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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第3章:命を懸けなければ
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第65話:処刑


 知っているかもしれないどころではなかった。

 世界中で知らぬ者のいない、偉大な王の1人じゃないか。

 世界最強の王……SSランク冒険者としても名を馳せている彼の人気は他国でも高い。


「顔は見たことなかったから気付かなかったな。そうかあの人が……でも、この間のオリンポス会談にも出席していたし、病気だなんて噂も聞いたことがないぞ」


「うーん……色々と疑問はありますが、ご本人に直接聞くのが一番でしょうね。とりあえず回復を待ちましょう」


 ケルト王なら無能の少女の件も知っているだろう。

 回復すれば話を聞けるかもしれない。


「そうだな……とりあえず現在地の確認をしておこう。さっき見えた川の形状からして……」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あれから約3時間後。

 現在地の確認を済ませ、苦しむケルト王の顔を布で拭いたり、声を掛けたりしていると、彼の呼吸が徐々に穏やかになっていった。


「うん……もうそろそろ大丈夫ー」


「よかった……見ているこっちまで辛かったからな……」


 やがて苦痛に歪んでいた彼の表情が穏やかになると、遂にケルト王は目を覚ました。

 ゆっくりと身体を起こして深呼吸を始め、それが終わると今度は立ち上がり、不思議そうに手を握ったり開いたりしている。


「こ、これは……痛みがない……な、治ったのか? こんな……こんなことがっ……!」


 ケルト王は拳を握りしめ、涙を浮かべて喜んでいる。

 なんだかこっちまで嬉しくなってしまった。

 本当に死を覚悟していたのだろう。


「陛下、ご無事でなによりです」


「あ、ああ! き、君達のおかげだ! な、あっ、ど、どうっ……ああ……なんと礼をすればいいか……言葉が出てこぬ……と、とにかくありがとう!!」


 興奮冷めやらぬケルト王は、俺達全員と握手をしながら頭を下げていた。


「頭をお上げください陛下。お役に立ててよかった」


「ではロード様、私は戻りますねー。陛下、お身体ご自愛下さいませー!」


「あ、ああ! ああ! ありがとう……ありがとう!」


 ケルト王に笑顔で応え、手を振るアスクレピオスから魔力を抜き、そのまま手帳に戻す。


「陛下、まずは一息つきましょう。色々とお話を伺いたいので」


「わ、分かった! もう諦めていたのだ……それがまさかこんなことになるとは……! おお……神よ……」


「レヴィ、紅茶を頼む」


「かしこまりました」


 グヴィリアルが倒した木をデュランダルで簡単に切り分け、3人分の椅子と机代わりの丸太をこしらえる。

 それに座り、レヴィの紅茶を飲みながら少しずつ話を始めた。


「……美味うまい。こんなに美味い紅茶を飲んだのは初めてだ」


「お気に召して頂けた様で光栄です陛下」


「ああ……なんと清々しい気分か。改めて礼を言わせてくれ。どうやら俺のことを知っている様だが、一応名乗らせて頂こう。我が名はオーランド=ガドリック=ケルト。ケルトの現国王である。君達には返しても返しても返しきれぬ大恩が出来てしまった。本当に……ありがとう」


 ケルト王は立ち上がり、再び深々と頭を下げる。

 俺達も立ち上がりそれに応えた。


「陛下、もう十分お気持ちは頂きました。お話をお聞かせ願いたいのですが、よろしいでしょうか?」


「無論。全てに答えよう」


 俺達は再び腰を下ろし、ケルト王に色々と話を聞く。

 彼がその全てに答えてくれたおかげで、大体何があったのかを知ることが出来た。


「なるほど……それでここに」


「ああ……最後の我が儘というやつだ。もう死を間近に感じておったしな。すまないが、今度は俺にも質問させてくれ。まず、君達は何故ここに? それに、不治の病を癒したその力……君達はいったい何者なんだ?」


