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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時
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第427話:ゴッド

 

『ハーハッハッハッ! 素晴らしいッ! 最高の気分だァッ!』


「へ、陛下……陛下なのですか!?」


『そうだよリナリアくぅん!! はははッ! 上手くいったんだ! 僕が……僕こそが! こいつの適合者だったのさ!!』


 100メートルを超える巨体が壁を突き破って現れたのを見て、レヴィとスカークは示し合わせたかのように合流し、同時に距離を取った。

 しかし、距離を取って尚、見上げるそれは変わらない。


「ロ、ロバート王があの中に……ロード様は!?」


「……落ち着くんだレヴィちゃん。あいつはそう簡単にくたばらないでしょ。それより……こいつはかんなりヤバイ状況だよ」


 スカークの言う通り、先程までとは一転、状況は最悪となっていた。

 大型をブランスが抑え、バイザーも魔力切れ寸前の状態ではあったが、通常の人造魔石機兵(ハイゴーレム)の足止めには成功していた。

 そして、スカークがエミーナを、レヴィがリナリアをそれぞれ抑え、勝利はまさに目前というところで、その盤面は王の登場によって完全にひっくり返されたのである。


「申し訳ございません陛下ッ……我々が至らぬばかりに……!」


『いいんだよリナリア君! むしろ、そのおかげで僕は"こう"なれたんだ! 最強の王に……いやッ! もはや僕は神にッ……ゴッドロバートになれたのさッ!』


「ゴ、ゴッドロバート?」


『そうッ! ゴッドとは! 古い言葉で"神"を指す言葉ッ……これからは僕のことをそう呼んでくれたまえッ! さぁ、これから始まる僕の世界に……邪魔な者達を駆逐しようじゃないか!』


「ッ!」


 巨人の……いや、巨神の一歩が大地を揺らす。

 取った距離などまるで無意味であった。

 あまりに巨大過ぎるそれの一歩が、無慈悲に空間を押し潰す。


「スカーク様……!」


「やーれやれ……レヴィちゃん、サポートは任せたよ。オイラは……アレの中に入る」


「……かしこまりました」


 立てた作戦は単純明快。

 スカークが透過魔法で巨神の中に入り、王を討つ。

 レヴィは瞬時にそれを理解し、スカークの前へと出た。


「んじゃ……よろしく!」


「いきます……!」


 瞬間レヴィは大地を蹴り、スカークは地面に沈む。


『逃げても無駄だよぉッ!』


 王は彼女達の行動を"逃走"と見た。

 故に、まずは目に見えるレヴィへと標的を絞る。

 そうして振り下ろされた巨神の拳が――――


「うッ!?」


 彼女の僅か数メートル先に着弾したそれが、大地を激しく揺らし、凄まじい衝撃を生む。

 直撃は回避したものの、その風圧だけでレヴィの身体が宙を舞っていた。


「ぐあッ!」


 そのまま勢いよく壁に叩きつけられ、彼女の頭の中で高い金属音が鳴り響く。


『ハーハッハッハッ! 逃げられる訳ないじゃない! 蟻だよ蟻! 君らは地を這うだけの蟻さ! 全部見えるんだよここからはッ! だからね……スカーク君!』


「……ちッ」


 舌打ちとともに、スカークはレヴィが寄りかかる壁から姿を現していた。


「ス、スカーク様……」


「ごめんレヴィちゃん……駄目だった」


『無駄だよ無駄ぁッ! ゴッドロバートに魔法は効かないんだ! 魔法だけじゃないよぉ!? 魔力を伴う全ての事象を無に還す! ただの鉄の塊じゃないのさ! 完全魔力遮断装甲ッ! 通常の人造魔石機兵(ハイゴーレム)の装甲にも魔力軽減の力はあるッ! けど! ゴッドロバートのそれは次元が違うのさぁッ! だからこそ無敵ッ! だからこそ全能ッ! だからこそ神ッ! 神の体内に侵入なんて……出来る訳ないだろぉ!? ハッハッハッ!! さぁて、次にどうなるか……もう分かるよねぇッ!?』


