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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時
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第419話:赤

 

「超大型……未完成?」


「ご覧の通り、外は出来てるよ。ただ、中がね。コスモ君でも……って、知らないか。まぁとにかく、君くらい魔力を持った人間でも駄目だったんだ。彼でも足りない。ああ、因みに1人で全部って訳じゃないんだ。両手足には、それなりの魔力を持った人間が何十人も入ってて、心臓部に入れたメインの人間が、それらを統括して制御するのね。コスモ君にはそれを期待したんだけど、上手くいかなかったのよ。出力が上がんなくてさ。魔力は足りてるっぽいんだけど、何かが足りてないみたいでね。だから、次は君にお願いしようかなって……ね」


 そう言って、王はティアを見た。

 嬉しそうに、満面の笑みを浮かべて。


「ッ! あ……」


 思わず顔を背けたくなるような、狂気に満ち満ちたそれ。

 それでも2人は、下を向かなかった。

 というより、彼女達の視線は、その先にあった。

 そこに、探し求めていたものがあったから。


「陛下……」


「あーもう! 分かってるって! 今は無理なんでしょ!? だったらさー、せめて普通のはやろうよ。それくらいいいじゃん。戦力も増えるし」


「ですが……」


「なんでさ? ねぇ君、大型は起動したんでしょ?」


「あっ、は、はい! 既に配置済みで……全人造魔石機兵(ハイゴーレム)が戦闘態勢にありますが……」


 この場所の手前にあった球状の空間。

 既にそこは、大型人造魔石機兵(ハイゴーレム)を始め、残る全ての人造魔石機兵(ハイゴーレム)達が配備されていた。

 侵入者を、駆逐する為に。


「いいね。で、新しい中型と小型は?」


「は、はっ! こちらに……後は入れるだけです」


 王達のすぐ横に、胸が開いた通常サイズの人造魔石機兵(ハイゴーレム)と、それをひと回り小さくしたものが2台並んでいた。


「ほらぁ! 問題なし! 超大型は一旦諦めるからさぁ……もう我慢の限界なんだよ」


 王の声が、一気に低くなる。

 こうなった王は止まらない。

 諦めたリナリアは、王に気付かれぬよう、僅かに肩を落とした。


「……かしこまりました。おい、準備しろ」


 そして、白衣の男達に、そう指示を出した。


「は、はい! では、処置室に……」


「あー、いいよいいよ。ここでやっちゃおう。あれでしょ? この子の入れ物」


「へ、陛下……!」


 既に王は、腰にぶら下がっていた剣のつかを握っていた。


「し、失礼ながら! ここではさすがに……生体を維持出来なくなる可能性が……!」


「大丈夫大丈夫。鍛えてるから。スパッとやるからさ。傷口は……あ、そこにある溶接用のバーナーで焼けばいいじゃん。そしたら止まるでしょ……出血は」


 ティアとアスナの背筋が凍る。

 先程聞いた王の発言。

 "余分なところは取る"。

 それが、何度も頭の中を駆け巡った。


「リナリア君、そっちの2人……下ろしちゃってよ」


 散々"おあずけ"をくらっていたロバート王は、もはや自制心の限界を迎えていた。

 いや、そもそも彼に自制心などなく、ただ状況に合わせて行動していただけに過ぎない。

 しかし、それすらも限界に達していた。

 何かを破壊したい、破滅させたい、泣き叫ばせたい、狂わせたい……そんな衝動が、止めどなく溢れ出していた。

 手はカタカタと震え、不自然に取り繕った笑顔が、より一層不気味さを醸し出す。

 いつも近くにおり、ロバートを敬愛しているリナリアでさえ、不快に感じる程に。

 彼女は、やはり王に気付かれぬよう、微かにため息をついた後、3人の少女を抱える人造魔石機兵(ハイゴーレム)へ近付いて行った。


「なッ!?」


 ティアとアスナは、何も言葉を交わすことなく、ほぼ同時に動いていた。


「ぬぐッ!?」


 もともと外れていた手枷を投げつけ、2人はひるんだリナリアの横を同時に駆け抜ける。


