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第八章 ゲーム ice edge   第二部 宣戦布告

 零士はずっと苦笑していた。お茶碗を手に取っただけでイメージが浮かび上がったのは幼い頃の夕食のできごと。お茶漬けにしようとして、お茶をひっくり返して妹の真奈美に「またお兄ちゃん何やってるの」と小馬鹿にされて二人で机をふいている。


 零士の記憶であって他人の記憶。かといって不愉快ではなく、俺にも俺の記憶があればええなぁと軽く嫉妬している。


 ミカエリの真奈美は茶碗を持って固まった零士の隣に静かにたたずんでいる。珍しく顔のパズルが完成して寂しげに微笑んでいるが零士は見ないようにしていた。


「しっかり食べや。あんたの大好物のサバやのに」


 祖母はそういってくすりと笑った。

「あんたは安物ばっかり好物やから助かるわ」


 俺の好物はサバやったんかと他人事として聞いていた零士は本当のところ魚より肉が好きだとは言い出せなかった。自分の人生は生前の標零士のレール上しか歩めないことに少しがっかりしている。


 少しのがっかりですんでいるのは、零士と自分の差異をまだはっきりと見つけられていないからだ。それに零士の残りの半生を俺が代わりに務めるということに新たな可能性を見出していたからだった。


 零士は昔の記憶と照らし合わせて些細な傷を探した。転んで残ったすり傷がなくなっている。肌の色もいくらか白い。つまり身体は粘土みたいにこねくり回して造られた人形みたいなものだ。


 さながらCGのキャラクターがいくら実写に近くなったところで実写にならないのは顔が均等すぎたり、肌のしみ、そばかすともほくろともつかない本人も自覚しない肌のかすみとかの有無にある。


 零士の眉毛は左がやや右肩上がりだったが、今は左右きれいにいかついている。ライから見た、零士の姿をこしらえた人形だ。まず日焼けサロンにでも行って人間らしさを取り戻した方がいいんちゃうかと零士は思案した。


 サバを避けて通れないので仕方なく頬張りながら、親友としての記憶の悪七ライを顧みた。何とも羨ましいぐらい眩しい好青年で、俺はライをいかに喜ばせようか毎日色々思案していた。


 幼い頃はその場の思いつきでライを振り回してばかりで困らせていた。


 零士はふと頬がほころびたので軽く首を振った。他人の記憶の厄介を引き受けるべきか実は悩んでいた。それに悪七ライは幼い頃の見る影もなかった。何より妹を殺した張本人だ。


 記憶として妹が眼前にちらつく以上、とても心穏やかでいられるわけがない。同時にライを野放しにするのは生前の零士が許さないことが分かりきっている。そこだけが唯一、生前の零士と気の合うところなのかもしれない。


 真奈美が今もこうして側にいるというだけで零士には悲しかった。死してなお、ミカエリとして留まることは幽霊でいうところの成仏できない自縛霊みたいで哀れだった。まして妹だ。


 ライを狂わせているできごとも詳しく知っている。欠席したことのないライが学校を休んだので、その日はいてもたってもいられなかった。


 学校が終わってすぐライの屋敷にランドセルのまま走って行ったら何やら車の出入りも激しいし、マスコミもいたし、パトカーもいて尋常じゃない雰囲気に圧倒された。


 いくら顔を覚えてもらっていても召使の一人も俺を通してくれなくてライには会えないまま二日が過ぎた。


 ライが学校に姿を現したときには顔色の悪さや生気のなさで制服が喪服に見えるほどだった。ライの姉の自殺はその後のライに黒い一点の染みとなって残った。この小さな一点が、後に大きく滲むことになるなんてな。


 人の死というのは、時が解決してくれることもなく、思い出す頻度が減る程度なのかもしれない。だからライが笑顔をときどき取り戻すようになったのは生前の零士の貢献じゃないかもしれない。


