第199話:大丈夫
書籍第1巻が本日発売となります。
これも全て……読んでくださっている皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。
これからも頑張って参りますので、今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m
「では、ズィード様はオーランド様に呼ばれてこちらに?」
会議室を後にした私達冒険者組は、全員でロード様のお部屋へと向かっていた。
あの後も少し議論が続きそうだったのだが、恐らく病み上がりの私をオーランド様が気遣ってくださったのだろう……続きはまた明日ということになり、とりあえずズィード様がロード様の様子を見てくださることとなったのだ。
「ああ、たまたま冒険者ギルドの本部にいた時にオーランドのおっさんから連絡があってな」
「んで、俺とブランスはズィードに呼ばれたって訳よ」
「そゆこと」
普段世界を移動し続けている方がたまたま……やはりズィード様はそういう星の下にお生まれのようだ。
「なるほど。では、ルカ様もオーランド様から?」
「ええ。ズィードさんと同じですね。ギリシア奪還に力を貸して欲しいと依頼されたのです」
「そういうことだ。本当はバーンも呼びたかったらしいが……あいつは今動けねぇ」
バーン様達は未だレアに潜入中ということか。
ご無事だとよいが……。
「バーンの心配はするだけ無駄だぜ? あいつに勝てる奴はまずいねぇよ。俺ですら……あいつの前には立ちたくない」
ズィード様がそこまで……。
「で、バーンの代わりにはならねぇが……手が空いてたこの馬鹿2人を、俺が仕方なく呼んだって訳だ」
「おい……ズィードくぅん?」
「すいませんねぇ! バーンじゃなくて!」
「ふふっ……やはり皆様仲がよろしいんですね」
「「「やめてくれ」」」
「なっはっはっ! お主らは本当に仲がいいな!」
「「「やめろっつってんだろおっさん!」」」
皆様素直じゃないらしい。
「あ、レヴィ様。わたくしはウッドガルドに連絡を取って参りますので一旦ここで。また明日にでも改めてご挨拶に伺いますね」
「ヴィヴィアン様……ありがとうございます。よろしくお願い致します」
「お任せください! 今日のお昼に母上達と喧嘩したので少々怖いのですが……頑張ります!」
「え?」
「では!」
ヴィヴィアン様は鼻息荒く、拳を握りしめて去っていった。
だ、大丈夫だろうか……。
「あー……そういや今日の昼間に……」
「む、ソロモン様は何かご存知なのですか?」
「あ、うん。レヴィちゃんが目を覚ました後、ジルさんとグラウディ、それからヴィヴィアンちゃんのお姉さんで、ウッドガルド魔戦団の総団長を務めてるヴィクトリアちゃんと会ったんだ。んで、話している最中に兵士が来てね。ヴィヴィアンちゃんと女王様が喧嘩してるからヴィクトリアちゃんに止めてくれって……」
「な、なるほど……」
やはり凄いお方のようだ。
肩書きもそうだが、保有している魔力も桁違いだったし、あの方が味方にいるというのは大変心強い。
それにしてもジルさん……か。
私が知らないところで何かあったらしい。
「あれだけ張り切るヴィヴィアンも珍しい……というより、儂は初めて見たわい」
「確かに。普段ずっと寝てますからね。アホみたいに」
ルカ様……本性が薄っすら出て……。
「あ、ここです」
ロード様の部屋の前に着いた瞬間、すぐに皆真剣な表情へと変わっていた。
恐らく、私に気を遣ってくださったのだろう。
「……私は大丈夫です。参りましょう」
私は深く息を吸った後、部屋の扉をノックする。
たが、先程と同様にやはり返事がない。
扉をゆっくりと開け、失礼を承知で中を覗くと、部屋の中には灯りが点いておらず、窓から差し込む月明かりだけがその空間を微かに照らしていた。
そのまま窓際にあるベッドに視線を移す。
その上で、ロード様は静かに寝息を立てていた。
「……お休みになられているようですね」
「ちょいと見るだけだ。俺とレヴィだけで入ろう」
私はズィード様に頷き、ロード様を起こさぬように近付いて枕元へと立った。
……いつも見ていた寝顔がすぐそこにある。
でも、なんだか凄く遠くにいるように……そう感じた。
凄く……辛い。
「ちと触るぜ」
「あ、はい……」
ズィード様の手がロード様の額に触れる。
目を閉じて集中し、何かを探っているようだ。
「…………駄目か。やっぱ記憶自体を弄られたらしいな……悪りぃ……俺の魔法じゃ……」
