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甲州征伐 後編

歴史ジャンル日間2-3位、週間2位本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


 ゴローちゃんを仲間に加えた俺、石田三成率いる土鬼隊はついに逃亡中の武田勝頼を追跡中の滝川一益様の隊に追いついた。


「滝川様。」

「うむ。三成か。見ての通りこの先の断崖沿いの細い道にあの侍が待ち構えておって通れないのだ。

こちらが鉄砲を放っても物陰に隠れ、進むと片手で蔓に捕まって斬撃してきて被害が増えるばかりでな。」

「滝川様、ここは一旦兵を引いて私に任せてくれませんでしょうか。」

「むむ、ここで手柄を横取りするつもりか。」

「いえ、勝頼の首は必ず滝川様に差し上げます。どうかそれで。」

「勝頼の首級をとな。しかし獲ったのが貴殿では意味が。」

「いえ、必ず滝川様の手柄といたします。ですからどうかお任せあれ。」

「さすれば一旦兵をひこう。首尾よく行かなければまた私が出るぞ。」

「了解いたしました。」


 そうして滝川一益様の兵は一旦後方に下がった。俺は前方の侍に呼びかける。


「そこに居られるのは土屋昌恒殿とお見受けいたす!どうか降られよ。」

「なにをいうか!俺は武田家と勝頼様に忠誠を尽くすのみ!どうせ降ってもあの苛烈な織田信長に処刑されるだけであろう。最後の死場すら与えないというのか?」

「処刑はいたさぬ!俺が約束する。」

「その約束するという貴殿は何者だ!」

「俺は石田三成。」

「…あの『長篠の首刈り鬼』石田三成か。我が兄上を討ち取った張本人ではないか!むしろ我が仇、信じられようはずがない!」

「待て昌恒!」

「ご老人は…馬場様?馬場様が何故ここに。」

「石田三成様に助けられ今はお仕えしているのだ。昌恒よ、たしかにそなたの兄、土屋昌続殿はここに居られる石田三成様に討たれた。しかしそれは世の習いというものだ。

それに覚えてはおらぬか。石田様は昌続様の首級を丁重に首供養して、そなたに送り届けたことを。」

「確かに兄上の首級は丁重に供養され、香も炊き込められていた…」

「そうだ昌恒!ここで死ぬことが武田に尽くすことではないのだ!」

「そこな俺を呼び捨てにする若者は誰じゃ?」

「…これでもわからんか?」


と言ってゴローちゃんは付け髭をつける。


「これは仁科盛信様!なんでそこに。」

「わしも石田殿に命をお救いいただいて仕えることにしたのだ。勝頼兄上はもはや助けられん。しかしわしと共に来て、武田の未来を救ってはもらえんか?」

「武田の未来を…」


 しばし考えた後土屋昌恒は降伏した。


「盛信様や馬場様とともに武田家の再興を目指させていただきます。三成さま、どうかよろしくお願いします。」


 こうして土屋昌恒も仲間に加え、俺たちは先に突き進む。そして天目山で武田勝頼に追いついたのであった。


「武田勝頼公とお見受け致す。」

「そなたは?」

「織田信長様が配下、羽柴秀吉様の家臣、石田三成と申します。」

「三成!あの三成か。お前の出したあの『切腹御免状』のせいで長篠の兵は蘇ってしまったのだ!それがすべての間違いの始まりだった。

そして今わしを討ち取ろうというのか。お前はわしから全てを奪い、武田家を滅ぼすの・・・か?あれ?その隣りにいるの誰?」

「馬場美濃守信春にございます。」

「土屋昌恒にございます。」

「五郎盛信にございます。」

「お前ら武田を裏切ったのか!長坂長閑斎!この不届き者どもを討ち取れ!」

「兄上、武田家はもうしまいにございます。しかし、我々が恥を忍んで生き延び、血をつないでいきたいと思います。」

「黙れ黙れ!小山田信茂のみならずお前らにも裏切られるとは!」

「兄上、石田様が来ていらっしゃる服が目に入りませんか?」

「服などどうでも…これは白装束か。」

「そして石田様はもう一着と、これをお持ちしております。」

「それは『切腹御免状』そうか、石田殿はわしに名誉ある最期を認めてくれるということか…」


 武田勝頼の顔は晴れやかなものになった。


「うむ。わが死出の旅にお付き合いいただこうか。」

「ところで信勝様は…?」

「信勝はとっくの昔に穴山が送ってきた刺客に討たれてしまったわ・・・天目山についてきたのは土屋が連れてきた凄腕のおなごの影武者よ。先刻逃したわ。

ここで責任を取るべきものはこの勝頼のみ。石田殿、お願いいたす。」


 そうして俺たちは入念に準備を整えた。それから勝頼公は堂々たる態度で見事に切腹されたのであった。


 勝頼公の首級を持って俺は滝川一益様の陣まで戻った。


「こちらが約束通りの勝頼公の首級です。」

「かたじけない。最期の様子は?」

「堂々たる甲斐武田の棟梁にふさわしいものでした。しかし、ここは滝川様に追い詰められてなすすべもなく自刃、ということで。」

「…そうだな。感謝いたす。」


 滝川一益様は同じ武人としてなにか思うところがあったようだった。


 何日かして、織田信長様の本隊が甲斐府中に到着した。


「佐吉よ、そこにいるのは『片手千人斬り』の土屋昌恒か。」

「はっ、殿にお許し頂いたとおり、『捕らえたものは我が家臣に』いたしました。」

「で・・・そちらが例のゴローちゃん、か。」

「はい。地元の案内人のゴローちゃんにございます。」

「まあそういうことで・・・いいか。バック・ダンもよく働いているようだしな。励めよ。」


 だからバック・ダンだと略し方ヤバいですって信長様。


こうして俺の甲州征伐は終わりを告げた。伝説モンスターじゃなくて伝説武将土屋昌恒アンドゴローちゃんゲットだぜ。

週末更新ここまでです。

また週明けよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多分なにか三成なりの考えがあるんでしょうけどこうも有力な人物を味方に引き入れてると謀反の疑いかけられないかなってハラハラします
[気になる点] 凄腕のおなごの影武者よ あれ?どこかで読んだ記憶が・・・・もしかして30話での鳥居様の台詞 ものすごく足が速い出自がよくわからない男装したおなごの足軽 のデェジャブ? ネタの出所は…
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