 何にしても零士はライに殺された。生前の零士がライを許しても、今の俺はライに蘇らせてもらったとしても犠牲の上に成り立った生を素直に喜んでいないし、許しもしない。

 零士は夕食を済ますとパソコンの前に座った。


 きっとマスコミが取材に来たのもライが仕組んだことだ。生前の零士じゃないことを確信して殺しに来るはずだ。

「ほんま、ライはわがままやからなぁ」


 自分の名前を検索したが特に変わったことは見つからない。わずか五分ほどのニュース番組の一部に出ただけだから大したことはないのかもしれない。


 結局次の日もその次の日も何も起きなかった。それよりも学校の手続きが長引き二日も休んだ。友達はもう卒業している。


 中学を卒業した扱いになったものの、二年のブランクがあるまま高校には進めないので通信学校で遅れを取り戻しつつ高校の入学手続きをする。


 ライも二つ年上になるが、その二年の差が許されざるもののように感じていた。生前の零士の身長と今の身長一つとっても、今の方が一センチ低い。指の太さを見ても均等で女みたいに細くきれいな指をしていてまだ己が確立されていない。


 どこまでいってもマネキン人形だ。ひょっとすると身長が伸びることもないかもしれない、大人になってもひげも生えず、声変わりもしないのかもと思うと零士は空寒さを感じた。





 いじめられていた人間がいじめていた人間を刺殺するニュースや鋭利な刃物で片思いの相手を刺す事件は、今はもうありふれてしまったのか。当人にとっては非日常なことで、人生の転機、取り返しのつかないことを覚悟の上での一大行事なわけだが、ニュースは淡々と事実だけを伝えていく。


 そこに感情移入をしようものなら毎日が悲痛でならなくなるからみんな聞き流す。今日もそういったニュースが淡々と流れて、耳にもよく残らなかった。刃物が氷だったということ以外。


 スマホでわざわざニュースをチェックするようになったのは新たな習慣だった。


 零士の一カ月はあっという間に過ぎた。勉強ばかりで一気に老けるわと友達に冗談を言い合っていたが、絶対嘘だろうとたしなめられた。実際、零士は老けるどころか生き生きしていた。


 左右均等な眉は、わざと個性を出すために傷をつけて、端のところが途切れている。日焼けサロンに行って、ひ弱な感じは払拭し関西人らしく大声で話す。


「だって、うちはな。遅れを取り戻したいだけやあらへんねん。おもろうてしゃーないんや」

 友達はガリ勉だと小馬鹿にするが、それは違うと熱弁を振るった。


「ええか、うちはな。まだまだ遊び足りんわけや。だって目に入るもん全部新しいって思うんやわ。赤ちゃんみたいなもんやわ」


「じゃあ早く彼女作らないとな」

 にやけて言ったそいつの頭を零士は筆箱でばしっと叩いた。ボケとツッコミ、どっちでもどんとこい。


 通信学校は年齢もばらばらでこれほど面白いところはない。学校の帰り道、大勢でぎゃーぎゃー騒いで酔っ払いに間違われたこともある。今日もそんな調子で三、四人でよたよた、わいわい、押しあったりへしあったりして帰っていた。


 それでも無言のミカエリ、真奈美は顔をパズルのように回しながらずっと背後についてくる。ときどき、友達と折り重なって真奈美と零士を押し潰すのだが、真奈美は霊と同じですり抜けてしまう。友達は寒気を感じるとかときどき言うが、それだけだ。


 今日は真奈美が顔のない顔でずっと後ろを振り向いている。そろそろライが動き出したのかもしれない。


「せや、すっかり忘れてたわ。今日ばーちゃんの誕生日やったわ。プレゼント忘れてたわ。走って帰るわ」


 逃げるように走る零士を友達は馬鹿だあいつとか、思い思いに笑うが、零士も自分の嘘がおかしくて忍び笑いが、途中からゲラゲラ声に変わった。


 しかし笑っている場合ではない。明らかに誰かがつけてきている。てっきりライかと思ったのは、ひんやりとした冷気に、突然、刃物のようなものが飛んできたからだ。ライが氷のミカエリを使うのは、大昔から知っている。


