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お姉さんと私  作者: ゆりかも
第1章 お姉さんと私
10/25

第10話 姉ちゃんに、俺の気持ちなんか分からないよ

片付けも終わり、メグさんを自宅まで送り届けた私は、実家へと戻ってきた。リビングへと足を運ぶと、父さんと母さんが二人仲良く紅茶を淹れて寛いでいた。そこに優太の姿はおらず、テーブルの上には優太の為に取っておいた残り物のおかずが、まだ残っていた。


「母さん、優太は?」

「さっき、ご飯を持っていってあげたんだけど返事がなくてね?寝てるんじゃない?」


この様子だと、あれから部屋に籠りきり出てきていないらしい。流石に心配になり、ご飯を持っていく口実で様子を見に行くことにした。


優太の部屋に着き、コンコンと扉をノックする。

「優太?ご飯持ってきたけど食べる?」そう言うも、返事は帰って来なかった。

今まで何度も喧嘩をしたことはあるけれど、ここまで完璧に無視される事は無かった為、少しの焦りを感じた。それもそのはず、どうして優太があそこまで不機嫌だったのか理由が1ミリも分からないからだ。


このまま仲違いしたままなんて絶対に嫌だと思い、「入るからね。」と言い、そっと部屋に入った。

そこには、布団にうずくまる優太の姿があった。ベッドまで近づき、腰を下ろすと、優太はビクッと体を跳ねさせた。

(やっぱり起きてたか。)

昔からふて腐れると、寝たフリを決め込む事が度々あったのだ。

ふぅ…。と溜め息をつき、寝たフリをする優太に話しかける。


「ねぇ…。起きてるんでしょ?顔見せて?」返事がないので私は、一方的に喋ることにした。


「優太が何で怒ってるのか分からない…。でも、多分姉ちゃんが悪いんだよね?ごめんね…こんな駄目な姉ちゃんで。優太は…私にとって一番の理解者だと思ってたんだけど、私は優太の事を何にも理解出来てなかったんだね。本当にごめん。でもね、優太も知ってる通り私、優太みたいに器用じゃないから言ってくれないと分からないよ…。」


暫く二人の間には、沈黙が流れた。全く返事が返ってこず、少しばかり寂しさを残し、部屋を後にすることにした。


「優太…。姉ちゃん今日は帰るからね。話したくなったら優太の考えてること話して欲しいな…。」私は、部屋から出ようとドアノブに手を掛ける。


その時「待って!姉ちゃん!」と、慌てるようにして弟が声をあげ、そちらに振り向く。布団から顔をだし、上半身を起こしながら此方に訴えてくる瞳から、一筋の涙が頬をつたい流れて行くのが見えた。


「うぅっ…。姉ちゃんっ…ごめん。」涙が溢れないよう必死に堪えるが、堰を切る様に溢れ出したそれは、止まることはなかった。


私は、泣きながら謝り続ける弟の側に寄り、ぎゅっと肩を抱き寄せ、頭を優しく撫でた。

「姉ちゃんが話聞いたげるからもう大丈夫だよ。今までよく頑張ったね。」と、優しく声掛けた。


暫くし、落ち着きを取り戻した優太は私の前に正座をし、何かを決心したかのように此方を見た。


「じ、実は…。俺も恵美さんに一目惚れしちゃったんだ…。」と、少し顔を赤らめそう言う弟に、(は?何言ってんの?)と言うのを一旦飲み込み、「……どう言うこと?」と、静かに投げ掛けた。


***

※優太視点


時は遡り、姉ちゃんと恵美さんが家に来る少し前。両親と俺は姉達が帰ってくるのを今か今かと、クラッカー片手に待ちわびていた。

そして、ガチャっと扉が開いたと同時にクラッカーを鳴らした。驚いた姉の顔を見ようと目線を上げたとき、全身に凄まじい衝撃が走り、ストンと恋に落ちる音が聞こえた。あろうことか、姉の横で目を真ん丸にして驚きを見せていた恵美さんに一目惚れしてしまったのだ。


しかし、俺の淡い恋心もすぐさま失恋へと変わった。あの二人には、何か踏み入れられない領域のようなものを感じた。絆のような愛情のような…言い表せないほどの何かで二人は繋がっている気がした。


はたからみたら、もう付き合ってるじゃんと言うような二人の甘い雰囲気に少しの苛立ちを覚えた。あの時姉ちゃんに突っ掛かったのも、失恋した腹いせに少しからかってやろうとしただけだった。そのはずなのだが、口から出た刺を含む言葉は少しでは済まされなかった。


ぽんぽんと俺の頭を撫でながら、悲しそうに此方を見つめられると、申し訳なさや嫉妬、今まで感じたことの無い複雑な感情で心は掻き乱され咄嗟に手を振り払っていた。


姉ちゃんと同じ人を好きになってしまったと、一人ベッドの中うちひしがれる。しかし考えれば考える程、恵美さんの事を幸せそうに話す姉ちゃんの顔が浮かび、もうどうしようもないのだと示唆してくる。俺は、姉ちゃんの幸せを奪いたくは無かった。


***


事の本末を聞き終えた私は、深く溜め息をついた。

「あんたとは気が合うなとは思ってたんだけど、好きな人まで被るとはね…。」


「まさか俺まで一目惚れするなんて思わなかったよ。メグさんって罪な女だよなー。」ベッドに横になりながらそう言う優太の胸ぐらを掴み、無理やり起こす。「メグさんに罪なんて1つも無いから。惚れた方が悪いのよ?次にまた同じ事言ったらどうなるか分かるよね…?」と、睨み付ける。

「いや、別に比喩みたいな事じゃんか~!本音じゃ無いからさ!怒らないでよ~。」少し焦りを見せた後、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。


「ち、因みに…もう一度同じ事を言ったらどうなるの?」と、おずおず聞いてくる優太に、不適な笑みを向ける。

「そうだなぁ…。優太がベッド下に大切に隠してる物を、全部リビングの机の上に綺麗に整頓させて置いておくわ。勿論名前を記入しておいてあげるから、捨てられることは無さそうね!」

「それだけは止めてくれ姉ちゃん!そんなことしたら、俺の性癖が両親にバレて…。息子は、こういうのが好きなのか~っていう目を向けられる事になるじゃないか!そんなの気まずすぎて耐えられない!」ガタガタと震えだす弟に冷たい視線を向け、手を離す。


「あんたがメグさんの事を好きなのは、別に気にしてない。だって、メグさんがそれだけ魅力的という事だから。でもね、メグさんに指一本でも触れてみなさい?そしたらあんたの夜のおかずを公開処刑してやるんだから!」

「ちょっと待って!!どんどん禁止事項増やすの止めてくれよ!」


姉に喧嘩を売るのは金輪際やめようと、心に誓う優太なのであった。




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