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log84.ギガマグナム

 振り下ろされた斧に合わせるように、セードーが足を振り上げる。

 それと同時に闇の波動が肥大化し、まるで斧か何かのように形を変えてゆく。


「でぇぇぇいぃぃぃぃ!!」


 エルダーの斧と闇の波動がぶつかり合い、甲高い音を響かせる。

 拮抗は一瞬。エルダーの斧の重さに負けるように、セードーの闇の波動が解け、さらに彼が全身に纏っていた波動も消滅してしまう。


「っ! 時間切れか……!」


 地面に迫る斧を跳んで回避し、セードーはエルダーから距離を取る。

 そのセードーをカバーすべく、リュージ達が前に出た。


「いくぞオラァ! 人の嫁に手を出した報いをうけさせてやるぁ!!」

「いかがわしい言い方をするなぁぁぁぁぁぁ!!」


 いらんこと抜かすリュージに叫びながら、ソフィアはレイピアを大きく振るう。

 そしてレイピアの刀身に風を纏い、勢いよく突き出した。


「トルネード・ストライクッ!!」


 極小の竜巻がレイピアの突きと共に放たれ、エルダーの足を斬り刻む。

 それに合わせて、リュージも大剣を振り上げた。


「だぁぁぁい!! かぁぁぁざぁぁぁんんんん!!!!」


 リュージの咆哮に合わせ緋色の大剣が火を噴き、爆炎をその刀身に纏う。

 リュージは爆炎の大剣を勢いよくエルダーへと叩きつけた。


「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 叩きつけられた大剣が炸裂し、爆炎を撒き散らす。

 エルダーが悲鳴を上げ、痛みと怒りにまかせて巨斧を振り下ろす。

 辺りに寄ってきたプレイヤーたちが、巨斧の一撃に逃げ惑い始める。

 エルダーはもう一度斧を振り上げ、逃げ惑うプレイヤーたちを真っ二つにしようとする……。

 その時、エルダーの瞳に一発の弾丸が叩き込まれる。


「ビンゴ」


 小さく呟き、ホークアイはボルトを引く。

 薬莢がはじき出され、小さな音を立てて地面に落ちる。

 新たな弾丸が銃に装填される感触を手で確認しつつ、ホークアイはエルダーを見上げる。


「……だめか。一発が軽いみたいだな」

「やぁぁぁぁ!!」


 ホークアイの撃ちこんだ弾丸は、確かにエルダーの瞳へと叩き込まれ、一瞬エルダーの動きを止めることに成功した。その隙を突き、肩に飛び乗ったキキョウがエルダーを滅多打ちにしている。

 だが、すぐにエルダーは動きだし、手にした巨斧を地面へと振り下ろし始める、弾丸を撃ち込まれたはずの瞳は、陥没することなく傷一つすらなかった。

 この世界における銃の威力は、銃のステータスではなく弾丸の性能で決まる。弾丸の大きさや、使用する炸薬の種類などで、銃によるダメージや攻撃属性が決定されるのである。

 今、ホークアイが手にしているのはスナイパーライフルに分類される銃であり、弾丸は細長く長距離狙撃に向く形になっている。このゲームにおいてこの種の弾丸は、貫通力はあるが敵に与えられるダメージは低いことが多い。早い話が対装甲用武器としての意味合いが強く、モンスターに対して大ダメージを与えるのに向かないのだ。

