65話:ステータスと謎
予想よりも早く投稿することが出来ました。と言うか64話と同じ時間になっちゃいました(笑)
隠秘を外した愁のステータスを見た華奈は絶句した。それもそのはず、ほとんどのステータスにおいて愁と華奈の間にはとんでもない程の差がある。しかも未だレベル75の愁に対して華奈のレベルは87、今後の事も考えると天と地ほどの差が存在する。それに加えてスキルの数だ。愁の持っているほとんどのスキルを華奈は理解できなかった。
「何故こんなステータスに、何故こんなにスキルが存在するの?」
「スキルアブソープションってスキルで魔物や人からスキルを奪うことが出来るんだ。それにくわてえスキルフュージョンで奪ったスキルから新たなスキルを合成している。そこからさらにスキルトランスファーで他人に対してスキルを渡す事も出来る。ちなみにスキルアブソープションでスキルを奪う事の出来る確率は俺の幸運と相手の幸運の値に左右されるよ。でも天運のおかげでほぼ100%の確率でスキルは奪えるけどね」
「愁・・・私のスキルも大分めちゃくちゃだとは思ったけどあなたのスキルも大分ハチャメチャね」
「しばらく悩んで思いついたスキルだからねー、気合入れて考えたよ!」
苦笑いしながら答える愁。たしかに華奈の一度死んでも生き返る事の出来るというスキルは正直なところ、ハチャメチャなスキルである。それに加えてロックオンやテリトリー等の複数のギフトスキル、正直言って華奈のレベルは愁が来るまではこの世界で最強と言っても過言ではなかっただろう。
「とりあえず今後はどうすべきだと思う?」
「愁はこの世界に来て大体どのくらい経つの?」
「もう少しで1年ってところかな、半年の時に神に呼ばれたけどもその時は誰一人として欠けてなかったよ。ちなみにその時に他の人のステータス覗いたけど相手にはならないね」
「あんた一体どんな能力してるのよ・・・」
「身体能力は魔族級、保持魔力は神級だよ」
「この世界において愁程のイレギュラーな存在っていないと思う」
しみじみとつぶやく華奈。しかし愁の存在は確かにイレギュラーである。聖獣すらも難なく殺せるほどのステータス、それに質の高い武器、そして今は牙を潜めているが元の世界では上から数えた方が早いような頭の良さを誇る現代知識。考えてみると愁の気分次第でこの世界をどうにもできる事になってしまう。
現にダークヘルフレアのギフトスキルを全力で行使すればこのアイリスをほぼ半壊させることも出来る。そして魔力を回復して再び使えばアイリスは確実に滅亡である。1つの世界を1日と掛からずに破壊する事の出来る力、普通に考えたら有り得ない力である。
そしてこんな力を自分は持っていていいのか?甚だしく疑問である。自らの持つ力に対して冷静に考えてしまった愁はどこか怯えを感じた。自らが世界の命運を握るかも位知れないほどの力。今さらながら恐怖である。作った時には深く考えなかった。本当にそんな事で良いのか?これは神が望んだ結果なのか?
神が望みさえすればこんな世界なんて一瞬で破壊できるだろう。しかし神はそんな直接的な干渉を行えないのは異世界転移する前に証明されている。現に行えるとしたらこのアイリスに愁達を転移させる必要はない。だったら神の目的は何なのか?考えてもわかるはずのない疑問である。
「わからないな。これからどうすればいいと思う?」
考えても仕方のない事であるが愁は華奈に対して助言を求めた。
「そんなことわかるわけないじゃない。ただ一つ言えるのは神には何かの目的があってそれを私たちに遂行させようとしている。そしてその目的はダンジョンの攻略ではない。これだけは確かだと思う」
華奈の発言は確信に満ちていた。今まで華奈の話した事、自身の知る情報の事を複合して考えれば確かに華奈の言うとおりである。そして再びこの疑問にたどり着く。一体神の目的は?全ての謎を解くカギはこの質問の答えに存在する。ただしこの謎を解くには情報が少なすぎる。つまり今後愁達はこの謎に関する情報を集めるべきではないのか?愁はそう結論づけた。
「問題ないと思う?」
愁は先程の自らの考えを華奈に話した。
「えぇ、良いと思う。今後は一緒に神の真の目的を探る。これが私たちの当面の目標ね」
「そうだな。それと華奈、話の方向性が変わるけど出来ればみんなの前では言葉遣いに気をつけて欲しい。一応俺が華奈の御主人様で華奈は俺の奴隷だろ?このままじゃハクやフィアに示しがつかない」
「話の方向性が変わり過ぎよ。でも確かにそうだね。今後は気を付ける。二人きりの時はいつもの感じで良い?」
「あぁ、それでいい。とにかく今日はもう寝よう。だいぶ遅くなったし。このことはしばらくは2人の秘密だな」
「そうね」
「じゃあまた明日な」
「えぇ、おやすみなさい」
そう言って2人は家の中へと戻る。こうして2人の話し合いにある程度の決着がついたのであった。そんな話を聞いていた1人の美女。銀髪のエルフ、ハクであった。彼女は愁が部屋を抜けたあたりから隠秘の気配遮断を用いて愁と華奈の話のほぼ全てを聞いていたのであった。みんな寝たと思って部屋を出ていた愁であったが、ハク自身は寝たふりをしていたのであった。さらに夜遅くに出会う2人、考えただけでも何かいかがわしい事があるのでは?と考えたハクは隠秘を使って隠れながらついていく事を決意したのだった。
「これはどういう事なの?御主人様、貴方様は何者なのでしょう?そして私はこのまま御主人様を愛していていいのでしょうか?」
誰もいない夜空の下、ハクは誰にも聞こえないような声で自らの気持ちを呟いた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次回は本日中か明日に投稿する予定です。




