進軍 持怨
次の話も全体の80%ぐらいできていたのですが、足が飾りになる前にブルースクリーンで
飛んでしまいました。すみません。週末更新これで終わりです。
長束正家です。丹羽長秀様が姫路城で信長様折檻状を書いていた間に本能寺で信長様は討たれてしまいました。と、驚くまもなく、姫路城に羽柴秀吉様の大軍勢が現れたのです。
姫路城の広場には4万近い兵がひしめき合いながら整列しています。
前には壇が作られており…その後ろには巨大な織田信長様の顔の肖像画が飾ってあります。こんなものどこで用意したのでしょう。その大きさを考えると費用がかかったのは間違いなく、また長秀様の胃が痛くなりそうです。
秀吉様は壇上に上がると大きな声で演説を始めました。非常に立派で通る声だったので、会場中に響き渡り、皆がそれを聞くことができました。
「我々はひとりの英雄を失った!
しかし、これは敗北を意味するのか!?
否! 始まりなのだ!」
秀吉様、何を言い出しているのでしょう。
「信長様が家督を継がれた時の所領はわずか尾張半国だった。
にもかかわらず、今日まで戦い抜いてこられたのはなぜか?
諸君!
織田信長様の天下布武が正義だからだ!
これは諸君らが一番知っている。」
なんか長々と演説が続いています。
秀吉様神懸かっています。金金言ってて胃が痛いと騒ぐうちの丹羽様にも見習ってほしい。
「私の主君、諸君らが愛してくれた織田信長様は死んだ!!なぜだ!?」
…私の隣で石田三成くんが『坊やじゃないよ、信長様は坊やじゃないんだよ…』とうつろな目をしてブツブツつぶやいています。ちょっと怖い。
「新しい時代の覇権を我ら選ばれた織田家臣が得るは歴史の必然である。
ならば、我らは襟を正しこの戦局を打開しなければならぬ。
我々は過酷な戦国の世を生活の場としながらも共に苦悩し錬磨して今日の文化を築き上げてきた…
かつて織田信長様は人類の革新は日の本の民たる我々から始まるといった。
しかしながら信長様に逆らう守旧派の残骸どもは自分たちが天下の支配権を有すると増長し我々に抗戦をする。
諸君の父も、子も、その守旧派の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!」
「言ってないよ。人類の革新なんて信長様言ってないってば…」
三成くんがもうフラフラです。
「この悲しみも、怒りも忘れてはならない!
それを…信長様は…死をもって我々に示してくれた!
我々は今、この怒りを結集し、明智軍にたたきつけて、はじめて真の勝利を得ることができる!
この勝利こそ、戦死者すべてへの最大のなぐさめとなる!
武士よ!
悲しみを怒りに変えて立てよ、武士よ!
私は今、信長様の恨み、怨念を心に持ち、その意志を叶えるものとして我々を持怨軍、と名付ける!」
「じおんは俺が慈恩軍って言い出したほうが先やん…」
三成さんは頭を抱えています。あの長篠の戦鬼三成さんに頭を抱えさせるのだから秀吉様は超世の英傑なのでしょう。
「我ら持怨軍こそ選ばれた民であることを忘れないで欲しいのだ!
優良児たる我らこそ天下を救い得るのである!
進軍!持怨!」
「「「「「進軍!持怨!進軍!持怨!進軍!持怨!進軍!持怨!進軍!持怨!」」」」」
姫路城下に大号令が響き渡る。兵は熱狂して秀吉様に喝采を叫びます。
秀吉様は壇上から高く手を上げて命じました。
「全軍、出撃!信長様の敵を獲るのだ!」
「「「進軍!持怨!」」」
「「「進軍!持怨!」」」
「「「進軍!持怨!」」」
姫路城から敵討ちの意思に燃え上がった諸兵が出撃しました。その燃え上がる意思は誰にも止められそうもありません。
そして明智光秀が待つ山崎に向かっていったのです。
次は月曜日から再開します。




