表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第一章 彼は新しい世界に触れる
22/88

21.彼は厄介な戦い方をする

あらすじ:リク流戦闘講座(選択科目)

 俺は飛んできた『ポイズンフロッグ』の舌の側面を木剣で弾き、舌が戻る前に懐に潜り込み鋭く呟く。


「……《雷華(らいか)》」

「きゅわぅっ!」


 最初の頃は拳ほどの大きさだった雷華が、今では西瓜並みの大きさで飛んでいく。

 弾速も最初に比べて約二倍となり、ポイズンフロッグは避けることなど出来ずに消滅する。


「……くーちゃんお疲れ」


 最後の蛙がポリゴン片となった事を確認すると俺は既に自分の分の蛙を倒し終わっているナギの傍に歩いていく。

 やはり彼女は相当上位のプレイヤーのようだ。しかし今の彼女はいつもの笑顔を潜め俺を怪訝に見やる。


「あの、一つ聞いていいですか?」

「……ん?いいよー」

「今やっていたのは《パリィ》ですか?」


 パリィは攻撃を受け流し無力化することを言い、攻撃を無力化という点では俺がやっていたのはパリィに似ているが受け流しなんてしたら武器が壊れてしまう。そもそも武器がかち合う時点で砕けるだろう。


「……パリィとは少し違う。攻撃を弾いてるだけ」

「えっと?」


 ナギに上手く伝わらない。俺は彼女に構えてと呟き木剣を構える。ナギは不審がりながら腰から一振りの刀を涼しげな金属音と共に抜く。

 俺は鋼特有の冷たさと美しさを兼ね備えたその刀に少しの間感嘆し説明を続ける。


「……鍔迫り合いとか受け流しはこんなん」


 そう言って俺はナギに刀をゆっくり振るように指示する。

 ゆるゆると蝿でも止まりそうなほど遅々と上段から振り下ろされる刃を木剣で正面から受け止める。

 何の衝撃も無いその接触で俺の木剣はガラス細工よりも脆く砕け散る。


「「……」」


 さすがに予想外だったので俺とナギはその場で固まる。俺は嫌な予感をしながら彼女に問う。


「……【刀】スキルレベルはおいくつで?」

「……Lv34です。参考までにリクさんの【片手剣】は?」

「……3だな。ちなみに武器は店売りのランク0の木剣だな」

「私の刀はレア度3ですね。しかしここまで差があると今みたいになるんですね……」


 武器スキルは素振りでも成長するが最近は釣りばかりやっていて上がっていない。


「あれ? でも触れるだけで壊れるのにどうやってモンスターの攻撃を弾いていたんですか?」

「……ん。もう一回振り下ろして」


 俺は新たに木剣を取り出し構える。先程と同様にスロー再生のように振り下ろしていく。

 俺はその刀の腹――刃と峰の間に木剣を当てて刀を横に弾く。今度は木剣は砕けなかった。耐久はそこそこ減ったが。


「……こんな感じに攻撃力判定の低いところに当てて太刀筋をずらす」


 武器による攻撃には、その武器の部位によって攻撃力の判定が異なる。

 例えば先程の刀の振り下ろしは腹と刃では刃の部分の方が攻撃力が出るし、刃にしても部分によって威力が異なる。

 そういった武器の部位ごとの攻撃力の差異を攻撃力判定と俺は教えられた。


「武器破壊攻撃みたいなものですか?」

「……まあ。近い、かな」


 武器破壊攻撃は武器の脆い部分を攻撃して武器を壊す攻撃であり、武器の脆い部分は得てして攻撃力判定が低い場合が多い。モンスターに当たる部位を硬くするのは妥当だろう。


「……加えて武器に勢いが乗る前に弾いたりする」

「出鼻を挫く感じですね!」


 武器の振りも先程の攻撃力判定があり、武器に体重の乗った状態で武器の一番攻撃力の出る部位が敵に当たった時の最大火力の攻撃がクリティカルと呼ばれている。

 そうであるなら、勢いが無く当たっても碌に痛くもない部位による最低火力のカスダメージ箇所も存在する。


 そんなカスダメ箇所に俺の攻撃を当てて攻撃を相殺している。ただそれだけの事だ。


「何だか頭が痛くなるよな戦い方ですね」

「……慣れれば楽だぞ。ほら、モンスターを攻撃する時に一番威力が出るように自然と間合いとか武器の振りとか調整するだろ?」

「はい。そういう経験はありますけど……」

「……同じ同じ」

「同じじゃないと思うんですけどね」

(対人勢は皆これくらい出来るんだがなー)


 ナギは対人戦闘の経験が無いのかもしれない。対人戦闘は闇が深い。

 ナギが俺の説明に納得していないことは知りつつも無視して折角の機会なので今まで気になっていたことを彼女に聞く。

 それは俺の一番のネックである所でもある。


「……他の人はどうやって選んでない武器のスキルをあげているんだ?」

「そうですね。基本は素振りかと。武器スキルはレベル5になったら《アビリティ》が使用出来ますからスキル上げも飛躍的に楽になりますよ。それに武器の要求スキル値は大抵5以上ですからね」

「……武器の要求スキル値?」

「ええと……。リクさんは何で木剣を使っているんですか?」

「……店売りの中で試して一番安くて耐久があるから。すぐ壊すからな」

「要求スキル値は複雑なので後日時間がある時にでも説明します」

「……お世話かけます」


 とにかく育てる武器スキルは一、二個に絞るのが強いキャラが作れますけどね。とナギは締め括った。


(……要求スキル値か。自分でも調べておかないとな)


 とは言っても今でも戦えてないわけじゃないし焦ることはないだろう。

 俺の後ろを付いてきながらナギが俺に言う。


「さっきの説明を聞いて思ったんですが、同じ条件でやれと言われても私にはポイズンフロッグの舌を弾く事は出来ないと思います」

「……蛙は、難しい」


 蛙の舌攻撃は慣れている俺でも木剣を何本も無駄にするくらい難しかった。話を聴いただけで真似されたらこちらの立つ瀬が無い。

 俺は彼女の言葉に肩を竦める。


 このように雑談と戦闘を繰り返して二人と一匹は湖畔を歩いていくのだった。

修正しました。

1.素振りでもスキルに経験値が入るようにしてマゾゲーオンラインにならないようにしました。

2.1に伴い二章で出す予定だった『武器要求スキル値』を少し出しました。


読者の方を混乱させて申し訳ありません。またこれからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