ!」

「いや鬼だぁ!」


 兵たちが騒ぎ出し、とても戦いにならない。

 その間に本多忠勝は自らの陣に戻っている。


「…あれには今神が宿っている、と言うべきだろう。無理はならん。やむをえん。引け!」


 秀吉はむしろ感慨深げに退却を命じた。そして


「あんなに美しい大将は手取川の前にこっそり忍びで探りに行って見た上杉謙信以来だな。あのようなものは戦いでは殺せんよ。下がれ、下がれ。」


 と全軍を引かせたのであった。しかしこの対峙が行われている間に森長可や堀秀政は羽柴秀次、そして池田恒興を連れて羽柴家の陣に戻ることに成功し、家康もまた小牧城に戻って再びにらみ合いに戻ることになったのである。


 両陣が決定打を欠いてにらみあっていた時、事態は動いた。


「織田信雄様が和議…?この戦いを言い出したのは信雄様だぞ?」


 徳川家康は狐につままれたような気分になった。


「殿、この書状によりますと。」


 幕僚の参謀、本多正信が続ける。


「伊勢松坂の蒲生氏郷が伊賀から侵入した石田三成と共同で伊勢の信雄様の諸城を次々と落としたそうです。」

「なに?」

「特に石田隊は伊賀者の撹乱で混乱した所を銃騎兵でこちらの攻撃が全く届かない所から攻撃してきて手の打ち様がなく、海沿いの城では志摩から出撃してきた戦列艦の砲撃を浴びる始末だったと。」

「そりゃ銃騎兵、秀吉が持っていれば石田にはまずあるわな…」

「信雄殿は伊勢最後の城、長島も落とされたとのことで。」


「てへっ、来ちゃった。そういう訳だから秀吉様と和議結んでね。」


 振り返った家康の前には物乞いか、と見紛うばかりにボロボロの服を着た織田信雄がいた。


「うわあぁぁあ。秀吉『様』じゃないでしょ『様』じゃ。」


 思わすのけぞる徳川家康。


「いやだって和議を結べば尾張だけじゃなくて北伊勢も返してくれるっていうんだよ。今後の扱いも正統な織田当主として扱ってくれると言うし。破格じゃん。」

「自分で言うなぁ!とはいえ、帰るぞ!正信。陣を払ってひとまず三河に戻る!」

「この戦線は十分に有利に戦えていると思いますが。」

「いや駄目だ。正信、今回『石田三成は南伊勢・志摩の諸隊と協調してほぼ三方から追い込むように伊勢を落とした』のだ。」

「それはつまり?・・・あ。」

「さすが本多正信、気づいたか。これは三成殿からの警告なのだよ。三成殿、ひいては三成殿の主君の羽柴秀吉殿が我が徳川を本気で滅ぼすつもりなら、今回の中入りの時に。」

「志摩の戦列艦で海沿いを襲わせ、信濃から三河を襲う。」

「そして例の五郎殿が甲斐に向かえば甲斐の者は諸手を挙げて五郎殿を歓迎し甲斐は容易に落とされる。」

「最悪岡崎や浜松が落とされたらそこで『正統松平当主』に『長七郎』様をつける事すら可能…」

「それをしなかったということは、つまり。」

「まだ交渉の余地がありますよ、という信号ですな。」

「その通りだ。今回の戦、野戦では完全にとは行かないが我々は勝利して面目は十分に立った。さっさと帰って今後の方策を練るぞ!」

「はっ!」


 こうして徳川家康は撤兵し、小牧・長久手の戦いは終わりを告げたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 引かぬ媚びぬ省みぬいうてたやんけ信雄! イモ引きまくっとるし媚び売りまくりで媚び相場暴落やんけ! 省みぬだけ当たっとるよ!?いや少しは自分の行動を省みようぜ!! 織田の統領とかでいい気にな…
[良い点] 本田忠勝が覚悟のススメとか そりゃ勝てんわ [一言] そして、手の付けられない武威に 戦略で押し勝つ 基本にして最強
[気になる点] 今回の話は酷すぎる 2万に対して500で無双して、鉄砲も当たらないっていくらなんでも酷すぎてがっかりだよ。 [一言] こんなんだったら、毎回、忠勝来ました。勝ちました。終わり。 でい…
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