幕間 エンドレス切腹
ブックマーク50件超え本当にありがとうございます。
これにて第2部完 今回はつなぎのエピソードです。
来週第3部に入ります。第3部はなろうらしいといえばなろうらしくなる…かも。
俺、石田三成。
今は小田原征伐中。俺は太閤豊臣秀吉殿下の眼前にいた。
5度目の転生にして初太閤殿下。
殿下は伝承通り、猿というよりは禿鼠、といった風情の鋭い顔つきと眼光をしている。やはり手の指は6本だ。多分宣教師はそれ見てサタンだ、とか口走っちゃって禁教食らったんじゃないかなぁ(悪魔とパンダは指六本、というFSS脳)
「三成には忍城攻めを命じる。必ず水攻めで落とせ。水攻めが成功すれば儂のように天下にその智謀と功績が轟く、というものよ。」
といってニヤリとわらった。率直に言っていかにも大人物風でどっしり構えて一見柔和に見える徳川家康様に比べてスゴーク怖い。
殿下俺に箔つけて引き立ててくれよう、としているのはわかる。
しかしここで俺は引き下がるわけには行かないのである。忍城の水攻めを失敗して石田三成は戦下手、との評判が確固たるものになってしまうのである。その風評被害は徳川秀忠の上田城攻め並なのである。
「しかし殿下。」
「ん?なにか言うことがあるのか?」
「忍城を水攻めにするためには備中高松城よりも長大な堤を作らなければならず、また忍城付近の土壌は脆弱で、すぐに崩れてしまいます。備中のように船を用いて堤の芯を作るというわけにも行かず…」
「なんだできないというのか?」
「第一忍城をそのように攻めるというのは戦略的な意義よりもどうせ甲斐姫を側室にしたいという殿下の助平な…」
は、と気がつくとネズミじゃなくて魔王のような赤を通り越して黒くなっている殿下の顔があった。
サタン、サタンだ、と思ったがサタンだとルシファーだから光の天使っぽいので
これはメフィストフェレスか。
「三成、本来なら磔にでもしたいが今までの功績に免じてお前、切腹な。」
…そういえば小田原の後山上宗二惨殺したり、尾藤知宣惨殺したり、と殿下って切れると残虐なのよね。年取ってから、という人もいるけど目立つだけで浅井長政の子供串刺しで殺しているから元々の性質だろう。
現代でラスボス、と言われるだけのことはある。
そうして5度目の転生はあっさり切腹で終わったのだった。
その後も俺は転生を繰り返した。しかし三木で、鳥取で、九州攻めでも、肥前名護屋でも、なにか意見をいうたびに俺は木下だったり羽柴だったり豊臣だったりする秀吉様の勘気に触れつづけ、毎度毎度切腹か斬首か手討ちの憂き目に合った。
もう何度転生したのか覚えていられないぐらい転生してその度に切腹したり斬られたりした俺は、結果的にすっかり切腹に慣れてしまい、完璧な作法で十文字切り!などをこなせるようになった。
そのせいか、死んだ後に流れる何時もの「その後の歴史」のシーンで「石田三成の切腹は歴史上類を見ない完璧なもので、死の前に書き残したその切腹の作法の書は武士に取って最も重要な教養とされた。」なんて流れるようになってしまった。
こうなると存外徳川家康よりも豊臣秀吉のほうがやっぱりラスボスじゃない?などとすら思い出したが、どうにか「秀吉に殺されずに関ケ原でも生き残る布石を打つ!」ために悪戦苦闘し続けた。
けれども何度トライしてもだいたいどっかで秀吉様を怒らせて死ぬ羽目になったのだった。
いい加減なんとかならないのか、ともう真っ白い灰になったようになり
腹を切った回数も忘れてしまったある時、
目覚めたら近江の寺にいた。
「おい茶坊主、茶はあるか?」
目の前に若い羽柴秀吉公が立っている。




