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log65.攻略条件

 迫りくるECが生み出す竜巻はどうやら見た目通りの効果を持たぬらしく、その体が近づくにつれミツキは己が強く引き寄せられる感覚を味わう。おそらく竜巻の風がミツキの体を吸い込んでいるのだろう。


「クッ……!」


 アクアボールを形成しながら攻撃のチャンスを窺うが、強烈な引力に加えその身を守る様にECの周りを回る竜巻のせいでアクアボールを打ち付ける瞬間がない。

 まごついている間にECはミツキの体をその射程圏内に収める。


「ッシャラァァァァ!!」


 そのミツキを救うべく駆け出したのはウォルフだ。

 体に風を纏いながら突進してゆくウォルフは、ECの引力の影響を欠片も受けていない。

 彼が使用しているスキルは“エアロボディ”。モンスターや魔法によって発生した風による物理影響を無効化するというものだ。ダンジョンの中には強風により行動が制限されるものも存在するため、それを無視するためにも使える。

 エアロボディにより、ECの竜巻さえ無視したウォルフはあっという間にECの懐へと潜りこむ。

 そして大地を踏みしめ、伸び上がる様に体と拳を突き上げる。


「シャラァァァァ!!」


 ウォルフの拳が、ECの体で甲高い打撃音を響かせる。

 瞬間、ECの体が停止しその色が変化していく。


「やはりダメージは通らんか……」

「ウォルフさん!」

「おうさぁー!」


 キキョウの忠告を受け、ウォルフは振り返って猛ダッシュでECから離れる。

 ウォルフが十分な距離を取る頃には、ECの体が黄色へと変化を終える。


「黄色ぉ? なんだ? 何属性だよ」

「えーっと、黄色だと……」


 一行がECの変化に予測を立て終えるより早く、EC自らその色の正体を明かす。

 音もなく浮かび上がったECは、勢いよくその体を地面へと叩きつけたのだ。

 菱形の頂点と四つの水晶体が地面へと触れるのと同時に、激しく大地が揺れ動いた。


「きゃぁぁぁぁぁ!?」

「地震……! 〈地〉属性か!」


 サンの可愛らしい悲鳴が響き渡る中、ECは再び飛び上がり再び地面へと体を叩きつける。

 縦に揺れ動く地面に叩きつけられそうになりながらも、セードーは何とか耐えて両足に力を込める。


「大地が揺れるのであれば跳べばいい……! 外法式無銘空手の空間殺法を見せてやる!」


 叫ぶのと同時にセードーの体が勢いよく飛び上がる。

 同時に地面が揺れ動くが、空中にその振動の影響は全くない。

 そのままセードーは空中歩法(エアキック)でECへと接近してゆく。


「真空、飛び膝蹴りぃぃぃ!!」


 宙を蹴る反動、そして落下する勢いも加えたセードーの膝蹴りが、ECを構成する多面体の一面を強かに打ち据える。

 しかし響き渡るのはむなしい打撃音ばかり。

 セードーが宙返りを打ち地面に着地する頃にはECの体は青色へと変化を終えていた。


「ECの本体を攻撃するのが、色の変化を促すスイッチと見てよさそうね」

「けど、無色透明には変わんねーんだな……ちくしょう」


 あられもない悲鳴を上げたのが恥ずかしいのか、顔を赤くしたサンは苛立たしげに毒づきながら構える。

 青色に変化したECは正面に立つキキョウとウォルフに向けて四つの水晶体を差し向ける。

 十字を描くように配置された水晶体、その交差点に蒼い輝きが出現しそこから無数の氷柱が射出され始めた。


「ひぃぃぃ!? 当たったらかなんわぁ!!」

「ウォルフさん、私の後ろに!」


 キキョウは素早く前に出て、棍を回転させて氷柱を防御する。

 旋風衝棍(ショックウェイブ)を纏ったキキョウの芯棍が、氷柱を弾き砕く。

 華麗な手際であったが、幾度も氷柱を防ぐたび芯棍がささくれ、その中心に罅のようなものが現れ始める。


「うぅ……! すごい勢いで耐久度が……!」

「やらすかぁい!! 真空刃(ソニックブレード)ぉ!!」


 素早く叫んだウォルフは、アッパーカットを放つ要領で風の刃を飛ばす。

