表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/138

89話:襲来

「」:大陸共通語


『』:古代語


「ワイバーンの群れが現れたぞーー!逃げろー」


 どこからともなく聞こえる声、その声と共に街の中では悲鳴と叫び声が飛び交った。


 ワイバーン。亜竜種とも言われているドラゴンとは言い切れないがドラゴンに近い性質を持った種族である。ドラゴン程ではないが強力な攻撃力と防御力、魔法耐性を持っている。そして厄介なのがドラゴン以上に俊敏性が高い事である。高い機動力を生かした空中からの滑空による攻撃は毎年数多くの冒険者を亡き者へとしている。


 しかしそんなワイバーンであるが普段は巣を作りある程度の縄張りを作るとそこから大きく動くことはない。つまり今回のように街を襲うという事は過去例を見ない出来事だと言える。


「ハク、ルナ、フィア、華奈、ディア。ワイバーンってこんな風に街を襲うような事は過去にあったのか?」


「私の知る限りではないはずです」


 愁の問いかけにいち早く答えたハク。


「ルナ。ユニコーンのお前なら何か原因がわかるんじゃないのか?」


「うんとねー・・・一応仮説としては3つぐらいの原因が考えられるね」


 それからルナは今回起きた出来事に関する仮説を3つ説明した。


 1つ目はワイバーンの巣にたまにある卵を持ち出した事である。ワイバーンの巣に卵がありそれを持ち出した冒険者がワイバーンに追いかけられて逃げ回り、なんとか街に逃げ込んだ冒険者を襲うために街を襲っているというのが1つ目の仮説である。


 2つ目はモンスターテイムや召喚系統の魔法を使った者による指示で街を襲っている事である。愁の持つモンスターテイムのギフトスキルにより極低確率でテイムに成功した者や契約魔法や召喚関連の魔法でワイバーンが呼び出されてその主人が街を襲うように指示を出されて今のように街を襲っているのが2つ目の仮説である。


 3つ目はワイバーンの上位種族、つまりドラゴンに対して何かしらのちょっかいを掛けてその復讐にドラゴンと共にワイバーンが攻めてきた事である。ドラゴン相手に何かしらのちょっかいを掛けてそれでドラゴンの怒りを買いドラゴンがこの街に対して攻めてくる際に自らの戦力としてワイバーンを連れてきていることが3つ目の仮説である。


「なるほどね。とりあえず・・・現場に行くとするか」


「「「「「ですね」」」」」


 愁達は逃げている街の人たちと反対の方向、つまりワイバーンの存在を叫び声をあげた人がいる方向へと足を進めた。



―――…――…―――


「ぐぎゃああああああ」


 愁達はついにワイバーンを発見した。そして仮説に関する結論も出た。


 愁達の目の前には12体のワイバーンがいた。そしてワイバーンと共にいるのは1体の青いドラゴンであった。


『また我らに立ち向かう者共か・・・邪魔だな・・・』


『少し待って下さい』


「「御主人様!?」」


 古代語が話せることを知っているハクとルナ、言語能力Ⅴを持っている華奈を除いたフィアとディアは愁が突如話した古代語に驚きを隠せなかった。


『ふむ・・・古代語を話せる人間がいるとは驚いた』


『何故この街を襲うのですか?』


『この街の者が我らが宝玉を盗んだからそれを取り返すためにここへやって来た』


『なるほど。しばらくお待ちいただけますか?』


 愁はそう言って邪幻心眼の完全解析の能力を使い宝玉を探す。するとこの街で一際大きな建物、ぱっと見貴族の家と思わしき場所を完全解析の能力は示した。


『場所が分かったので取り返してきます。そのためその間は街に対して手出しをしないで頂けますか?』


『よかろう。ただし此方に対して危害を加えてくる者に対しては容赦なくする。それで構わないな?』


『わかりました。それでは失礼します』


「俺はあの貴族の家まで行ってくる。みんなは他の人がドラゴンに対して手を出さないようにしてくれ」


「わかりました。ここはお任せください。御主人様、気をつけて下さいね」


「あぁ、行ってくる」


 ハクに対してそう言った愁は自らのステータスを活かして全速力で貴族の家へと向かった。



―――…――…―――


「やっと着いた・・・それにしても趣味の悪い家だな」


 全速力で街の中を進んだ愁はドラゴンと話をした場所から遠く離れていた貴族の家まで約10秒程度で辿り着いた。そして貴族の家の庭にはいくつもの像、そして無駄にお金をかけているとしか思えない彫刻、さらにはキンピカに光る玄関のドア。これを見て趣味が良いと思える人はいるのだろうか?と思えるような家であった。そんな家では数多くの首輪をした奴隷と思わしき人々が荷物を纏めているところであった。愁はその中から門番と思わしき人物を発見したため声を掛ける事にした。


「少しいいですか?」


「な、貴様!ここをゲブ様の屋敷と知っての侵入か!?罪に問われても構わないのか?」


 丁寧な物言いの愁に対して高圧的な門番。この時愁は察した。


(あ、ここの貴族のやつダメなパターンのやつだ)


「んー当主の名前はゲブって言うのか~、んじゃーそいつに用があるからとっとと取り次いでくれない?」


「貴様、その態度はどうなっても良いんだろうな?」


「いあー、なんというかこのままだとこの家木端微塵にされるよ?あそこのドラゴンとワイバーン達によって。まぁそれでもいいなら取り次がなくても良いけどさ」


 少しばかりの殺気を混ぜて話をする愁。それに対して門番はと言うと顔が完全に真っ青になってそそくさと家の方へと向かって行った。


(あの程度の殺気であんな反応って・・・こりゃ思ったよりダメダメな貴族だな)


 愁は内心これから起こるであろうめんどくさい事に対して覚悟を決めていた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!


次回は4月7日に投稿予定です。


誤字やミスに関する報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