ズィード様の無力化魔法といえど、無力にする対象がなければ……。
恐らく、私の鎖でも結果は同じだろう。
「そう……ですか……いえ、ズィード様が謝られることはございません。きっと方法がある筈ですから。私は……諦めません」
そうだ。
弱気になってどうする。
絶対に諦めてなどやるものか。
ロード様は約束してくれた。
必ず戻ると。
だからきっと……。
「……ああ、そうだな。ったく……さっさと帰ってこいってんだよ。あんまり女を待たせんじゃねーぞ……ロード」
……ありがとうございます。ズィード様。
――――――――――――――――――――――
今日はそのまま解散することとなり、皆様がそれぞれのお部屋に戻られた後、私は1人ロード様のお部屋に残った。
ソロモン様は部屋の外で見張りをしてくれている。
お優しい方ばかりで、逆に申し訳なく思ってしまう。
「ん……ぐぅ……」
「ふふっ……」
ああ、いけないいけない。
つい笑ってしまった。
だって……あまりにいつも通りだったから。
なんだか安心して……。
「うぅん……」
「あ……」
ロード様は右利き。
寝ている時、ロード様は右手で頬をかくことがよくあった。
そして、今もまた……。
今はない右腕を無意識に動かし、かこうとする素振りが……凄く…………切ない……。
私を守る為に天へと伸ばしたその右腕。
それが消える瞬間は……今でもこの目に焼き付いている。
私の所為で……。
「…………レヴィ……」
「えっ!?」
あ……寝言……か……。
いや……でも、さっき話した時はレヴィ"さん"って……やっぱり記憶は残ってるんだ。
きっと……きっと……!
だ、駄目だ……泣くな私!
次に泣くのはロード様が――――
「ふぅー……」
……よし。
これくらい……私がロード様にしてしまったことに比べれば全然大したことない。
大丈夫……頑張れる。
「あ、そうだ……」
現在部屋の片隅には、壊れてしまったロード様の鎧や、剣に戻ったイアリスの他に、ソロモン様が運んでくださったバルムンク様やトライデント様、折れてしまったアスカロン様がいる。
手帳に戻すくらいなら私にも出来る筈だ。
「確かここに……あった」
ベッド脇にある棚の引き出しに、その黒革の手帳はしっかりと収められていた。
手に取ると……やはり重い。
色々な想いがこの手帳に……。
「……え?」
ページが……捲れない?
これはいったい……。
「ッ!?」
その時、不意に部屋の扉が叩かれ、扉が少しずつ開いていく。
そこには――――
「ジ、ジークさ……!?」
「しーっ……!」
「あっ……」
突然現れたジーク様に手招きされ、私は手帳を持ったまま部屋の外へと出た。
「ジーク様……!」
「おう、久しぶり……って程でもねぇか」
まだ別れてからそんなに日も経っていないのだが、色々なことがあった所為か……随分と久しぶりにお会いした気がする。
……それにしても、ジーク様が服を着ている姿を初めて見た。
サイズが合っていないのだろう……なんだか今にも破けてしまいそうだ。
あ、いや……今はそれより……。
「会議室にいらっしゃらなかったので……もうケルトから離れられたのかと……」
「フッ……戦えない俺がいても意味ねぇからな」
あ……。
「やっぱり……駄目だったのか?」
ソロモン様の問い掛けに、ジーク様は悲しい表情を浮かべながら頷く。
その辺りの話は既にソロモン様達から聞いており、私も大体のことは理解していた。
「フリードリッヒの奴……てめぇは悪かねぇってのに謝りっぱなしでな。逆にこっちが参っちまうよ」
「そうでしたか……」
「……俺は戦が始まってもケルトに残る。まぁ、世話になってる村の連中もいるしな。俺がいる限りケルトに手は出させねぇ……もちろん小僧にもな」
「ありがとうございます……ジーク様」
「気にすんな。で、小僧はどうだ?」
「……私のことも覚えていらっしゃらないようです」
「そうか……なんとか元に戻す方法がありゃいいんだがな……」
「今、皆様が色々と動いてくださっています。だからきっと……」
そう……きっと大丈夫。
私はそれを信じるだけだ。
「ああ、そうだな……小僧ならきっと帰ってくる。だから、俺達はあいつの帰る場所を守ろう」
「はい……!」
ロード様は私が守る。
そして、いつか必ず……。
どんなに困難な道だろうが関係ない。
それが……彼を愛するということだから。
イラストや特典情報など、詳しくは活動報告をご覧ください(´∀`)
次回は区切りの200話目となります。




