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長束正家の憂鬱

休み前の更新ここまでです。次は金曜日に1話、日曜日に1話の更新予定です。後は週明けになります。

よろしくお願いします。

 私の名前は長束正家、『米五郎左』と謳われる織田家の重臣、丹羽長秀様に仕えております。今、私は姫路城にいます。どうしてこうなったかと言いますと、先日丹羽様が


「織田信長を俺が否定する!」


 などと叫ばれた後「止めたほうが良いですよ、返り討ちですよ。丹羽様程度が信長に勝てるなんて思えない。」と止めた津田信澄様を『うぉるらあ』と一刀に斬り捨てました。


 …総大将こそそんなに努めていませんけど丹羽様そこら中の戦場にお手伝いで出陣しまくっていて実は戦闘も強いのですよね…


「ひぃぃぃ!次は俺か!?」


 と怯える信孝様に


「なにを仰る。軍勢を取りまとめて姫路に向かいますぞ!あの悪の化身の怪鳥の様な城に!」


 と言って中川清秀などの摂津勢や池田恒興様にも声をかけて姫路城に乗り込んだのです。


「見よ!あの巨大な怪鳥のような城を!いくら金を使ったんだ!」


 …長秀様、それは『白鷺城』とも言われていてむしろ美しい城として近年評判なのですよ。


「ここで俺は信長様をただす準備をするのだ!正家、紙と筆!」


 と仰せつかってからもう何日も経ちました。


 そして今日、ついに長秀様が部屋から顔を出したのです。


「正家!見ろ!ついに完成したぞ!」


 と言って書状というにはあまりにも長い巻物が床いっぱいに広がっているのをしめしました。


「ほら、よく見ろ。ついに完成したのだ。あの上様作、『佐久間信盛折檻状』の優に数倍に及ぶ超大作だ!ひひひ。」


 こんなの送りつけて信長様は切れたりしないのでしょうか。


「ふふふ。我ながら超絶名文だ。諸葛亮孔明の『後出師表』を超えているだろ、これ。」


 諸葛亮、とか諸葛孔明、じゃなくて『諸葛亮孔明』だとどっかの悪の組織の軍師みたいですがな。


「出師表を読んだ劉禅のごとく、これを読めば上様も海より深く反省し、織田家の財政が健全化するのは疑いないのだ!」


 と言われて目を通してみると


一、石田三成に湯水の如く金を使わせて鉄砲を開発させすぎです。管打銃の時点で天下に対抗できる勢力はないのでやりすぎです。

二、石田三成に作らせた管打銃を大量生産させすぎです。あれ雷管も弾薬も金がかかりすぎて火縄銃のほうが安くてお得です。夕食が一品増やせます。

三、石田三成に作らせた鉄甲戦列艦扶桑・山城が金がかかりすぎです。しかも毛利対策が終わったからと言って大規模改装を始めてさらに金がかかっています。

四、…



 と数十帖に渡って『石田三成に』が続いている。


「『石田三成に文句が言いたい』、の外はないのですか?」

「そんなことはないぞ、ほれ。」


 とずーーーーーぅと後ろの方を見てみると


三百三十一、安土城の天守をせっかくスッキリした構造にしたのに、あんなに沢山破風(屋根)を付けて華美すぎます!また三成にそそのかされて仏蘭西の『もんさんみせる』なる建物を越える!とか止めてください信長様。

三百三十二、京のセミナリヨを伊太利亜のみらの大聖堂を越える、とかいって巨大な石造りのモノで造ろうとするのは止めてください。今の計算だと当家の予算の二十年分で建造に五十年かかります。いい加減三成が言い出した南蛮の与太話に対抗して全てを越えようとするのは止めてください。


 …やっぱり石田様関連じゃないか。


 結局、

『石田三成の所のジョー・ダンが茶道がなっていないと言って厳しく指導してくるのを止めさせてください。』


とか

『佐吉の所の馬場美濃守が築城の時に『それでは防御が弱い。この『丸馬出し』をつければ』とか言って縄張りを複雑にして金がかかってしまうので控えさせてください。』


 とか

『三成の所の伊賀者が天井に潜んでいて夜走り回るのが怖いので止めさせてください。』


 とか

信長様じゃなくて石田様に直接言ったほうが良いのでは?というものばかりでした。


「ふははは。見たか。あの佐久間19状どころかこちらは666条だ!」


 なんか石田様から聞いた悪魔の数字になっていますよ、長秀様。


「これって石田様かその直上の秀吉様もしくは竹中様に言ったほうが良いのでは?」

「竹中様は三成に病気を直してもらってからすっかり三成に懐いてしまっていて駄目だ!もはや狗だな。わんわん。」

「では黒田官兵衛様は?」

「こちらも親子ともども佐吉に命を助けてもらったのだぞ。二人揃って秀吉様に佐吉を甘やかすようなことを言うから秀吉様に言っても無駄なのだ!無駄無駄無駄無駄!」


 それは石田様が伝説の長篠で言っていたという台詞です。


「ならば石田様に直接話しては。」

「えーっ。石田家に行けって?あの島左近と渡辺勘兵衛がバーン、と並んでいるだけでも腹いっぱいなのにその横にどうみても松永久秀っぽいのとどっからみても武田信玄っぽいのが控えているんだぜ。怖すぎ。」


 …信長様のほうが怖くないんでしょうか。


「というわけでこの至誠の名文が完成したので、信長様にお届けに行くのじゃ!一揆じゃ!…うぅ、胃が痛い。」


 …長秀様一揆はまずいんじゃないでしょうか。前田利家様とかに見つかると釜茹でにされそうです。


「一揆じゃ!世直しじゃ!皆のもの!行くぞぉ・・・え?」


 と行って振り返った我々の後ろに大軍勢がいました。


「羽柴秀吉様の軍勢が到着いたしました。」


 え?来たの?もう?早くありません?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・この頃はまだ羽柴ではなく木下です。また、「羽柴」秀吉は「柴田」と「丹羽」にあやかって名前をつけたという逸話があるくらいなので「羽柴様」と呼ぶことは有り得ません。 「あえて」ならばOK…
[気になる点] 後半部分で丹羽さんが三成さんを様付けで呼んでるのはちょっと違和感があります。 [一言] よく666もネタがあるなww
[気になる点] 光秀がどうなるのか?グラサン掛けて四番目の名前な大尉になりそうだがw [一言] たしかに石田家怖すぎ、というか某野望ならヌルゲーレベル
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