時は今天が下しる皐月かな
52万PV,7万ユニークアクセス、評価6100ポイント本当にありがとうございます!
今日はすみませんがこの部位だけです。
明智光秀は里村紹巴と連歌の会に出席していた。
「信長殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
光秀は狂気をはらんだ目でブツブツと言っていた。
「どう殺してやろうか…そういえばららぁは南蛮の逸話を色々教えてくれたな…
そうだ、丘の上で十字架に磔にするというのはどうだろう…縛って槍で突くとか安直にせずに、正式な羅馬式に手足を釘で打ち付けてやるのだ…そうすると呼吸ができずひどく苦しいそうだ…それとも牢に閉じ込めて散々陵辱した上で街の真ん中で火刑にするのもいいかもしれんな…よく燃えてきたら衣服を剥ぎ取って眼前にさらしてやるのだ…腹を空かせた獅子の檻に入れてやるのも良いだろうか…」
「父上!発句はいかが致しますか?」
明智光秀の嫡男、明智光慶が声をかけてくる。
「いや待てよ、雲仙岳の火口に突き落とすとかも良いか…西国といえば石見か…丹波を取り上げて石見に行け、とはおのれ信長め…」
とここでふと光秀は思い出す。
「石見…そういえば信長と猿の手下の石田が話していたな…石見には世界の半分を占める巨大な銀山があると…あれ?」
なにか思い当たったようである。
「その石見銀山を任せる、と?」
ふと胸にしまっておいた信長からの書状を取り出した。そこには『毛利を討伐したら石見を与える。石見銀山の収益は一定分をこちらに収めたら好きにしてよい。』と書いてあった。
石見銀山の収益は莫大なものである。それは一国の規模を優に上回るものだ。
「そういえば…」
光秀はまた思い出した。
「ららぁと出会ってから信長に会った時に、ららぁの事を話したら『良い娘が見つかりよかったな。落ち着いたら妻にするがよい。励めよ。』と言っていた…八上城の人質にららぁを出したことは言っていなかった!『どこの者だ?』と信長が聞いた時に『上様が気になさるほどのものではございません。』と答えてしまった!!」
慌てて先の書状を取り出すと、様々な命令の後に最後に書いてあった。
『八上城の人質がららぁとは本当に知らなかった。知っていたら波多野兄弟を処刑することはなかった。本当に申し訳ないことをした。なんなりと償いをさせてほしい。どうか許してくれ。 信長』
「ああ!上様!」
光秀は慟哭した。周りは突然の行動に怪しんだが、光秀は顔を上げると発句を詠んだ。
「時は今、天が下しる皐月かな」
里村紹巴は驚愕した。
「時は今、とは明智様を表す『土岐』氏、それが天が下をしる、ということは天下を治めるということですか!それはつまり信長公を亡き者に?」
参加者が動揺する。家臣の斎藤利三などは
「殿のなさることは間違いない!悪逆信長を討ちましょうぞ!」
とまで言っている。そこに明智光秀は言った。
「待て。違う。」
と一息ついて続けた。
「『時は今』、が私をあらわしているのはその通りである。しかし後段の意味は違う。『天が下しる』は天下様、つまり信長公の深い恩情を今あらためて私が知ったということなのだ。」
「それはつまり?」
「この明智光秀、信長公のために一生を捧げる所存である!皆のもの出陣準備だ!毛利を平定して信長様の天下を盤石のものとするのだ!馬を引け!」
そして出陣準備が整った配下の兵に向かって明智光秀は演説を始めた。
「この明智光秀の身分は美濃を追われて浪人し幕府と織田家の双方に奉公した極めて不安定なものである…」
「しかも、足利義昭が私に対して行った施策は幕臣にするまでで、
身分さえあれば良しとして公方は御所に引きこもり、我々に所領を与えることすらしなかったのである!!
私の心の父、斎藤道三が国人衆の自治を要求したとき、道三は斎藤義龍に暗殺された!
そしてその義龍は一色家をかたり、織田家に征服戦争をしかけたのである!
その結果は諸君らが知ってるとおり斎藤家の敗北に終わった!
それはいい!しかしその結果反信長同盟は増長し!
幕府の内部は腐敗し!松永久秀のような反幕府運動を生み!
三好家の残党をかたる三好三人衆の跳梁ともなった!これが天下の苦しみを生んだ歴史である!!
「…ここに至って私は人類が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである!!
それが天下布武の真の目的である!!
これによって日の本の戦争の源である信長公に反抗する人々を粛清する!!
諸君!自らの道を拓くため、天下万民のための政治を手に入れるために!あと一息!
諸君らの力を私に貸していただきたい!!
そして私は・・・母、ららぁの元に召されるであろう!!!」
おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおお!!
と地鳴りのような歓声が上がった。
「さあ!今こそこの軍勢を率いて信長公を迎えに行き、毛利を滅ぼすのだ!」
「信長公、万歳!明智様、万歳!」
完全武装の明智光秀隊はこうして丹波福知山城を出撃し、京に向かった。
そして払暁に京を望む峠を超えた時、明智光秀の眼前に広がっていたのは燃え盛る京の街であった。
明日は本能寺の決着編です。




