賎ヶ岳 II 賤ヶ岳の七銃士
丹羽長秀と激闘を繰り広げる佐久間盛政が見たのは街道を埋め尽くす羽柴秀吉直属の軍勢だった。
「なぜだ!中国大返しと同様の準備を整えても戻ってくるのにはまだ1日はかかるはず。となるとよほど無理に走って帰ってきたに違いない。者共!恐れるな!数は増えても羽柴勢は疲弊しているぞ!ここを乗り切れば我らの勝利だ!」
佐久間盛政は激励した。
俺、石田三成は賎ヶ岳に潜ませた伊賀忍者からその報告を受け、あーあ、盛政様やっちゃった。と思った。この秀吉本軍、実はほとんど疲れていないのである。
先に秀吉様に頼まれて、確かに街道整備はした。したけどもう一つの命令は以下のようなものだった。
「のう佐吉。岐阜の信孝など一捻りだろ?」
「と、申しますと。」
「お主の所には彼がいるではないか。『改造人間、仮面武士一号!』とか妙な決め台詞を言っているのが。」
「あ。」
「かの者なら…」
「岐阜城は17人もいれば落ちますね。」
「…というわけで竹中半兵衛様、伝説の再臨をお願いします。後詰めは加治木の斎藤利治様がしてくれますので。」
「任せておけ!この仮面武将竹中!(称号は気分で名乗っているらしく安定しない。)伝説は何度でも繰り返すことを証明してみせますぞ!」
ととっても元気に配下を連れて岐阜城に猫まっしぐら。(流石に17人よりは人数多く付けた。)
竹中様は出撃して外でウロウロしていた信孝様の軍勢には目もくれず、(小勢なのであちらからも見つからない)知り尽くした抜け道・弱点を駆使してあっという間に岐阜城を占領した。
竹中家の九枚笹の旗印が揚がって慌てて戻ってきた信孝勢の背後からは斎藤利治(With森家の戦鬼、各務元正がお手伝い)で挟み撃ちにし、信孝様はあえなく降伏したのであった。
…そして残りの大軍勢はどうしていたかというと、岐阜まで行かずに途中の養老温泉で一息ついてから悠々と引き返してきていたのである。
ここで舞台は賤ヶ岳に戻る。佐久間盛政は流石に知勇兼備の猛将である。援軍の出現に勢いを得た丹羽勢の攻撃も跳ね返し、よく戦線を維持していた。
そこに突然トランペットの音が響き渡る。進軍ラッパだ!
戦国の武将には聞き慣れない怪鳥の叫びのように聞こえたことだろう。
それとともに現れたのは銃を持ち、騎乗した秀吉様の近習だ。胸部だけを装甲した軽装にヘルメットを被っている。土鬼隊のよりはもうちょっと見栄えは良いが。
これこそが今回デビューした、秀吉様直属の騎兵(騎馬鉄砲)隊である。佐和山で苦節研究を続け、硝石丘からの生産に成功し、そこから硝酸と硫酸を生成して(以下略)要はついにニトロセルロースとニトログリセリンから無煙火薬を作ったのだ。ぐはは。
「しかし銃はモーゼルではなくなっちゃったんだよなぁ。」
とぼやくと一緒に来ていた国友衆の親方は
「結局モシン・ナガンのが良かったですからな。三成様が『将来使うから!』と言ってやたらに寒冷地での動作に拘ったのとモーゼルのほうが精密に作らないと動きが悪くて。ロシアはその点ザックリでいいですぞ。」
「ううぅ。」
「モシン・ナガンとは言っても騎兵隊用に縮めた『ドラクーン・ライフル』にしましたからな。えむ1944,とか言うやつ。銃剣が標準でついていて装着で照準がずれないのが実に使い勝手が良い。」
ホントはカービンなんだけどロシアのドラクーン・ライフル、って言い方が好きだからそっちで名付けたの。要はついにボルトアクションライフルが完成。進軍ラッパは懐かしのバルバトスの眷族がトランペット専門だったのでそっちに指導して作らせた。バルバトスは戦場に出すと何やらかすかわからないので伊勢で戦列艦やガレオン船の訓練専門に任じているのだ。
そして騎兵隊に抜擢されたのが以下の面々である。加藤清正(虎之助),福島正則(市松),加藤嘉明,平野長泰,脇坂安治,糟屋武則,片桐且元。そう、本当は『賤ヶ岳の七本槍』の面々だ。
印象的には胸甲兵よりももっと軽装な、アメリカ西部開拓時代の騎兵隊がぴったりな感じになっている。一応胴は軽く装甲付けているけど。
彼らは槍を振るわず、騎兵隊を指揮して柴田勢に突入する。佐久間盛政が手強い、と見きったようで盛政勢じゃなくて弟の柴田勝政勢に襲いかかった。さすが加藤清正、良い判断だ!
「なに!奴らの銃は連発か!」
「銃を立てずに次々と放ってくるぞ!」
「早すぎる!間に合わん!」
ボルトアクションライフルによる速射性と騎馬の機動性が組み合わさり、柴田勝政勢は壊乱状態になった。次々に射殺される柴田勢。穴が空いた所に騎兵隊が突入し、死の穴が広がっていく。そもそもm1944騎兵銃の有効射程は滑空砲である管打銃の3-4倍に達するのだ。反撃しようとするとすぐに下がられ、アウトレンジで一方的に銃殺されるのである。
「こうなっても親父殿(勝家)は救援を出さぬのか!」
佐久間盛政は見事な指揮で持ちこたえているもの、ほぼ全滅と言って良い状況になった柴田勝政隊を見て前田利家は呻いた。そして騎兵隊に続く秀吉本隊からの砲撃が前田利家の陣にも届くようになり、次々と部下が死傷し始めた。
「こう盛政殿と親父様の動きが噛み合わなければ我々も動きようがない!もはや勝敗は決した。無駄死にする前に離脱するぞ!」
と前田勢は隊列すらろくに整えずに全力で戦場から逃げ去った。それを見た柴田勢は
「前田勢が退却しているぞ…」
「もうダメだ…」
「ダメなんだぁ!」
と恐怖が伝播し、勝家の本陣すら我先に逃げ出す事態となった。柴田勝家はどうにか近習に守られつつ戦場を離脱した。佐久間盛政は一人敗残兵を収容しながら陣を立て直し、組織的に反撃をしながら後退していった。
秀吉様麾下の騎兵隊は退却する柴田勝家勢に追い打ちをし、散々に打ち破って手柄を上げ、後に『賤ヶ岳の七銃士』と呼ばれるようになったという。
ひとまず一日2話、朝夕で投稿継続していきます。よろしくお願いします。




