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石田三成の結婚

 天正5年(1577年)の正月、建築が始まった安土城に俺は呼ばれた。


 「佐吉ぃ、お前のせいでなぁ。」


 なんか信長公が寂しそうである。


 「どうしました?」


 と聞いてみると。


 「お前がなあ、なんか銃その他造るために工作機械まで作らせたりバカでかい南蛮船作らせたりして金がまたなくなってな…この安土城の天守、最下層が不等辺多角形でどーん、と大きくてな、真ん中に吹き抜けがドーン!とあってな、その上部にはなんと橋がかかっていてな!吹き抜けから見下ろすその威容たるや天竺にもまさるものはなかろう、という壮麗な大建築物を作り上げるつもりだったんだが…金が無いから吹き抜けなしの五層九重になってしまったのだ…権六の所の北ノ庄城にも負けそうなのだ…」


 天守が普通になってしまったそうです(意訳)


「まあ殿!帰って質実剛健になって無駄がなくてよかったではないですか!」


 と逆に余計な予算は使わないですんで嬉しそうな丹羽長秀様。

 指図を見せていただいたら吹き抜けと橋こそなかったがすごい複雑な破風(屋根)の構成でカッコいいではないか。相変わらず本丸の御殿につながって櫓橋が架かっているし。信長様贅沢すぎる。


「わしはあの吹き抜けの上の橋の上で敦盛を舞ってみたかったのじゃ!」


 駄々っ子状態の信長様だった。


「ところでお前結婚するのか?よかったな。」


 と信長公。


 そうです。俺、結婚することになったのです。相手はうたさん。

 特に政略結婚ということはなかったので、平穏な結婚生活を送ります。

 佐和山に戻って祝言を挙げて、夫婦生活の開始です。夕餉を一緒に食べていて


 「うぅ、こんな家庭的な幸せ(関が原に飛ばされて以来体感で)30年ぶりだ…俺って幸せ。」


  とか泣いていたら


 「旦那様って17歳ということでしたが…30年以上もサバを読んでいたので?」


 とうたさんが目をくるくる回していた。そんなに長くなるぐらい幸せ、とごまかした。あぶねー。

幸せなのは本当だけど。


 それからしばらくして羽柴様に率いられて、上杉謙信と戦う柴田勝家様の所に向かった。

 けれども到着したときには手遅れで救援予定だった能登七尾城は落城していた。さっさと引き上げましょう、という羽柴様と一戦して上杉の勢いをくじくべき、という柴田様が喧嘩して…羽柴秀吉様は引き上げてしまった。意外と短気で困るわ。


 その後、救援相手がいないのではしかたない、とやはり退却することになった柴田様の部隊に上杉謙信が追いついた。慌てて逃げた兵が手取川に追い込まれて溺れてしまった。これがいわゆる手取川の戦いだったのだけど、柴田様の本隊はすでに大きな特に問題なく撤収できており、逃げ遅れた一部の部隊がやられただけだった。




 問題はその後である。


織田信長は激怒した。必ず、かの邪智脆弱の秀吉を除かなければならぬと決意した。


 「禿鼠!敵前逃亡は万死に値する。さっさと出頭しろ。

 ちなみに

石 田 三 成 に 白 装 束 着 せ て 

謝りに寄越すのはなしな。」


 とのお達し。


 「佐吉よ、なにかいい手はないか。」

 「秀吉様…某に考えが。」


 と秀吉様にごにょごにょ囁いた。




 羽柴秀吉が建設途中の安土城に来たのはそれからしばらくしてのことだった。


「おお、羽柴様が…」


 その異様な姿を見て居並ぶ人々がささやく。


 秀吉は金の刺繍が派手に施された白装束を着て、巨大な金の十字架を背負って安土の城の階段を登ってきたのである。


 天守が建築される予定の安土山の頂上にたどり着き、秀吉は十字架を山頂に立てた。そしてその十字架に自らを縛らせた。それから


 「エリ、エリ、できればサバが食いたい。」


 と言ったのである。


 安土城の頂上でそれを見ていたのは織田信長と、安土を訪れていたイエスズ会の宣教師、オルガンティノであった。オルガンティノは言った。


 「おお、おお、『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』」

 「オルガンティノよ、それはいかなる意味か?」

 「『わが神、わが神、どうして私をお見棄てになったのか』、という意味です。そしてその言葉と対になるのが、『父よ、あなたの両手に霊を委ねます』

 信長様、秀吉様はあなたに全てを委ねよう、というのです。」


 「秀吉よ、大儀である。赦す!励めよ!」


 と信長様は上機嫌で笑った。そうして秀吉様は赦されたのだった。


 安土城下の秀吉様の仮の屋敷に帰った後に聞かれた。


 「ところで佐吉、オルガンティノ殿はなんか言っていたのだが、風がひどくて聞き取れなかったんだ。なんで京都の遊郭で顔なじみのエリちゃんサバが食いたい、って言ったら助かるって言ったんだ?」


 秀吉様が聞く。


「それはオルガンティノ殿が来ているのを知っていたんで…秀吉様は神の子、ってことですよ。きっと。しっかし秀吉様、助かって何よりです。」

「うむ、エリちゃんの所に言って一晩中しっぽりと礼をしなけりゃな・・・ウヒヒ。うひ?」


 秀吉様の後ろにはお寧様が般若のような表情で立っていた。


 「待て!お寧!話せば分かる!」

 「問答無用。」


 引きづられていく秀吉様が部屋の向こうに消えた後、響き渡る悲鳴を聞きながら俺は佐和山に帰ることにした。うん。我が家は平和でいいや。うたさん愛してる。

次は爆弾正攻略戦です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 巨大な金の十字架を背負って 申し遅れましたが自分は宮城県民であります。 ・・・・やってくれるではありませぬか
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