第1回木津川口大花火大会
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ちょうどこの話で10万字超えです。これからもよろしくお願いします。
それは 船と言うには あまりにも大きすぎた
大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
それは 正に 鉄塊だった
皆さんこんにちは、石田三成です。俺は今、九鬼嘉隆殿と共同で造船した二隻の新型鉄甲戦列艦のお披露目に志摩まで来ています。
「佐吉、これはあまりにも大きくないか?」
「はい。すごく…大きいです…。」
「この二隻だけで織田軍団の軍事予算の五分の三が注ぎ込まれています。」
と説明してくれたのはあまりにも胃痛がひどくなって欠席した丹羽長秀様の家臣、俊英、と評される長束正家様だ。計算や兵站の理論が超強くて勉強になる。兵糧・弾薬の輸送は前線に近い城や中途の経路に予め兵糧や弾薬を集積しておいて軍勢と一緒に輸送、ではなく前線で供給が良い、などと二人で語り合っている内にベストフレンドになった(俺の脳内妄想)
ちなみに計算が強いつながりで小西行長殿とも仲良くなった。小西殿も素晴らしい才覚の持ち主だと思うが戦にやる気が無いのは、関ケ原でとっても迷惑だったのでもう少しなんとかしてほしい。今のうちに脳筋の素晴らしさも洗脳したいぜ。
「…佐吉よ、相変わらずだな。して、この艦はいかなるものなのだ?」
「はい。この船の船体は南蛮のガレオン船の構造を元にしておりますが、砲を積む部分を三段に重ねた、3列戦列艦にございます。砲は大型のカノン砲から小型なものも含めて36門を搭載しています。」
図体の割に砲が少ないのは初の国産欧風ガレオン船だから仕方ない。あまり穴をあけると傾いただけで浸水して沈むのだ(実話)
「しかしその3段の上にえらく高く壁が伸びているようだが。」
「これこそがこの船特有の構造でございます!」
俺は続けた。
「今回はとにかく対毛利、村上水軍を相手することを想定して建造しております!
外洋用の本来の戦列艦の計画はこの後に続くのであります!
計画では88門戦列艦8隻、快速64門巡洋戦列艦を8隻の八八艦隊です!」
「…十六隻とは…わが殿の寿命がまた縮みそうだ…」
長束正家様がつぶやくのをスルーする。
「毛利水軍の得意技は焙烙であります!迂闊に乾舷が低いスラッとした甲鉄艦など造ると、
喧嘩自慢の牢人に『っらあ!』とか言って焙烙を投げ込まれて爆発して沈んでしまうのです!
ですから砲甲板の上に薄板を高く伸ばして鉄甲を貼り、投げ込んでも届かないようにしたのです!
一応高いところにも鉄砲銃座は作って一方的に撃ちおろせるようになっています。
マスト(帆柱)にも大量の銃座を配置しています。」
もちろん重心は高くなってバランスは悪くなる。なのでこの船は基本近海用なのだ。
(一応艦底にバラストをたくさん積んでまともに航行できるようにはしてある(テスト済み))
「なんとも言えない面妖な高さよ…まるで違法建築だな。」
「そうです!ですからこの違法建築な鉄甲戦列艦は『扶桑』と『山城』と名付けました。」
扶桑は日本の古い呼称だ。初の鉄甲艦にはふさわしいだろう、ということで許可を頂いた。実際には違法建築な背の高いルックスになったから連合艦隊の戦艦にちなんで名付けたんだけどね。
こうして完成した『扶桑』『山城』とこちらも延焼防止のため鉄板を張った安宅船や関船を引き連れた艦隊は大阪湾に姿を現して木津川口を封鎖した。