「まずいッ……!」


 巨神の拳が再び振り上げられる。

 しかし、スカークは魔法を使用して回避することが出来ない。

 透過魔法で攻撃をすり抜けようにも、巨神の一撃には意味がなく、壁や床に逃げ込もうにも、逃げ込んだ場所ごと破壊されてしまう。


「レヴィちゃん立って!」


「ぐッ!」


『まずは2人ッ……!』


「"嵐の神の放浪槍(グングニル)"ッ!!」


『ぬッ!?』


 次の瞬間、暴風を纏った白き槍が、2人を粉砕せんと放たれた巨拳の軌道を僅かに逸らす。

 逸れた拳が地面を砕き、粉塵が舞い上がる中、スカークはレヴィの肩に手を置いて魔力を練り上げた。


「ロ、ロード様ッ……!」


 身体が地面に吸い込まれる刹那、見えぬままに、レヴィは主人の名を叫ぶ。


「先に行けレヴィッ! アレは俺がなんとかするッ!」


「あ……で、ですがッ!」


 土埃の中から聞こえた声はいつも通りに力強く、彼女はそれで微かに安堵した。

 しかし、敵はあまりにも巨大であり、いかにロードとはいえ、どうにか出来るという確信を得るには至らない。


「大丈夫……信じろ!」


「ッ!」


 彼もまた、レヴィがそう思うことは分かっていた。

 だから、やはりいつも通りの台詞を吐く。


「……分かりました!」


 2人はそれで通ずるのだ。

 だからこそ、今までの困難を乗り越えてこられた。


「他はお任せをッ!」


「ああ……任せた!」


 やがて薄茶色の霧が晴れた時、既にスカークとレヴィの姿はどこにもなく、ただ1人、彼だけが巨神の前に立っていた。


『……ロード君、逃げたんじゃなかったんだねぇ』


「ロバート王……これ以上は無意味です! あなたはもう……!」


『無意味ぃ!? 違う違う! 全てはこれから始まるのだよッ! いいかねロード君!? 無価値だと断じたものをッ……人は顧みないッ!! それは二重の悪さ! けど、僕は違う! 断ずることもなければ顧みるもするッ! 世界は見出されなければならないんだッ! 僕というッ……尊い存在によって!!』


 もはや、ロバート王に、ロードの言葉は届かなかった。

 窮地の果てに絶大な力を得た彼は、本気で"そう"考えているのだ。

 この世界を、自分が救うのだと。

 だが、彼の論理には矛盾しかなかった。

 王として守るべき存在を……いや、仮に王でなくとも、それを望むならば、超えてはならない一線を何度も踏み越え、数多の人生を踏みにじり、そうして彼は"神"を自称して今そこに立っている。

 果たして彼は、断じてもいなければ、顧みてもいるのか。

 それは、彼の言葉と行動を見れば明らかだった。


『分かるまいさッ……君には! 見出されなかった者の痛みなど!! 実の親から疎まれ! 秘匿され! 世界から弾かれたッ……空気だったんだよ僕はッ! いやッ! 空気より無価値ッ……まさに"無"だッ!』


 しかし、彼がそうなってしまったのも無理はない。

 この男もまた、"無能"という名の理不尽に蹂躙され、歩むべき道を違えたのだ。

 時世が、運命が、出会いが、そして……"王"という称号が、彼を狂気の道へと誘った。


『だから僕はねぇ!? この世界を導くのさッ! 誰よりも痛みを知るこの僕が!! ああ……違うなぁ! 痛みを知り、世界を統べる力を持つこの僕がだ!! ははッ! 力を得たんだよ僕はッ! 君のように、最初から強い人間には分からッ……!』


「……それは違いますよ」


『な、何が……うッ!?』


 圧倒的優位な状況。

 しかし、ロバートは思わず言葉を詰まらせた。

 その、ロードから迸る、強大な魔力を前に。


「俺は……いや、俺もかつて……"無能"と呼ばれていましたから」


『な……む、無能ッ!? 君が!? そ、そんな馬鹿なことがッ……!』


「事実です……ロバート王。"無能"は、魔法が使えない訳ではないんです。ただ、知らないだけ。だから、あなたもまだ……」


『だ、黙れッ! そうやって僕を騙す気だろう!? そう言えば僕が引くと……この嘘つきめッ!』


 もはや、言葉は通らない。

 ロードは、次なる言葉を発するのをやめ、黒い手帳をゆっくりと開いた。


『神に唾を吐く不届き者め……決めたよ。まずは君を叩き潰し、この世界の平伏を始めようッ! リナリア君! エミーナ君! 彼は僕が潰すッ! 君らは逃げたやつらを……1人残らず駆逐しろッ!』


「「はっ!」」


「……いや、それは無理だな」


『ッ!?』


 全員の……いや、ロード以外の視線が上へと移る。

 彼だけは知っていた。

 その生命が、その魔力が、こちらへと近づいていたことを。


「あ、あなたはッ……あり得ないッ……!」


「あり得たからここにいんだろうが。まったく……抜け出るのにえらく手間取ったぜ」


 その声の主が、ゆっくりと降りてくる。

 やがてロードの横に立った彼は、巨大な2本のつるぎを背中から引き抜いた。


「よう、ロード……一緒に戦うのは初めてだな」


 白銀の前髪から覗く瞳が、ロードへと向けられる。


「ええ、心強いです……バーンさん」


「フッ……さて、やるか」


「はいッ!」


 そうして2人は、揃って巨神の瞳を睨みつけた。


生存報告がてら……。

少しずつ頑張りますm(_ _)m

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30.3.25より、書籍第2巻が発売中です。 宜しくお願い致しますm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってました!! 更新ありがとうございます! これからもゆっくりでいいですから、頑張ってください!
[良い点] 待ってました!!! これから頑張ってください!
[良い点] この展開は……やっとバーンの強さが明らかになるのかな? これまで彼全く本気を出してなさそうなので、奥の手とか見れたら楽しみです。 [一言] 待ってました!!! 更新報告見て興奮しちゃいまし…
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