 そんなホークアイに足元に近づき、サンシターがいつぞやのクエストで取り出した爆弾試験管を取り出した。


「ホークアイどの。これを使ってほしいでありますよ」

「おいおい。そう言うのは自分で使うべきだろう?」

「いや、自分は戦うのは……ヒィ!」


 サンシターに向けてゴブリンオーガが武器を振り下ろし、中華鍋が甲高い金属音を立てる。

 サンシターはその音におびえ、思わず頭を抱える。

 ゴブリンオーガはそんなサンシターの反応に気を良くしたように笑い、もう一度武器を振り上げる。

 その武器が振り下ろされる前に、ホークアイが手にしたライフルで顔面をぶち抜かれてしまった。

 排莢しながら、ホークアイは呆れたようにサンシターを見下ろした。


「……ビビりすぎだろう。今までどうやってレベル上げてきたんだよ」

「じ、自分、サポートプレイヤーでありますから、料理とかで……」

「そりゃ、すげぇな」


 思わず感嘆のため息を突きながら、ホークアイはスリングでライフルを背負う。


「さて。こいつが通用しないとなると……」


 小さく呟きながら、懐に手を突っ込み一丁の拳銃を取り出した。


「こいつの出番かねぇ」

「っ!?」


 ホークアイの懐から取り出された拳銃を見て、サンシターが目を剥く。

 それは、拳銃というにはあまりにも大きすぎるのだ。形だけを見れば、一般的なリボルバー拳銃だ。だが、普通のリボルバー拳銃と比べると二倍か三倍程度に大きさが違う。

 当然、銃の中心部に据えられた回転式弾倉の大きさも、その中に収められている弾丸の大きさも普通のリボルバー拳銃の比ではない。

 ホークアイは銃を構えて笑いながら、その名を呟いた。


「ライジングブルー・ギガマグナム。いわゆる、奥の手って奴だな」

「ら、らいじんぐぶるー……!?」

「ギガマグナムって……アホだ。アホがいるぞー」


 エルダーに一太刀浴びせながら、リュージはぼそりと呟いた。

 それを耳ざとく聞きつけたホークアイが、心外そうな表情で言葉を返す。


「おいおい。アホってのは心外だな? この世界でも最強の、ギガマグナム弾が使える数少ない拳銃だぜ?」

「だってお前、それ一丁使うのに前衛の戦士並みのSTRいるじゃねぇか。普通の銃使いなら、STRよりDEXに突っ込むべきじゃね?」

「まあ、それは否定しないけどね」


 リュージの言葉にホークアイは肩をすくめる。

 リュージの言うとおり、遠距離攻撃型のガンナーは近接攻撃の威力の上がるSTRより、回避や器用さに関係のあるDEXを上げた方が生存率も撃破効率も上がる。

 それにギガマグナム弾そのものを利用するのにはそこまでSTRは必要ない。もっと言えばわざわざリボルバー拳銃にこだわる必要もない。ショットガンタイプの銃でも使用可能であり、こちらを利用すればショットガンを使用するのに必要なSTRで十分にギガマグナム弾を利用できる。

 つまりわざわざリボルバー拳銃でギガマグナム弾を使用するのは、趣味の領域なのである。

 だが、ホークアイは笑いながらライジングブルーを、エルダーへと向ける。


「けど、拳銃はやっぱリボルバーなのさ。俺も男の子だからね」

「それはわからんでもないなぁ」


 降り注ぐ一撃をパリィするリュージ。

 エルダーはさらなる一撃を撃ちこまんと巨斧を振り上げる。


「―――」


 ホークアイは息を止め、狙いを澄まし、引き金を引く。

 拳銃の発砲音とは思えない爆音が響き渡り、次の瞬間エルダーの肩が大きく抉れ、頭上に浮かぶHPが目に見えて減る。

 それを見て、セードーが驚きの声を上げた。


「すごいな、今のは。鷹の目がやったのか?」

「ああ。威力だけなら、俺の手持ちで一番強力なんだが……」


 ホークアイは小さく顔をしかめ、銃を見る。


「やっぱり反動を殺しきれないな。狙った場所から外れちまった」

「格好つけて片手で撃つからじゃないのか……?」


 痛みに暴れるエルダーの一撃を回避しながらつぶやくソフィアに、ホークアイはまた肩をすくめてみせる。


「拳銃なら、片手撃ちだろう普通?」

「いや、知らん。リュージ、お前はそう言うのわかるのか?」

「ロマンは理解するなー」


 ソフィアの言葉にリュージはそう返しながら、エルダーの背後へと回りこむ。


「まあ、とりあえず削りは入ってるんだ。引き続き頼むぜ!」

「任されようか」


 ホークアイはそう言いながら、また片手で銃を構える。

 セードーは降り注ぐ斧の一撃を闇の波動で受け止めながら、エルダーのHPを見やる。


「残りHP……半分程度か」


 ホークアイの一撃はエルダーのHPをしっかりと削りはしたが、チープフィーリングの効果によりいくらか回復されてしまっている。抉れた肉もしっかり塞がり、動くのに不自由しているようには見えない。

 飛び上がり、足刀蹴りで一撃与えながら、セードーはアラーキーへと呼びかける。


「先生。こちらはHPを半分ほど削りました。そちらは?」

『こっちも似たような感じだなぁ。シャットアウトのせいでうまく通らん攻撃があるせいで』


 城門付近のエルダーと戦うアラーキーの声は、芳しいものではなかった。

 ちらりとそちらの方へと視線を向けると、エルダーが巨斧を振り回す姿が見える。

 周囲には何人か人影が飛び上がり、攻撃を加えている姿が見える。遠距離攻撃係だろうか。


「先ほどのように、動きを止めればよいのでは?」

『それが、シャットアウトの後隙が減ってる上に、全体的にステータスも上がってるようでな。なかなかダメージが通らないんだわ』

「そうですか……」


 セードーはクルソルを取り出し、時間を確認する。イベントを開始してから、三十分は経過していた。


「あと三十分……倒すのは、いけますかね」

『いくしかねぇだろうさ。このまま帰れん』

「ですね」


 セードーは小さく頷き、気合を入れ直す。


「では、また連絡します」

『おう。程よい感じになったら、こっちからも連絡するわ。しっかりな』

「ええ」


 いったんチャットから意識を放し、エルダーへと向き直る。

 キキョウがその腹を打ち、ホークアイのギガマグナムが右目に当たり、飛び上がったソフィアに左肩を斬り裂かれ、さらにリュージに腹を焼き裂かれている。だが、すぐにHPと共に損傷した部位が回復していってしまう。


「回復する輩を倒す場合、核を潰すか許容範囲以上のダメージを与えるのが常道、だったか……」


 学校の数少ない友人の言葉を思い出しながら、セードーは闇衣を纏い直す。

 そして飛び上がり、後ろ回し足刀蹴りをエルダーの顔面へと叩き込んだ。


「せあぁぁぁぁぁぁ!!」


 鈍い音とともにエルダーの体が仰け反り、体が傾ぐ。

 着地したセードーは一歩下がり、拳を握りしめた。


「さて……ここまで連れてきてくれたキキョウの頑張りに、応えなければな」


 エルダーの背後に回り込み、攻撃を加えようとするキキョウの姿を視界に収めながら、セードーは上を睨みつける。

 エルダーが怒り、巨斧を振り上げる。

 セードーはそれを迎え撃つように、正拳突きを振り上げた。




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