 電柱の陰に隠れてやり過ごした。氷だ。でも、ライならもっと確実に狙ってきたはずだ。一体誰だ。

「誰やねん。出てきたらどうなんや」


 声を荒げると小さな人影はこそこそと逃げ出した。その逃げ足の速さに一瞬出遅れた。向こうも随分怯えているような足の速さで惜しいことに見失った。


「ま、ええわ。真奈美頼むで」

 真奈美は顔面のパズルを完成させる。静かに光を放つ真奈美の顔に、逃げた少年の顔が映し出される。面識はない。強張った様相で、まだ逃げるのに必死なようだ。わき目もふらない。ふつう追ってを確認するだろう。少年は何かをきつく握りしめている。


 携帯電話だ。画面に何が映っているかまで突き止めるには、真奈美に血をあげなくては見せてもらえないだろう。


 そこまで落ちぶれていないつもりだから零士は真奈美にできることまでしか要求しない。真奈美は所詮妹といってもミカエリなのだから。


 よく見ると少年は携帯を手放そうと握っている手を引き剥がそうとしていた。だが、吸いつくように携帯が手から離れない。少年は人とぶつかりながら橋の方に走って行った。そして、橋の上で何やら奇妙な声で叫び出した。

「できない! できないよ!」


 今度は携帯に謝りだした。声は怯え、とうとう橋の手すりに手をかけた。そして川に飛び込んだ。

「まずいで、自殺かいな」


 真奈美はそれ以上先を見せなかった。顔のパズルが順に剥がれていく。肝心なところを見せないのがミカエリのやり方だ。


「ええ加減にしてほしいわ。自力で探すわ」

 さっきの少年の飛び降りた橋なら見たことがある。今ならまだ間に合うかもしれない。


 橋には人だかりも何もなかった。数人が携帯で救急車に通報していたが、ただそれだけでこんな暗い川を誰が血眼になって探せるだろうか。


「俺が行くしかあらへんな」

 真奈美の顔のパズルが再び完成を目指して回り始めた。

「ええって。自力で探すから」


 そう言って零士は飛び込む準備をはじめたが、真奈美の唇が完成し、音声アナウンスのように感情のない声で呟いた。

「もう手遅れ。死んでる」


「ほんま、勘弁してーや。どこらへんで死んでんねんな」

「もう流されて枝に引っかかってる」

「溺れたんかいな」

 それ以上真奈美は話さない。確かにいつもより情報を多く聞き過ぎた。


 脱ぎかけた服をきちんと着なおして、靴ひもを結び直して真奈美を見上げると、完成した、真奈美の顔が優しく微笑みかけていた。

「なんや。いらんことはできたら言わんといてーや」


 代償タイムだ。嫌でも聞いておかなければならない。しかも、こういうときに限って優しい、人間の、それこそ本物の真奈美の感情を持って語りかけてくる。声も音声アナウンスから本人のそれに変わる。


「お兄ちゃんは何でそんなに頑張り屋さんなの」

「おだてたって何も出ーへんで」


 真奈美は川面を見下ろして、橋の手すりに腕を乗せる。

「お兄ちゃんがいてくれなかったらあのとき私、死んでたよ」


 脱線事故のことだ。真奈美の顔に炎がちらつく。ミカエリの中に真奈美がいたとしたら、真奈美はこの脱線事故の記憶を何度も眼前にちらつかされていることになる。そんなことってあるのだろうか。


