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仏の顔も三度まで、というけど私は四度目の関ヶ原

 只今関ヶ原です。

 通算四度目。

今回はちょっと違います。ちょっとではなくすごく違います。

なんとこの石田三成、東軍として布陣しているのです。なにせ外交担当予定だったから手勢はわずかだったので、家康様の本陣のすぐ脇です。近くには大谷吉継殿もいます。桃配山から見る西軍は…なんか結構しょぼいです。


 正面の宇喜多秀家隊は相変わらずどーん、と構えてます。島津殿も声かけ忘れたのでそのままいます。そのこちらから見て左の大谷(+諸少大名)隊…はいないのでなんか脇坂安治殿が指揮しているみたいです。遠目にもやる気が感じられません。南宮山の毛利も吉川広家殿がどーん、と山麓に居座って動けない「宰相の空弁当」パターンです。


 そしてなにより、松尾山に小早川秀秋がいません。書状の通り九州で大友再興軍相手に黒田如水殿と奮戦中のようです。代わりに追い出されなかった伊藤盛正殿が…なんか逃げられたみたいで1000ぐらいしかいません。


 こりゃいくらなんでもプロイセンの武官メッケル殿でも「西軍の負け」と言い出す布陣なのでは?と思っていると濃霧の中を銃撃戦が始まりました。いつもどおり。


 でも西軍前押してきません。最初から宇喜多隊すら押し負けています。そこにさっさと朝一で寝返った脇坂隊が藤堂隊と一緒に横槍を入れて…霧が晴れた頃にはもう西軍は壊乱状態でした。なんか丁寧語になるぐらいあっけなかったです。

 これって最近の研究に基づいた関ケ原の姿に近くない?とかむしろ呆然としつつ、これはなんとか生き残ったのかな、と思ったその時、島津が動き始めました。


 まっすぐこっちに向かってきます。


え?ここだけは通説通り?もう混乱してこちらは丁寧語が抜けません。

島津隊は捨てガマり作戦で猛然と死兵が射撃しては倒れ、という地獄絵図を作りながらすごいスピードでこちらに向かってきます。


 あ、家康殿のそばなら安全、と思っていたのが逆に失敗だったと思い知ったのはその時でした。

私の人の陣幕を突き破ってその人は現れたのです。

 

「大将首だ!!

大将首だろう!?

なあ 大将首だろうおまえ

首置いてけ!! なあ!!!」


えー。島津豊久様、私は大将首ですがラスボス(家康様)ではありません。


凄まじい勢いで槍を繰り出す島津豊久様。

しかしこちらにも島左近がいるのです!いでよ、島左近!


「左近殿なら先程家康殿への伝令で出られましたが。」


あ。



そしてこの日、戦場に衝撃が走る。石田三成が討たれてしまったのだ。


…石田三成を討ち取った島津豊久は隣の部下に問いかけた。


「大将首だが、これは徳川家康か?」

「家康殿はこんなに痩せてないでごわす。」

「これは誤チェストでごわす。」


誤チェストか…無念。と言い残して乱戦の中で島津豊久は猩々緋の陣羽織を何度も貫かれたとも、行方知れずになったとも言われた。


…またブーン、と音が聞こえだした。いつもの「その後の歴史」が始まった。


こうして東軍の大勝利で関ケ原の戦いは幕を閉じた。大谷吉継は無事生き延びたが病気と、戦死者を弔うと言って所領を返納して出家し、まもなく亡くなった。長束正家も生き延びたが池田輝政の家臣と喧嘩になり斬殺されてしまった。しかし彼の妻は実家の本多家で無事に余生を過ごしたそうである。小早川秀秋は九州での活躍が認められ、備前岡山へ封じられた。しかしやはり病を得て死んでしまい、改易になった。上杉家は喧嘩を売りすぎて大変だったが、本庄繁長と前田慶次郎の必死の取りなしで米沢30万石、では流石に許されず米沢15万石だけ認められた。以後大坂の陣で豊臣家は滅び、徳川幕府は260年の長きに渡って・・


 なんか少しだけ歴史は変わったけど、やっぱり俺は関ケ原で死んでしまった。これってなんとかなることがあるのだろうか?


と思いつつ、目を覚ましたら、ここは関東だった。ここどこ?


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― 新着の感想 ―
[一言] 史実を辿りながら、有り得るかもしれないIFを書いているのが素晴らしいですね。 少し拝読する筈が夜更かしとなってしまいました(;'∀')
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