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安土山の大灯台

 俺、石田三成。羽柴秀吉様の配下さ!


 甲州征伐から帰ってついに羽柴家は備中高松城攻めに出撃だ。

ついに完成した姫路城のゴージャスな連郭式五層天守が目に眩しいぜ。池田輝政さん(本来のこの姿の姫路城の築城主)取っちゃってごめんね。


 俺(&秀吉家臣団の皆さん)は姫路城から備中高松までの行軍路の整備に集中した。建前上は姫路や岡山と言った拠点からスムーズに軍勢や補給物資を移動できるように、という名目だ。街道の整備、途中の拠点への食料や換え馬の備蓄、など何もなくてもすごいスピードで姫路まで往復できる。姫路には武具も大量に貯蔵した。大船も、備中に集めてありすぐに移動できるようになっている。


 そう、真の目的は『本能寺の変』が起きてしまった時に最大限に即応できるように、なのだ。もちろん他の人には本能寺の変が起きる、なんて話はしていない。しかし


「三成の言うことだから準備しておくか。」


というノリで皆さん協力してくれたので、山陽道はもうバッチ来い、というぐらい今すぐ駅伝大会開いても良いんじゃないか、というレベルで準備ができた。


しかしこの準備の真の理由は俺にとっては違うのである。


甲州征伐も上手く行き、オレ個人の考えとしては、『あれ?もしかして織田信長様が本能寺でやられなければそのまま天下統一して、俺も九州あたりで羽柴様の家臣として無難に過ごして関が原も起きないんじゃない?』と思い出したのだ。


なので山陽道の整備とともにあれこれ仕込んでから安土城の信長様に会いに行った。


「おう、佐吉。どうした?」

「信長様にご相談が。」

「またどっかの武将がほしいっていうんじゃないだろうな?」


 と言ってニヤリと笑う。


「いえ、ゴローちゃんと土屋の件では大変お世話になりました。」

「あくまでも『ゴローちゃん』だからな。他の名前言い出したら物理的に首と胴体を泣き別れにしなければならん。」


 あはは、と乾いた笑いをあげてから俺は続ける。


「本日は別の話です。明智光秀様は他に類を見ない名臣だと思いますが、どうも最近お疲れではないかと。」

「うむ。惟任日向守か。官位もやったし丹波も加増して畿内の軍勢を率いさせ、頼りにしているが。疲れているようなら引退させるか?

ゴローちゃんやジョー・ダンのようにお前に仕えさせてもよいが。」

「いえいえ!それでは明智光秀様が自分が不必要になったのではないかと不安になってしまいます!」


 俺は強く打ち消す。慌てるわ。


「どうか光秀様には慎重に気を使って労っていただけましたら。」

「おうよ。光秀は存分に働いたからな。よくねぎらってみるわ。」

「くれぐれもお優しくお願いします。」

「お主わしが普段厳しいみたいだな。」


 と言って信長公はカラカラと笑った。


「よい、光秀にはわしなりに気を使ってみるわ。」


「もう一つお願いが。」

「まだあるのか?」

「京で上様がお泊りになる本能寺ですが、万が一の際に備えて地下に脱出路を作っておきました。」

「なんだと…京で謀反をするものがいるというのか?許せぬ。」

「いえ。『万が一』に備えてであります。」

「そうか。ならばよし。」

「その脱出路を使えば京の郊外まで素早く逃れることができます。その後は整備をしてありますので姫路まで来ていただけましたらいかなる敵でも備えられることができるかと。」

「それだけの準備を…本当に当てはないのか?」


 脂汗を流しながら俺は続ける。


「あくまでも万が一であります…」

「うむ。あいわかった。」


 そして俺は本能寺の脱出経路について詳しく説明した。これで万が一攻め手が史実の明智よりも多い2万ぐらいいても多分なんとかなるだろ。


「あと一つお願いしたい儀が。」

「佐吉よ、まだあるのか?」


 と目をぐるぐる回す信長公。


「この安土城の天守ですが、最上階は上様が景色を眺めに来るだけで普段はなにも使っていないかと。」

「うむ。そうだな。上がってくるのも手間で普段は1-2階でばかり過ごしている。」

「そこで!」


 と行って俺は続けた。


「この『ペニシリン』を作った時の周辺技術で開発した大反射鏡と明かりを最上階に置き、夜間点灯すれば近江中から見える大灯台の完成であります!大灯台はエジプトのアレキサンドリアという港町で『アレキサンドリアの大灯台』『世界の驚異』と言われた大名物なのであります!」

「おお、それは華やかで良いな。」


 こうして安土城天守の最上階には大反射鏡と明かりが設置された。

夜間になると点灯され、『安土山堂の大灯台』と言われて付近の住民の度肝を抜いたそうである。


 一応天守に避雷針をつけるようには信長様や家臣の皆様に口を酸っぱくして説明したからこの世界の天守は雷で焼けないだろうからたくさん残ってくれるだろう、多分。


 それはやるべきことはやったと考え、信長様に礼を言い、備中高松に急ぎ戻った。


 備中高松では秀吉様の城攻めの真骨頂、『備中高松城の水攻め』が始まった。長さ4km、高さ8mにも及ぶ堤防をわずか12日で完成させたのだ。その際スコップが猛威を奮ったのは言うまでもない。城はあっという間にせき止められた湖に沈み、浮き小島の様になった。


 しかし城将清水宗治は安易に降伏せず、史実通り膠着状態になったのである。そしてついに本能寺の変のきっかけになった、『織田信長様への出陣依頼』が出されたのだ。


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