第7話 恋愛相談
7、恋愛相談
つい先日のメグさんとの話し合いの末、彼女を好きでいても良いと許しをもらえた為、私は今幸せの絶頂にいる。
両思いで付き合っているという訳ではなく、今はまだ私の片思いなのだが…。これからは思う存分、メグさんに"好き"だと伝えることが出来るのだ。これ程嬉しいことは無いだろう。
今まで我慢してきたものが解放され、体が軽く自由になった気がした。
ニヤニヤと先日の事に想いを馳せていると、「姉ちゃん…キモいよ…。」と上から罵倒する声が落ちてきた。一瞬ムッとするが、今の私は仏様のように広い心を持っているため、例え罵倒されようと痛くも痒くもなかった。
「まぁまぁ、優太君や。一旦席に着きなさいな。」と、仏様スマイルでソファに座るよう催促する。渋々とソファに腰を下ろし、ため息を吐かれる。
「はあ…。まあ何でも良いけどさぁ。急に呼び出された訳を教えてよ。」
「よくぞ聞いてくれた!弟よ!」自分でも分かるほどのハイテンションで話し始めるとすかさず「ちょっとストップ!」と間に入られる。
話の腰を折られ不貞腐れる私を横目に深くため息を付く優太。
「ちゃんと話は聞くから、そのテンションはやめて。」と、物凄く大人な対応をされ、(あらあら、優太も大人になったねぇ~。)と感慨深い物を感じた。
「この前、気になってる人がいるって話したでしょ?」
「あぁ、薬局で出会った物凄い美人さんのこと?それで?」
「うん、その人…まあ、メグさんって呼んでるんだけどね…。」
「もう名前で呼ぶ程仲良くなってんだ!凄いよ姉ちゃん!」
へへっと得意気に笑って見せる。確かに、(自称)奥手で有名な私が、この短期間で名前で呼び合う事など、今までを知っている弟からしたら奇跡でも起こったのかと思うかもしれない。
「で?そのメグさんがどうs「お前はメグさんって呼ぶな!」優太の声を遮り、胸ぐらを掴み牽制する。私の嫉妬深さに弟は一瞬目を見張る。流石にやり過ぎた…と思い、反省する。
「まあ、姉ちゃんがその人の事本当に大切なのは分かった…。でもさ、胸ぐら掴むのはやめよ?ほら、見てよ。丸首だったTシャツがVネックになってるから。」
「………ごめんなさい。」今度新品のTシャツを買ってあげる約束をし、許してもらった。
「で?姉ちゃんが嫉妬に狂う程大大大好きなお姉さんがどうしたって?」
先程お気に入りのTシャツを伸ばされた事を根に持っているのか、嫌みったらしく聞いてくる。これは、当分根に持つな…と思い、冷蔵庫に大切に保管しておいた高級プリンを生け贄に捧げると、直ぐに機嫌が治った。
「うっま!このプリンマジでうまーい!」
「はぁ…。私のプリンが…。ちょっと!もっと大切に食べなさいよ!」一瞬にして無くなったプリンの容器を震える手で掴む。
「あ!それで?何の話してたんだっけ?」と、満足そうな顔をして聞いてくる。
「あー…。えっと、告白したの。メグさんに。」
メグさんとの甘い一時を思い出してしまい、頬を紅く染める。それを聞いて今だかつて無いほどの驚愕を見せた優太は、何を勘違いしたのか「もしかして、もう付き合ってんの!?早すぎない!?神かよ!」と興奮気味に捲し立てる。
「つ、付き合ってないから!まだ…。」
「まだ…。ってことは、脈ありってことで良いのかな?」ニヤニヤと茶化すように私の様子を伺う優太に腹が立ったので、ぷにっと右頬をつねり反撃する。痛っ!と大袈裟に叫ぶ弟に深く溜め息をついた。
「それは分からないけど…。メグさんが、恋愛感情なのかが分からないって言うからさ。今は私の事を好きかなのか分からなくても良いから、好きでいても良いですか?て聞いたら…。頷いてくれたの。」
「いや、もうそれは脈ありでしょ?普通、少しでも嫌だったら断るって。それをしないってことは、少しは付き合っても良いかなーって思ってるんじゃない?」
「やっぱりそう思う?私にも可能性あるよね!?」自分だけでは確証を得なかったが、俯瞰的に考えれる弟が言うならば、そういうことに違いないと歓喜した。
「それよりさ、いつの間にそんなに仲良くなってたの?ちょっと前までは、声すら掛けれなくてグダグダしてたのに…。」と、顎に手を添えて何かを考えるような素振りをする。
「たまたま、仕事帰りに公園の横を通りすぎようとしてたら、メグさんがベンチに座ってて声を掛けたんだけど…。何だか悲しそうな顔をしてたんだよね…。」
メグさんは聞いて欲しく無さそうに、はぐらかしたけれど、自分で解決できたのだろうか?。理由を全く知らない私は、どうすることも出来ない虚無感に苛まれた。
「それで、一人にしたくなかったから宅飲みに誘ったの。そしたら物凄く趣味が合って意気投合しちゃったんだよ!それから仲良くなって、一緒に映画に行ったりして…。」
「ふーん。まあ、良かったね。あ!そうだ、その人の写真とか無いの?どんな人か見てみたいんだけど。」
そう言われて初めて、メグさんの写真を1つも持っていないことに気づく。仲良くなってからなら、幾らでも写真を撮る口実が出来たはずだ。それすら考える余裕が無くなる程、彼女の事に無我夢中だったのかもしれない。次に会えた時、絶対に二人で写真を撮ろうと決心した。
「ごめん、写真無いんだ…。まあ、あったとしても見せないけどね!」と、悪戯に笑って見せた。私のいけすかない態度にムッとした弟は、少しの間の後何かを閃いた様で、ニタリと此方に笑みを向ける。物凄く嫌な汗が背中を伝う。
「じゃあ、来週の姉ちゃんの誕生日兼クリスマス会にその人誘ってきなよ!姉ちゃんは、いつもの寂しいクリスマスを好きな人と過ごせる。俺は、姉ちゃんの好きな人に会うことが出来る。これって物凄くwin-winだね、姉ちゃん!」意地悪く笑いながらそう言う弟だが、確かにそれも一理あるなと思い、一か八かメグさんを誘ってみることにした。




