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石田三成、天正壬午に乱入する I

 山崎の戦いが羽柴軍の勝利に終わった直後、俺、石田三成は羽柴秀吉様に願い出た。


「このまま郎党を引き連れ、東に向かう事をお許しください。」

「東、とな。明智の残党を狩るか?」


 秀吉様が答えた。


「いえ、その先、でございます。」

「その先、か。どこまで行くつもりじゃ?」


 秀吉様がニヤニヤしながら答える。


「配下たちに故郷を拝ませてやろうかと。」

「『配下に故郷』か。うむ。事態が落ち着くまでに切り取り次第でよいぞ。励めよ。」


 秀吉様がニカっと笑って親指を上げる。こんなん誰の影響よ。


 ともあれ、秀吉様の許可を頂いた俺は配下をかき集めて東方に向かって猛スピードで進軍を始めた。


 しばらく進軍すると、一隊の騎馬武者にであった。


「そこにいらっしゃるは明智秀満様とお見受けいたす!」


 島左近が声をかけた。


「いかにも、明智秀満でござる…そこもとは枯葉色の面妖な部隊、石田三成殿の隊か!」

「いかにも!」

「されば三成殿に見守っていただき、腹をかっさばいて最後を迎えるか…」

「なりませぬ。」


 俺は応えた。そして僧衣と分厚い書物を差し出す。


「これは先程道端で斃れていたのを看取った立派な高僧の物です。亡骸は私の部下が荼毘に付して埋葬いたしました。

そしてこれはかの高僧が身につけていた法衣です。」

「それをいかにしろと…われに遺族に届けよ、と?」

「いいえ違います。この者は奥州蘆名氏の係累のもののようです。そしてこちらの書物には物心ついてからの経歴や経験、修行についてなどなど非常に詳しく書かれており、言ってみればこの高僧の生涯が詰まっております。」

「して…」

「この者の生涯が無駄にならないように秀満様にあとを継いでほしいのです。全てはこの書を読めばわかります。」

「なんと。」

「この法衣を着け、頭を丸めて伊賀に向かってください。この伊賀者が案内いたします。

伊賀に着きましたら頃合いを見て徳川家康様の所に向かってください。この書を渡せば話は通じると思います。」


 と言って別の書を託す。


「家康様のところでは天海、と名乗られるのが良いでしょう。そしてこの高僧と明智様、ららぁ様のために祈っていただければ。」


 しばらく考えた後明智秀満は応えた。


「あいわかった。わしは生きて光秀様達の菩提を弔おう。」


 そうして明智秀満は僧体になり、伊賀者達に護衛されて去っていった。




 それから俺たちは更に東に突き進み、東美濃に入った。

ちょうどそこでは信濃から帰ってきた森長可勢が斎藤利治が城主の加治木城を攻めているところだった。加治木城の兵は城主の斎藤利治は織田信忠と一緒に討たれたと思っていて、必死の抵抗をしている。


「両者、相待たれよ!」


 斎藤利治が声をかける。


「殿!殿ではありませんか!」

「生きていらっしゃったのか!」


 城兵が次々と喜びの声をかけてきた。


「石田殿に呼ばれて備中高松城にいたのだ!そのまま京におれば信忠殿と共に討たれていた。石田殿は恩人じゃ!」


 そのやり取りを聞いていて攻め手から声が上がった。


「そこに居られるは石田三成殿ではありませんか。」


 攻め手の大将、森長可殿が俺の姿を見つけて声をかけてきた。


「森殿、美濃の中で争うのではなく、もっと大きな物を取り戻しませんか?」

「大きなものと…?」


 森長可殿はこちらの幕僚を眺める。馬場信春、土屋昌恒、そしてゴローちゃん。


「…もしや…」

「そう!一緒に信濃を取って海津城を取り戻しましょう!」


 カカカ、森長可殿は大きく笑い、戦いは撤収となった。


 そして俺は斎藤利治殿に飛騨を制圧するようにお願いした。


「飛騨を…石田殿の仰せならなんなりと従いましょう。確かに飛騨は越中の上杉を破った際に通りましたから面識があります。」

「飛騨の豪族が従えば安堵するもよし、従わなければ攻め滅ぼしてそこを利治様の拠点とするが良いかと。」

「うむ。任せておけ。」

「利治様の戦上手なれば容易かと。」


こうして斎藤利治は加治木城の配下を取りまとめて飛騨へ向かった。


 そして俺は森長可様や部下たちに向き直って言った。


「さあ、信濃へ向かいましょう。」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 利治が突然出てきて混乱した いくつか読み返して漸く理解
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