「しまっ……!」


「ほぇ……あだッ!?」


 そして、呆気にとられていたエミーナに、アスナの体当たりが炸裂した。


「ティア!」


「んりゃぁぁぁあッ!」


 ティアは走った。

 視界の先にあったのは、ガラス張りの貯水タンク。

 もちろん、ティアの力では割れない。

 ただ、触れれば話は別。

 それだけ近くならば、ガラス越しでも水を操ることが可能となる。


「もう少……しッ!?」


 そうなれば、まだチャンスはあった。


「ティ、ティア!」


「何ッ……これッ……!」


 しかし、そうはならなかった。


「ふぅ……残念でしたぁ」


 ティアとアスナの身体が、ふわふわと空中を漂う。

 手足をバタつかせようが、何をしようがどうにもならない。

 まるで、見えない何かが胴体に括り付けられ、そのまま吊るされているかのように。

 これがエミーナの空間魔法。

 彼女の魔法は、あまりにも強大だった。


「……エミーナ君、ブロンドの方を僕の前に」


 エミーナは、ちらりとリナリアを見る。

 そして、彼女が頷いたのを確認し、右手を前に突き出した。


「うッ!?」


「アスナッ……!」


 エミーナの右手が横に移動するのに合わせ、宙に浮いたアスナの身体がスライドしていく。

 因みに、あらゆる魔力を無効化するアスナの魔力耐性(スキル)が及ばないのは、彼女自身ではなく、エミーナが空間自体を操っているからに他ならない。

 アスナをではなく、彼女を包む空間を操っている以上、その力では抗えなかったのだ。


「や、やめてお願いッ! 私はどうなってもいいからッ……アスナだけはッ!」


 ティアの声に、耳を貸す者はいない。

 彼女が叫び続ける間も、エミーナの右手は淀みなく動き、リナリアは白衣の男達に淡々と指示を出し、王は鞘からつるぎを抜く。

 そうして、アスナは王の前に跪かされ、彼女の右手が意思とは関係なく、王の御前に差し出された。


「……さて、今から右手とお別れする訳だけど、何か言いたいことはあるかな?」


「あ、あなたはッ……!」


「狂ってる……かな? そうかもね。ただ、それは君らが決めた価値観だろう? 結局のところ、物の価値なんてものは個々に違うんだよ。僕にとっては最上だけれど、君らにとっては最低なだけさ。ああ、それと……さよならするのは右手だけじゃないよ? まぁ、君らは馬鹿じゃないようだし、もう理解していると思うけど一応ね。欲しいのは魔力の器であって、人間じゃあない。だから正確に言うと、人間という概念にお別れする準備は出来たかな? ……だね」


「お願いッ……やめてッ……!」


「んっふっふっふっ……大丈夫だよティア君。悲しむことはない。悲しむこともなくなるんだから。では、まず一つ。さぁ、いい声で……叫んでね?」


「やめてぇぇぇえッ!!」


 振り下ろされたつるぎ

 それが、肉を切り、骨を断ち、鮮血を撒き散らす――――


「んえッ!?」


「なッ!?」


 ――――筈だった。


「……あ?」


 目の前にいたアスナは消え、更にはティアもソフィアの姿もなくなっていた。

 振り下ろされたつるぎは床を叩き、その高い金属音の残響だけがそこに残った。


「ッ! き、貴様はッ……!?」


 王は、リナリアの声を聞いてようやく我に返った。

 そして、彼女の視線の先に身体を向ける。

 その先に、ティア達を庇うようにして立つ者がいた。


「……君は?」


 王は静かにそう問うた。

 怒りを無理やり抑え込むように。

 それを受け――――


「あなた方のような……」


 赤く長い髪をなびかせ、その少女もまた、静かにそう返す。

 そして――――


「……下衆に名乗る、名前はありません」


 シェリルは、そう言って彼らを睨みつけた。


体調不良の為、いつもより短めです(´・ω・`)

申し訳ございません_| ̄|○

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30.3.25より、書籍第2巻が発売中です。 宜しくお願い致しますm(_ _)m
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