「あ、申し訳ありません。まだ名前も言ってませんでした……俺の名前はロード=アーヴァイン。こっちはレヴィと言います。非礼をお許し下さい」


「いや、そんなことは構わん。というか今ロードと言ったな……その名をどこかで……ああ! ニーベルグ闘技大会で優勝したあの!」


「あ、はい。そうです」


「なるほど! あのグラウディを破った男であったか! その強さに合点がいったわ……して、何故ここに?」


「話せば長くなりますが……」


「構わん。是非聞かせてくれ」


 俺はケルト王に全てを話した。

 無能と呼ばれていたことや、伝説の武具達のこと、生命魔法や無能という概念を消すために旅をしていることも。


「それで、情報誌にケルトの名前があったんです。無能と呼ばれた少女が暴行事件を起こして幽閉されていると。その人がどんな人かは分かりませんが、このまま極刑になることだけは避けたいと思いまして……せめて話だけでも聞ければと」


「なるほどな……にわかには信じられぬが、他ならぬ命の恩人の言葉……ケルトの誇りに懸けて信じよう。それに、そう言われると俺にも思い当たる節はある」


「と、言いますと……?」


「以前にも無能と呼ばれた者がケルトにいたのだが、やはり酷い扱いを受けていたと聞く。確かに無能という存在に対し俺も嫌な感情を持ってはいた。だが、民達の無能に対する様子を聞いた時は、何故そこまでという思いがあってな。今の話を聞いてそれを理解したわ……」


「なるほど……そういうことでしたか……」


「うむ……それに、あれは5日前だったか……我がケルトの騎士団長が、無能と呼ばれた少女に話をしにいった際、どうにも違和感を覚えると申してきたのだ。騎士団長のエディは、あの少女が人を殴ったとは思えないと言っておった。あの男には人を見極める力があってな。善人か悪人かが瞬時に分かるという稀有な男なのだ。実際奴が見逃した悪人は1人もおらんのがその証拠よ。だからだろう、再調査願いを出しておったのだが、無能故既に処刑が決ま……いかん……いかんぞ!」


 突然ケルト王は慌てて立ち上がった。

 い、いったい何が……?


「今何時だ!?」


「え? 後2、3分程で正午ですが……」


「い、いかん! その者の処刑は確か今日の正午だった筈だ! そうだ……今日町を出る前にそう告げられたから覚えておる……と、止めなければ! 殴ったにせよ殴らなかったにせよ……アスナという少女を極刑にしてはならぬ!」


 …………え?

 いや、きっと同じ名前なだけだろう。

 アスナは無能ではない。

 だ、だが一応……。


「へ、陛下……その女の子の名前って……アスナ=リンドテイルじゃ……ニーベルグ出身じゃないですよね?」


「え……? そ、その通りだ。確か冒険者登録ではニーベルグ出身だった筈だが……何故知っている!?」


 あり得ない。

 意味が分からない。

 何故アスナが無能に……いや、今考えている暇はない!


「ど、どうした……まさか!」


「お、俺の……幼馴染かもしれません。でも、彼女は無能じゃなかった!」


「な、なんだと!? いったいどういうことだ!」


「分かりません! と、とにかく助けないと……!」


「く、くそっ! 通信魔石が破壊されていなければ……!」


 処刑までそれしかないとなると、ここからエポリィがどんなに馬車を飛ばしても間に合わない。


「ロード様! ブリューナク様なら……!」


「いや駄目だ! ブリューナクの速さはあくまで直線的な移動……障害物の多い森の中じゃどうしたって遅くなる!」


「な、なら空を! ブリューナク様とあの方の力を合わせればどうです!?」


「そ、そうか! ブリューナク! タラリア!」


 手帳からブリューナクと、羽根の生えた靴を呼び出す。

 それを脚装備の上から履き、魔力を込めて空中に足を踏み出すと、見えない階段を上るように空中を歩くことが出来た。

 この靴を履いていれば空中を駆けることが出来る……それにブリューナクの雷速を合わせれば……!


「レヴィ! 陛下と一緒に馬車でケルトへ!」


「分かりました!」


「ロード急げ! 後のことは俺に任せるがいい! なんとしても止めよ! これを持っていけ!」


 ケルト王は俺に一振りの短剣を投げ渡した。

 綺麗な装飾から、かなり高価なものだと分かる。


「俺が常に持ち歩いているケルト王族の宝剣だ! 俺の使いだという証拠になる筈……それを見せよ!」


「ありがとうございます陛下!」


 俺はケルトに向け空中を駆け抜ける。

 何があったかは知らない。

 もちろん色々あったけど……君のおかげで俺は……!

 このまま終わりじゃ駄目だっ!


「アスナ……死ぬな……!」


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30.3.25より、書籍第2巻が発売中です。 宜しくお願い致しますm(_ _)m
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