97話:ディアと命令
今回はあまり話自体は進みません。キリをよくするため少し長めです。
―――…―Sight of DIA Start―…―――
私はデュラン様から指示を貰った。冒険者のシュウ クホウインをサイモン様とニック様が連れてきた騎士団達と共闘して殺害しろと。私は奴隷。拒否権はない。どうやって殺すのか、私はいつもそれだけを考えていた。そして考えた結果、多分御主人様は騎士団をものともせずに蹂躙するという予測をした。私の鑑定ですら御主人様の強さがわからないのだ。私が知るだけでもとんでもなく強力なスキルを持っている。剣術、槍術、斧術、炎魔法と思わしき魔法、空を飛ぶスキル、隠蔽系のスキル、身体強化系のスキル、探し物を探すスキル、ボックス系のスキル、言語系のスキル。私が確認しただけでもこの数のスキルを持っている。御主人様は騎士団程度じゃ足止めにすらならないと思う。だったら私が出来る事は・・・決まっている。不意打ちで御主人様に剣を突き刺せばいいんだ・・・。
―――…――…―――
私と御主人様達がブラックウルフと遭遇しました。案の定一方的な殺戮としか言えなかったです。本当に私はこんな人を殺せるの?疑問でしかなかった。でもやるしかない。やらないとデュラン様に殺されちゃう・・・
『アオオォオォォォォン』
ブラックウルフが遠吠えと思わしき鳴き声をあげてからしばらくするとブラックウルフの増援がやって来ました。5体・・・厳しく感じます。
「フィア、ルナ、ディア、ハク、華奈。1人1体ずつブラックウルフを仕留めてくれ」
御主人様にブラックウルフの1体を殺すよう命じられました。1体ぐらいなら何とかなる。私はそう思いました。ハクさんやルナさん、フィアさん、カナさんがブラックウルフ達を問題なく倒しました。彼女たちは気付いていない。彼女たち自身の戦力も御主人様ほどではないにしてもとんでもないという事を・・・。御主人様の近くにいるから強いのかな?それとも私の知らないところで血の滲むような努力をしてるのかな?わかんない・・・とりあえず考え事をしながらブラックウルフの相手をしていたから遅くなってしまいました。怒られるのかな?デュラン様なら間違えなくお仕置きです・・・はぁ。
ブラックウルフの討伐が遅くても御主人様は特に何のお仕置きもされませんでした。遅かったのに何でお仕置きされないんだろう?御主人様の奴隷の扱いは色々と変に感じます。でも確かなのは御主人様は素晴らしい御主人様だという事です。こんな人を殺さなくちゃいけないなんて罪悪感でいっぱいです。
私達がブラックウルフを仕留めてしばらくするとこの群れのボスとも言えるブラックホーンウルフが現れました。私には到底敵う事のない魔物です。私はとりまきのブラックウルフの始末を命じられるのかな・・・
「ハク、ルナ、フィア、華奈。とりまきのブラックウルフ達は任せる。ブラックホーンウルフは俺に任せろ」
と思っていましたが私は見学なようです。私はしっかりと御主人様達を見ていました。とりまきのブラックウルフ達を圧倒するハクさんとルナさんとカナさん、少し苦労しながらもブラックウルフを私よりも簡単そうに殺しているフィアさん、そしてブラックホーンウルフを瞬殺する御主人様。本当に私はこの人を殺せるのでしょうか?
「よし、特に苦労はしなかったけど帰るか」
決行の時が近づいてきました。御主人様、いままでありがとうございました。
―――…――…―――
御主人様とニック様、サイモン様が出会って会話をしています。会話が終わるとニック様とサイモン様はこの場に騎士団を残して立ち去りました。私も準備をしないと・・・
ハクさんやルナさん、フィアさん、カナさんに見られていないことを確認してボックスから1振の片手剣を取り出しました。御主人様達にはボックスのスキルが使える事はばれていないはずです・・・これで御主人様が油断した際に後ろからさせば私の任務は終了です・・・。
案の定御主人様は騎士団500人を瞬殺しました。しかも未知のスキルを3つも使って・・・なんですかあの地面の揺れは・・・そして突如現れた漆黒の闇、最後には落雷でした。御主人様の強さはわからないけど私は命じられた仕事をこなすだけです・・・
「ふぅ・・・終わっ『グシャッ』・・・」
御主人様が口から血を吐きながらこちらを見てきました・・・。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・私にはこうする事しかできないのです・・・。
―――…―Sight of DIA End―…―――
―――…―Sight of HAKU Start―…―――
御主人様がディアさんの持つ片手剣の刃によって貫かれています。御主人様・・・これが御主人様が言っていた死の危機なんですね・・・。ついに実行しなくてはいけないのですね・・・私はしたくない・・・御主人様とまだ別れたくない・・・。でもこれは命令。そして私は奴隷。やるしかないのですね。そして首輪が青く光り始めました。そろそろ私の意志に関係なく実行するのですね・・・御主人様・・・。
―――…―Sight of HAKU End―…―――
愁がディアのもつ片手剣によって腹が貫かれた時、それを待っていたかのごとく横の茂みから1人の槍を持った獣人が出て来た。そしてそいつは愁を槍で刺した。ディアは槍で刺されていることを確認して剣を突き刺したまま後方に大きく下がった。そして愁の方は少しだけ槍が逸れたのか、未だ辛うじて息をしている。
「やべ、失敗した。まぁいいや。今楽に・・・「祖なる炎神よ、我が意志の下、大地を業火によって焼き払い給え。ヘルフレア」・・・して」
突如愁の居た場所を中心として半径2m程の巨大な火柱が出現した。火柱に完全に飲み込まれる愁。そしてルナ、フィア、華奈、ディアは信じられないものを見た。そこには首輪が青く光っていながらも呪文を唱えてヘルフレアを発動させたハクの姿があった。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次回は近い内に投稿します。楽しみにしていただけると有難いです!
前回の話の最後の方は多くの方が予想できたみたいです。やはりあれですかね。。。ディアのスパイだったという話を今回にすべきだったのか・・・うーん・・・
でも、今回この展開を予想できた人は・・・いないはず!タブン
予想できた人がいたらなんか悲しくなっちゃいます(笑)




