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34話:聖域の異変と聖獣

今回、大陸共通語以外の言葉が出てきます。


大陸共通語は「」で、それ以外の言葉は『』を使い今回の話は進めます。

 愁とハクは聖域の境界にいた。


 普通の場所と聖域に何故境界が存在するのか。聖域の空気は聖獣が存在するせいで空気の質が聖獣の特性に偏ってしまう。例えば聖獣の特性が闇に偏った聖獣とする。すると空気は禍々しさが増し、普通の場所に比べて空気の質がドロリとした物に代わる。そのため、聖域と普通の場所には境界と言えるものが存在する。


 聖域と聖獣はこの世界にどの程度いるのか?このアイリスには聖獣は炎・水・風・土・雷・氷・光・闇・時空の9属性の聖獣が存在し数としては15匹が確認されている。聖域は聖獣の数だけ存在するのでこのアイリスには聖域は15か所存在する。その一つが現在いるパーマナリアの都市の付近にある森の中に存在する。


 さて、そんな愁とハクのいる聖域だが肌がピリッとするような空気を感じる。これは雷の特性を持った聖獣が存在することになる。しかし聖域に入るとどこか違和感を感じる。普段は聖獣が静かに暮らしているだけの聖域であるが今はどこかざわめきを感じる。


「ハク、なんかおかしくないか?」


「御主人様も感じ取りましたか?何か違和感を感じます。それにどうやら聖域の中にさらに結界が存在するみたいです」


「普通ではないな」


「ですね。行ってみましょうか」


 ハクのその言葉に応じて愁とハクは結界のある方向へと歩いた。



―――…――…――-


「これか・・・」


「ですね」


 そう言って愁は結界に手を当て鑑定を念じる。


結界(闇)

攪乱の効果を付与した結界。闇属性の魔剣で一時的に無効化できる。しかしすぐ修復される。


「多分この結界、一時的に紅鴉で切断できると思う。切断しても10秒ぐらいでまた元に戻るな」


「御主人様、お願いします」


 それを聞いた愁は紅鴉を召喚して闇属性の魔力を紅鴉に纏わせ結界を切断した。そしてハクと共に聖獣のいる聖域へと侵入した。


 聖域に入り探知を使うと大きな反応が2つと中くらいの反応が8つ存在した。大きな反応のうちの一つが聖獣であることは確かであるがもう一つの反応が気になった。


「聖獣と同規模の反応があるんだが・・・何があったんだ?」


「わかりません。行ってみましょう」


 そう言って愁とハクは探知によって感じた反応へと向かって移動した。


 すると辿り着いた場所は泉の畔であった。そしてそこにいたのは1体のペガサスと8体のユニコーン、1体の黒いドラゴンが存在した。正確には生きているが倒れたペガサスの側に黒い龍がいて、ペガサスを龍から守るようにユニコーンがいる。


『何故斯様な場所に人族やエルフ族と言った下等生物が存在する?』


 ドラゴンが言う。ドラゴンや聖獣と言った一部の特殊な魔物や長い間生き抜いた魔物は太古に失われた言語である『古代語』を使用する。愁は言語能力Ⅴのスキルを持っているので当然話すことが出来る。


『人族やエルフ族がこの場にいて申し訳ない』


「御主人様!?」


 愁が突如古代語を使用したので驚くハク。驚いたのはハクだけではなかった。


『ほぅ。古代語を話せるのか。前言は撤回しよう。お主らは下等生物ではないな』


『それは有難う御座います。俺の名前はシュウ。こっちのエルフはハクだ。別に貴方達に害をなそうとは思っていません。ただ最近聖域の様子がおかしいからと言う事で調査に来たのです』


『なるほど、事情は分かった。我はハーケン、人族からは邪龍と呼ばれておる。そこの聖獣は顔見知りのペガサスのフェアリオンだ。最近フェアリオンの管轄する聖域に異常を感じたので我が馳せ参じたというわけだ。そして何度古代語で問いかけても返事を返さないのだ』


『事情はわかった。そして俺のスキルによるとどうやら呪いにかかっているようだ』


『呪いだと?』


『えぇ』


 愁の鑑定では以下のように表示されている。


名前:フェアリオン (呪い)

レベル:90

ギフトスキル>

・スパーク

・紫電

・レクスボルト

・迅雷

・加速Ⅴ

・エンチャント

・真実の目

・擬人化

スキル>

・調教Ⅴ

・鑑定Ⅳ

・気配遮断Ⅳ

・言語能力Ⅲ

・探知Ⅴ


 ギフトスキル強そう・・・。


『シュウよ。人族やエルフ族では治癒魔法が使えるものがいると聞いたがお主たちには使えるのか?』


『治癒魔法自体は使えませんが、似たようなスキルであれば使えます』


『ほぅ。やってみよ』


 ハーケンにそう言われて愁はフェアリオンを対象にリザレクションを発動した。するとフェアリオンの足元に魔方陣が展開されてそこから光が発せられて辺りを包み込む。光が消えてしばらくしてから愁はフェアリオンを鑑定してみると呪いの文字が消えていた。


『私は・・・そしてハーケンか。それに何故人間なんぞがここにいる』


『人間がここにいて申し訳ない』


『ほぉ、人間が古代語を理解して扱えるとは珍しい事もあるんだな』


『フハハ、我と同じ反応をしよるの』


『む。そちと同じ反応を私はしたのか・・・屈辱』


『お主・・・ひどいの・・・』


『あのー、とりあえずこれで聖域の異常は取り除かれましたかね?』


『うむ。シュウよ、助かった。フェアリオンも礼を言っておけよ?お前にかかっていた呪いをこいつが解呪してくれたんだからな』


『ふむ。シュウとやら、迷惑をかけたな』


『さて、俺はそろそろ家に戻ろうと思うが・・・何もなしに帰るのは無粋だな。シュウ、我の背中に生えている棘を1本取って行くがいい。人族が使う武器の材料になるぞ』


『・・・有難くいただきます』


 少し考えた後にお礼を貰う事にした愁。そんな愁に対してフェアリオンが予想外の事を言い出す。


『よし、私からは従者を授けよう!ルナ。そちは最近、他の場所も見て回って色々と知りたいと言っていたらしいな。そこのシュウについて行くが良い!私が返せなかった恩を返してくれ!』


『畏まりました。有難き幸せ』


(・・・へ?)


 少し予想外な方向に話が進んだ愁であった。

最後まで読んで頂きありがとうございます!


次回の話は本日中or明日の朝までには投稿しようと思います!

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