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戦いとナポレオンの負け

本日の更新ここまでです。そろそろ20万アクセス、3000ポイント到達できそうです。皆様本当にありがとうございます。

 長篠の戦いが始まった。我が鉄華団(=羽柴隊前衛)の敵は正面に土屋昌続、その左側に真田信綱、昌輝の兄弟、さらにその奥に馬場信春。山県昌景こそこちらから遠く右奥の反対側の徳川家に相対する方にいるが、武田家の誇るなかなかタフなメンツが揃っている。真田とか強そうだよね、真田とか。


 土屋昌続の右側には穴山信君、一条信龍の親族衆、そのさらに奥側が後典厩武田信豊、その後方には総大将、武田勝頼が控えている。こちらは数が多くて厄介ではあるが、武田信豊以外はさほどの戦上手とは言えない。


 夜が明けて武田は総攻撃に乗り出してきた。近年の学説通り、下馬して隊列を組んで前進してくる。武田騎馬軍団って実情地味よね、やっぱ騎乗突撃とかは映画のお話なのねとか思いながら迎撃に出た。右側の親族衆は守りを固めて出てこないので、中央から左の土屋から馬場の部隊が相手になることに。

ふふふ。こちらには数千の鉄砲があるのだよ。『影武者』や『ラストサムライ』のラストシーンみたいに破滅させてやるぜ。


 敵が近づいてくると手はず通り塹壕から鉄条網越しに射撃する。


「馬場様、敵はどうやっているのか連続して銃を発射しており弾幕が切れません!」

「ふん。とはいえ銃が届く距離と弓の届く距離はな、そう、違いはなさそうだな。」


 馬場信春は素早く状況を把握すると、兵に命じた。


「弓兵、曲射で敵の裏側を射よ。」


 曲射なら射程が伸び、当然ながら高い弾道を通るので…鉄条網はまるっとスルーされて塹壕に矢が降り注いだ。銃兵が怯んで弾幕が途切れる。


「左翼、何やってるの、弾幕が薄いよ!」


 俺は慌てて指示を出す。弾幕が切れた間に真田と土屋の部隊は猛進してきており、鉄条網に取り付かんばかりになった。


「鉄条網を抜かれるな!撃て、撃て!」


 一斉射撃で先頭の兵が倒れる。しかし後ろから兵が出てきて倒れた兵の槍を拾ってそのまま前進してくるではないか。ぬうぅ。お前らはソヴィエトの畑から採れる歩兵か。

鉄条網は武田兵の屍で押しつぶされ、その上を通って迫ってくる!


「いかん、こうなっては『鉄華団』前進!敵を弾幕で押し潰せ。」


 命令を受けてついに鉄華団の戦列歩兵が塹壕から出てきて姿を現した。


「なんだあの鉄砲の数は…」


 真田信綱は一瞬怯んだ。そこに鉄華団の一斉射撃が襲いかかる。真田隊は多くの負傷者を出して前進を止めた。


「鉄砲の数だけが戦の行く末を決めると思うなよぉ!」


 土屋昌続は騎馬兵のみを掻き集めると、固まって突貫してきた。

あれあれ、武田騎馬軍団って実在したんだぁ。まるでワーテルローの戦いのネイ元帥みたいだなあ、とかのんきに思っていると戦列歩兵の先頭に被弾を物ともせずに突っ込んでいく。

戦列歩兵も騎馬隊が近接した時点で銃剣を装着して対抗はしているが、態勢は乱れた。


そこにすかさず騎馬隊に後続した長槍隊が襲いかかり、長槍を戦列歩兵に振り下ろす!


 戦列歩兵は隊形を乱さず槍を銃で受け止めた!…銃で。槍の攻撃は防いだが、多くの銃が壊れてしまった。銃撃して反撃、前進を図っているものの乱戦になりつつあった。


「バルバトス!」


俺は言った。


「敵の攻撃に戦列歩兵はうまく機能しておらず、こちらが押されているように見えるが。」

「あらぁ、私『戦列歩兵』の訓練は万端だと言いましたよぉ。『戦列歩兵としての』戦術などはしっかり教育しましたけど。弓とか槍の相手はしりませんねぇ。」


 …やはり悪魔は悪魔だった。バルバトスは戦列歩兵が活躍していた時代の、戦列歩兵の戦法『だけ』を部隊に教え込んだのだ。他に何が起きてもそれに対する対処は知らん顔だ。


「私『石田三成様』のお命は守りますから。三成様には今全く危険はありませんから。」


 いけしゃあしゃあとバルバトスがいう。『鉄華団』の被害はみるみるうちに増大してきた。


「まずい。『鉄華団』下がれ!下がれ!塹壕に入って防御射撃!」


鉄華団はなんとか塹壕に滑り込むと、土屋隊や真田隊に猛烈な射撃を繰り返す。しかしその側面からは馬場信春も前進してきており、塹壕に手がかかるばかりになってきた!


「佐吉、ここは俺が手助けを!」


 振り返ると仙石権兵衛さんが走ってきてくれた。次々に武田兵を槍で仕留めていく。


「拙者もお助け致す。」


 加藤光泰さんや堀尾吉晴さんも駆けつけてくれた。肉弾戦で頼りになる羽柴家の先輩方だ。

 

 どうにか体制を立て直したが、また眼前に真田兄弟が迫ってくる。

 いよいよ塹壕を目前にしたその次の瞬間。俺は命令した。


「大砲隊、撃て。」


 大砲が放ったのはぶどう弾だった。通常の大きな丸い玉ではなく小さな弾や釘を詰め込んだ砲弾だ。対人用に凶悪な効果があり…真田兄弟はミンチよりもひどい状態に吹き飛んだ。


「こんなこともあろうかと、準備していたのだ。」


 こちらが押されて敵が目前に迫ることがあったなら、大砲隊にぶどう弾の水平斉射を行うように、とあらかじめ指示をしていたのだ。

こんなこともあろうかと、で倒されてしまったのが真田兄弟、というのはなんという歴史の皮肉だろうか。ははは(ちょっと空虚な笑い)


 ぶどう弾の斉射で武田の攻勢が弱まったことでこちらも一息つき、塹壕にこもった銃兵の射撃と、弾幕を突破してきたものをうちの渡辺勘兵衛や仙石さんや加藤さんたちが叩く、という状況になり、なんとなく史実に近い『武田軍団に打撃を与えながらこちらも被害は結構多い膠着状態』に近い感じになった。


 こうして俺のナポレオニックの夢は破れたのだった。もう戦列歩兵は止めておこう。


さて、どうするか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなこともあろうかと、で倒されてしまったのが真田兄弟 ようやく分かりました。両手両足が取り外し可能な宇宙のかなたまで赴いたことがある技術者の名セリフでしたわ。70年代生まれなのにスグに…
[一言] これは天目山で自害できそうにないですねえ勝頼 というか隣国まで知れ渡ってるのん三成の奇行
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