「なあ、真奈美、俺は零士やけど、零士やあらへんで。前も言ったけどな。ただ、それはお前には謝らなあかんとずっと思ってる。


 ライなんかはどうだってええけど、お前にだけは謝らなあかんねんよな。ほんま、こんなん言ってても上辺だけでしゃーないんやけど」


 言葉尻が濁ってしまって、靴ひもが立て結びになってしまった。まあええけど。

 真奈美が泣いている。ミカエリの見せる演技なのか、本物の涙なのか。


「お兄ちゃん、そんな顔しないで。逆転しちゃったね。ずっとお兄ちゃんがいなくて寂しかったけど、今はお兄ちゃんが生きてる。お兄ちゃんの第二の人生だから」


 零士は自分がどんなしわを寄せているのか分からなかった。誰かが呼んだ救急車がようやく到着してもその音に気づかなかった。


 翌日ニュースにもなった投身自殺。ところが、自殺というのは零士の思い込みだった。少年は溺死ではなく刺し傷が致命傷だった。少年の携帯電話は水没して通信記録は分からない。


 所持品の中から遺書らしき紙も発見されたが、こちらも水でかなり解析が難しいらしい。だが、警察は他殺の可能性で捜査を進めているという。


「橋から飛び降りた後に刺されてんねんよな。あんなんできんのはやっぱライしかおらんわな」


 ライの屋敷の場所は知っているが、おそらくライは一人暮らしだろう。ライのお袋さんが厄介なのは零士も知っている。


 ライの友達というだけで誕生日にバレンタインチョコ顔負けのでかいハート型のチョコを送りつけてくる。ライだって逃げたくなるだろう。それに、ライはいくつも事件を起こしているから必ずいつでも逃げられる準備をしているだろう。


 食器を洗っていると祖母が、突然ダンボールいっぱいの箱を運んできた。

「なんや。重そうやん。置いときや」


「あんたのんやんか。捨てんと置いてたんやけど。埃はかぶってるわ、整理もできんとそのまんまなんやで」


 そこでおいおい涙ぐまれたので、零士は水道を止めて、ダンボールを部屋に運んだ。ゆっくり見たらいいと言われたが、どれが何なのか鮮明に覚えていた。標本。星座の図鑑。地球儀。田舎の裏山で拾った花崗岩。アリの巣観察セット。アンモナイトの化石。掘り進めるとざくざく出てくる宝の山だ。


 合間に自由研究ノート。といってもほとんど日記みたいなもので、きれいやった。ほんますごいとか感嘆ばかり書き込んでいる。


 手帳が出てきた。住所録も載っている。今更誰に電話しようとも思わなかったが、ライにかけてみたくなった。出るか出ないか。


 携帯電話の番号ほど信用できないものはない。二年前の番号だし、用意周到なライが電話番号を変えていないわけがない。


 それでもかけてみたくなるのは、親友の絆の強さを試してみたくなったからかもしれない。ただ、朝はいけないと思った。ライは表向きは優等生だから学校でまじめな顔して過ごしているはずだ。零士は夜間の学校なので一日休むことにした。


 繋がるかどうかもわからない電話をかけるために学校を休んだことで、零士は自分が生前の零士もこうしたであろうことに思い当って驚いた。


 ライが真奈美を殺していなかったら、ライと親友になれたかもしれない。今でこそ天体観測に興味はないが、ライなら何を誘ってもついてくるだろう。


「でもあんなやつやで」

 電話番号を押しながら零士はぶつくさ言った。真奈美は砂利の上に佇んでいる。電話をかけるためだけにやってきたのは、街灯も届かない鉄橋の下の大きな川。


 人気も少なく、波打つ音が心地いい。岩の上であぐらをかいて、月を探すには生憎の曇り空。電車が通る度、明りが急ぎ足に落ちていく。電話がコールする。番号は変わっていなかった。だが、出る気配はない。足元をフナムシがじりじりと横断していく。諦めかけたそのとき、電話が繋がった。