織田の大艦隊現る、の報を受けて毛利村上水軍のこちらも大艦隊が姿を現した。
『扶桑』『山城』の巨大な艦影を見て、流石に迂闊に仕掛けるとまずい、と判断したのか当初は動かなかった。
「夜襲を仕掛けてくるものと思われます。」
「夜襲か。毛利水軍は手練であり、こちらは大船なれば夜間なら身動きが取れまい、と思ったのだろうな。」
予想通り、毛利水軍は夜になって攻撃を仕掛けてきた。
「飛んで火に入る夏の虫とはこのことよ!今だ、照明弾放て!」
山城の艦上から指示を出す。艦上に用意してあった垂直にされた砲から照明弾が放たれ、上空で爆発して辺りが煌々と照らされる。
どーん、どーん、と音が響いて大輪の花火の花が咲く。
照明弾に打ち上げ花火を適当に混ぜておいたのだ。俺の趣味で。
「おお、これはまた美しいものであるな。」
扶桑の艦上で信長公が思わず相好を崩した。信貴山のときよりも準備できたので弾数がある。
まさに天空に咲く花の素晴らしい美しさ。
「たーまやー。」
「父上、たまやとは?」
と信忠様が信長様に聞く。
「うむ。佐吉が花火を楽しむときにはこう号令するのが良い、と教えてくれたものでな。」
「さようでございますか。」
「「たーまーやー!」」
「敵艦隊確認!砲撃開始!」
扶桑艦上で俺は次の命令を下した。照明弾で照らされた毛利の軍船に向かって扶桑・山城から今度は次々と曳光弾が放たれる。
辺りはますます明るく照らされ、毛利の関船に着弾した曳光弾は炸裂し、また色とりどりの火花を撒き散らせながら軍船を炎に包みつつ破壊する。
「大筒だ!数が多いぞ!爆発して火災を起こすだと?かいくぐってあの大船を焙烙で沈めろ!」
毛利の軍船で指示が飛ぶ。流石に手練の村上水軍である。36門(舷側を見せているので片方だけ)の大砲の猛射撃をかいくぐって小早船がこちらに迫ってくる!
「っらあ!」
と次々と焙烙が投げ込まれる。やっぱりやられたよ。『っらあ』。いや、ほんとに、こんなこともあろうか、と上甲板の舷側伸ばして鉄板張っておいてよかったよ。お陰でどっかの煉獄みたいに爆沈することもなく、扶桑・山城は健在だった。
明け方になって空も白み、戦況が見えてきた。
毛利の水軍は安宅船や関船などの大船はほぼ壊滅、小早は依然として涙ぐましい突撃を扶桑・山城に繰り返しているが、もはや大砲の発射不必要で舷側の砲門は閉じられ、『違法建築』の部分の銃眼やマストの銃座からの射撃で次々と撃ち倒されていく有様だった。
「敵の予期しない高所からの射撃…実に効果的ですな。」
山城艦上で織田信忠様に付き従う森長可様が言う。
「うむ。上方からの射撃では相手は逃げ惑うばかりだな。」
信忠様も同意されていたのであった。
こうして大阪湾は毛利水軍の血に染まり、毛利は大打撃を受けた結果、二度と大坂湾を攻撃したり、石山本願寺に物資の補給をすることができなくなったのであった。
毛利方の海賊は遠目に扶桑・山城の姿を見るだけでも恐慌状態になり、毛利の大将が『進まねば斬るぞ!』と命じたところ我先に海に飛び込むものが出る有様だったと言う。
石山本願寺は毛利からの物資の補給を受けることが完全にできなくなった。
更に俺は淀川を遡上させた扶桑から大坂城に向けて艦砲射撃を行わせた。(もちろん直ぐ側までは近づけないから座礁しない範囲でちょっとだけ)
流石に本願寺は堅固な要塞で、実質的には虚仮威しに近い艦砲射撃で有効な被害は与えられなかったものの、毛利水軍や有岡城の惨状の評判も手伝って、織田の火砲に対する恐怖は籠城する皆に伝播していった。
そしてついに石山本願寺の顕如は織田と和睦を結んで退去したのであった。




