鳥取城
第二次木津川口の戦いで毛利水軍が壊滅に追い込まれたこともあり、石山本願寺は和睦をして退去した。信長様はそのまま紀州に兵を進めて根来寺なども降伏し、畿内で織田に逆らう勢力は伊賀ぐらいしか残っていなかった。
その伊賀には北畠(織田)信雄様が率いる軍勢が侵攻した・・・が伊賀には人っ子一人残っていなかったのであった。
実は俺は伊賀侵攻の少し前にバルバトスと仮面武将竹中1号を伊賀に派遣していた。そこでバルバトスは不思議な妖術の数々を繰り出し(そりゃ悪魔だもの)ニンジャマスターとして上位であることを認めさせ、なんだか高名で伊賀の国衆と面識があったらしい仮面武将竹中が持ち前の交渉術で密かに伊賀を脱出することを納得させたのだ。
「なんだかお前の所やたらに庭師が多いな。」
その後落成直前の安土城を訊ねる途中、佐和山に立ち寄られた信長公が言った。
「いや、庭は家の顔の一つですから、当家では『お庭番』を多く雇い入れまして…」
と汗ダラダラ。
「ま、わしに逆らうものでなければそれでよい。そこのわしに甘い茶を出してくれた馬場美濃守みたいにな。バック・ジョーにもよろしくな。なんか『ジョー』ってカッコいいな。」
と言い残して帰っていった。…危なかったぜ。
宇喜多直家も秀吉様に下り、備前から但馬までをほぼ制圧できた。次は因幡の鳥取城攻めなのだが
「佐吉、鳥取城周囲の食料の買い占めは任せた。市場よりも高く買って城の中の食料もあらかた買い付けるのだ。」
「はい。それですっからかんになった鳥取城を包囲して締め上げ、ですね。大砲を打ち込んで早々に降らせましょうか?」
「いや、今回は佐吉は食料の買付が終わったら佐和山に戻ってほしい。信長様に頼まれているいろいろなものの開発が前線にいては進まないだろ。」
「しかしよいので?」
「たまにはわしに任せておけって!」
と秀吉様はカラカラ笑う。
「では殿にお任せいたします。ただ二つばかりお願いしたい儀が。」
「なんと?」
「ひとつはこの『切腹御免状』を殿に預けます。もしお眼鏡にあたう者があれば差し上げてください。」
「うむ。御免状があれば敵も下りやすくなるだろう。あと一つは?」
「敵が飢えて降伏した際には決してすぐに大量に食べさせず、縛り付けても良いので少しずつ与えてください。さもないと頓死します。」
「あいわかった。わしも戦に負けるわけには行かないがむやみに人を殺したいわけではないからな。」
それだけ通れば俺としては十分責任は果たしたと思う。うん。
佐和山に戻った俺は銃火器と一緒に開発していた秘密兵器が完成したことを聞かされた。
「ついにやったか!」
「はい、やりました。こちらが木牛(ネコ車)、とリアカー、にございます。」
そう高速に確実な兵站を確保するためにネコ車とリアカーにあたるものを開発していたのだ。相変わらずゴムは十分に手に入らないけど、ひとまず鋳鉄製のホイールとベアリングを用いて作り出したのだ。潤滑もついに完成させたグリセリンだ。グリセリンは後で出てくるから覚えておくがよい。日本は山道が多いので大型の台車を作っても難渋するので、ネコ車で簡便に運べるようにしたのが一点、リアカーは車軸が左右についていて中央を通らないので荷台が低くできて安定するのだ。繰り返すけどゴムタイヤがなくてちょっと今一だけどな!
これで我が軍団の食料・弾薬を運ぶ速度は従来の数倍になった。護衛も軽装の銃兵中心でいいから機動力超アップ!早速鳥取でかき集めた糧食の大部分を姫路に運ばせたのであった。
姫路は秀吉様の本拠地として大改築が行われていた。縄張り(設計)は元々の持ち主の黒田官兵衛様。
「三成くん、しかしこんな巨大な天守を建てて大丈夫なのかね?」
ふふふ。後世の池田輝政が建てた連郭式五層天守に近いものを建ててしまっているのだ。
「大丈夫ですよ!だって安土城や北ノ庄城は五層とは言っても9重ですが、これ6重しかありませんから。」
実際は構造の差でこっちが小さいってことはないんだけどね!
そうして姫路にあれこれ溜め込んでいる内に鳥取城が落ちた、という一報がもたらされた。
毛利から派遣されていた城主の吉川経家は『切腹御免状』を与えられ、感激に打ち震えながら立派な最期を遂げられたという。そして無理やり籠城した家老たちには御免状は与えられなかった、ということだった。
さすが秀吉様、使い所がよく分かっている。
週末予約投稿使って一日一話ずつ投稿してみます。よろしくお願いします。