「なんだ零士か」

 白々しくも親しげな声。話す前から、電話番号で誰からか分かったようだ。

「投身自殺の事件はあんさんなんやろ?」


 電話越しにため息ともつかない息が漏れる。ライは単刀直入に聞かれることが嫌いだ。

「どの事件?」

 とぼけているのではなく幾らか思案しているようだ。

「ほかにも何かやったんかいな」


「だからどの事件?」

 苛々した口調のライ。できればこんなくだらない電話を早く切りたいのかもしれない。ということはあまりライの計画は上手く行ってないのかもしれない。


「川に投身したけど他殺やったあれや。誰を巻き込んでんねんな。うちが気食わんなら自分で会いに来いや」

「まだその時じゃないから」


「待てや。話したいことがあるから電話番号置いといたんやろ。この前はうちもリョウとかいう、あんさんの新しい友達にちょっかい出して悪かったけどな。今なら話せるんやろ」


「新しい友達ね。嫉妬してるの?」

「ふざけんなや。さっさと用件を言わんかい」


 ライは残念だと言わんばかりにため息をついた。


「大声で怒鳴らないでよ。急ぐことでもないんだから。話す前にやっぱりもう一度認識したかったんだ。零士じゃないとしてもこれだけ精巧な人間なんだから、偽物じゃないって」

 少し気の毒に思えたが、零士は首を振る。


「うちかて一個体やからな」

 しばしの沈黙の間、鼻から夜の潮の匂いを大きく吸い込んだ。


「俺が知りたいのは――優しさとか思いやりとか人として持っているべきものを失くして、もっと言えば他人を蹴落としたり殺したりしても何も感じず、それでも生きていたいと思うのは罪になるのかってこと」


 夜風が冷たくなってきた。やっと持論を持ち出してきたあたり答えを求めているのだろう。零士は黙って耳を傾けたがそれは仕方なく聞いてやろうと思ったからで和解の余地はない。


「それはもう人ではなくて化物って人は言うかもしれない。それでも俺は自殺したいって感情が沸かないんだ。仮に壊れた心と名付けよう。


 壊れた身体で生きている人はたくさんいる。自殺志願者もたくさんいるしね。だけど俺は壊れた心のままでい続けたいし周囲も壊し続けたい。これは果たして罪かな」

「罪やな」


「即決だね。法律で見たら罪だけど。生きていたいと思うこと自体は正しいと思ってるんだけど。俺が間違ってる?


 化物のまま生きていくのも正しいって信じてるんだけど。確かに喜怒哀楽が働かない心だけど、これって強みじゃないかな」


「人として生きることやめたんか? せやったら生きることに意味はあらへんで」


 鼻息一つ。怒ってるでもなく、何かに途方にくれたようだったが、考えさせるつもりはないので言葉を畳みかける。

「心を持てへんことが強みや言うんわ間違いやで」


 開き直ったかのようにライは流暢(りゅうちょう)に話しだす。

「確かに芸術的センスは持ち合わせてないのは認めるよ。だけど破壊者としては合格でしょ」

 冗談めかした調子の演技ぶった声。


「それで自己満足してんか知らんけど、ほな一つ聞いたるわ、何でライは幸せを気取ってんや?

 薄ら笑いばっかしくさって。不幸なくせに、さも自分は関係ないって顔してんねんであんさん」


 逆鱗を逆撫でしたのは明らかだった。無言のライはきっと青ざめている。ライは幸福を望んでいない。何故不幸な状態で居座り続けるのか。


 零士にはだんだん沈黙が滑稽に思えてきた。ライを取り巻くのは身動ぎ一つしない静かな激昂だろう。いつだってライは指の先に震えが来てもおかしくないはずの怒りも指はきれいに揃えて耐える。ようやく聞こえたライの声が歌うように告げた。


「そんなに死に急ぎたいわけ。分かったよ。ちゃんと殺してあげる」

「うちがいる限り打開策はあらへん。せやからうちを殺そうとすんや。ガキみたいな理屈やな」


 ライの半ば疲れたように息を吐き出すのがかすかに聞こえた。黙り込んだと思ったら、電話が切れた。


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