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石田三成、天正壬午に乱入する III

「わが主、羽柴秀吉様は上杉家との友好を強く望んでおります。」

「それはありがたい。あの森長可殿も賛同していただいている、というのは本当か。」

「森殿もこれからは上杉家と仲良くしていきたい、と。これが書状です。」


 と言って俺は森殿の書状を直江兼続殿に差し出した。


『これからは隣人だぜ。石田殿と一緒に仲良くやっていこうぜ。よろしく! 長可』


 …なんか砕けすぎているような気もするが、一緒に贈り物として添えられていた森殿が作ったという茶道具がそれは見事なものだったようで、直江殿がしきりに感心している。


「石田様が森殿を押さえてくれるとなるとありがたい!」

「では羽柴家との同盟は…」

「もちろんお受け致す。」


 北側はこれで安心だよ。信濃攻めに集中できるよ。


「ところで上杉家は今新発田重家の反乱で大変とか…」


 急に直江兼続の表情が暗くなる。


「ええ。御館の乱で過剰な恩賞を求めまして…」


 俺の史実の知識的には過分な恩賞でなくてむしろ新発田重家は気の毒なぐらいだが、ひとまず上杉景勝・直江兼続主従が困っているのは確かだ。


「僭越ながら私が説得してみましょうか?」

「それはありがたい!」


 …トントン拍子で話がまとまり、俺は念の為安全を期して部隊を率いて新発田重家の立て籠もる新発田城へ向かった。


 初夏の新発田城は草原の揺れる草の中にあった。俺は城門の前に出ると


「新発田重家様、和睦の使者に参りました。羽柴秀吉が家臣、石田三成でございます。」

「なに、あの『長篠の戦鬼』『木津川の海賊殺し』で高名な石田殿か。」


 城門の上に現れたのが新発田重家のようである。


「新発田殿、事ここに至っては戦い続けてもいつかは矢折れ、力尽きるは必定。ここは一旦降ってはいかがか?」

「あの直江が我を生かしておくとは思えぬ!」


 うんうん。『死んだ人を返してください』と訴えられたら『お前が直接行って閻魔大王に聞け』とか言って訴えた人ぶった切っちゃう直江さんだものね。


「それはなんとも言えないが、ならば城を去って吾が所にひとまず来る、というのはいかがか?」

「おお、それなら安心だ!それなら私も新発田殿を害しない、と誓えますぞ!」


 と隣りにいた直江兼続殿。あなたの近くにいたらやっぱり害しちゃうのかい。


「バカを言え!」


 突然新発田殿が怒り始めた。


「『あの』石田三成のところだぞ!馬場信春に土屋昌恒、はては武田盛信までもいるんだぞ!

更に真田昌幸まで従ったというではないか!まるっきり『現存武田最強軍団』ではないか!

そんな武田家だらけの所になんか行けるかぁ!これでも謙信様の家臣だぞ!馬鹿め馬鹿めバカめ!」


 そう言って城から雨あられと降ってくる矢・鉄砲。俺の兜をかすめちゃいました。


 …俺、キレちゃいました。


「そんなに我が武田軍団味わいたいなら生で味あわせてやるわ!後悔しながら死ぬがよい!」


 俺は叫ぶと隷下の部隊に突撃を命じた。銃兵同士と言っても上杉家はそれほど数が足りていない上、こちらは新式銃を多数装備している。射程がぜんぜん違うからアウトレンジでバッタバッタと城壁の上の兵を討ち取り、流石に重砲は持ってきていないが手投げ弾で城門を破壊し、突入した。


「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」


 俺は銃を背負い、スコップを掲げて城内に突入する。土鬼隊もそれに続き、城内の新発田兵はなすすべもなく掃討されていく。


「これが…これがあの石田三成…ひいては羽柴家の力か…」

「秀吉様の日輪の力!思い知るが良い!」


 俺は銃を構えて新発田重家の胴丸を撃ち抜いた。


「…わしの負けだ。最期に良き武士もののふと戦えてよかった…」


 新発田重家は絶命した。


「ふん。素直に生き延びればよかったものを…うちにはバック・ジョーもいるし他にも武田家出身じゃない家臣いるんだけどな。」


 俺はあまり感傷的な気分にはならなかった。


「新発田重家は生き延びるよりも戦いの中で散れてむしろ幸せだったのでしょうな…」


 渡辺勘兵衛さんが肩をたたいてくる。


「さ、これはこれで次行きましょう!次!」


 と島左近さんがパンパン、と手を叩いた。

 こうして新発田重家の乱は史実より5年も早くあっさりと終息を告げた。



「心から感謝いたします!これからは羽柴様、石田様はこの上杉景勝に何なりと申し付けいただけましたら。」


春日山城についた俺たちを、噂に聞いたしかめっ面よりはだいぶ柔和な表情で上杉景勝殿は歓待してくれた。新発田重家が討ち取られたことで上杉景勝はその対応に追われることなく、国力を温存できたのだ。その事に深く感謝した景勝・直江兼続は羽柴秀吉と石田三成に対して深い感謝の意と今後の協力を約束してくれたのであった。


それを見ていた真田信繁は呟いた。


「石田様半端ないな。」

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― 新着の感想 ―
[一言] あっこれ石田への友誼だ(いつもの) そうだよね、秀吉なんて、上杉が怖くて手取川から逃げた輩だからね。仕方がないね
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