 弧を描きながら飛翔する風の刃は水晶体にかすりながらECの体へと突き進むが、惜しくもヒットせずに空高く消えていった。


「ノーコン! 何やってんだ!!」

「しゃーないやん! ワイはキャッチボール苦手なんやぁ!!」


 ECの体色を変化させるべく駆け抜けるサンの罵倒にウォルフは次撃を準備しつつ叫び返す。

 だが、次は必要なかった。

 何故ならばECは一瞬びくりと体を震わせると、そのまま力なく崩れ落ちたのだ。


「ん?」

「を?」


 ECはそのまま水晶体を、気絶した時に現れるひよこのごとく頭上で回転させ始めた。


「なんだ? 今、ウォルフの一撃は外れたはずだが……」


 そのことに驚きを隠せないセードー。

 ウォルフが放った真空刃(ソニックブレード)は、ECの体には当たらずにそのまま空に消えたはずだ。

 ECの変化が訪れるような行動はなかったはずであった。


「なんか知らんが喰らいやがれぇぇぇぇぇ!!」


 しかし細かいことを考えないサンの一撃により思考は中断させられる。

 今までの虚しい音と違い、豪快な破砕音とともに吹き飛ばされたECはピンボールのように壁にぶつかり跳ねかえる。

 自慢の貼山靠が決まりご満悦のサンがガッツポーズと共に軽快に叫んだ。


「ひゃっはぁー! 見たかよ、あたしの一撃を!」

「自分飛ばし過ぎじゃァ!」

「きゃぁぁぁ!?」


 ボスの巨体すら吹き飛ばす見事な一撃であったが、味方からは不評であった。

 何しろ吹き飛ばされたECの体が、凄まじい勢いで降ってきたのだ。下敷きにされればダメージになるだろう。最悪即死もあり得る。


「ずいぶん飛びましたな」

「そうねぇ。中身、案外軽いのかもしれないわね」


 サンの攻撃からある程度飛んでくる位置を予測し安全な場所に退避していたセードーとミツキは呑気にECの観察を続ける。

 吹き飛ばされたECは、ぶるぶる震えながら起き上り、狂ったように水晶体を振り回しながらドームの中を飛び回る。

 その様子を見ながら、セードーは首を傾げて先ほどの疑問を口にした。


「しかし……何故いきなり無色透明になったのでしょうな?」

「いきなりだったわねぇ。何かカギになる行動があったのでしょうけれど……」


 制止したECは再びその体を赤くし、怒りを覚えたかのように炎を迸らせながらサンへと迫っていった。


「ぎゃぁぁぁぁ!?」

「あらちょうどいい。それっ!!」


 ミツキはECの属性が〈火〉へと変化したのを見て、アクアボールを投げつける。

 水球は狙い違わずECの体を打ち据えるが、軽い打撃音が響き渡るばかりだ。

 ECは一瞬の制止ののち、体の色を青へと変化させた。


「……あら? 透明にならないわね?」

「反属性が鍵……という仮定が間違っていたのかもしれませんな」


 水晶を十字に配置し、ECはミツキの方へと体を向ける。


「そのようねぇ。だったら何が鍵かしら……アクアウォール!」


 ミツキは一つ呟き、目の前に水の壁を生み出す。

 出現した壁は滝のように下に向けて激しい流れを生み出す。

 水の流れは飛んできた氷柱を受け止め、そのまま下へと叩きつけてゆく。

 ミツキがECをひきつけている隙に、セードーはその側面へと回り込む。


「体を叩けば色が変わる……では色を抜くにはどうするか……」


 セードーは呟きながら、拳を腰溜めに引く。


「……考えても始まらんか。まずは攻撃を止める!」


 そして狙いを定め、渾身の一撃で拳を振るう。


衝撃砲(インパクトカノン)!!」


 拳の先から放たれた衝撃波は尾を引きながらまっすぐに突進み、ミツキに攻撃を繰り返すECの水晶体に叩きつけられる。

 コォーンという涼やかな音を立て、四つの水晶体は衝撃波にかきまぜられて互いにぶつかり合う。

 ECが放っていた氷柱は同時に消滅し、そしてECは透明へと変じそのまま地面へと落着した。


「………これは」

「ひょっとして?」


 三度目の透明変化に、セードーは拳を突き込んだまま小首を傾げ、キキョウは瞳を輝かせながらECに向かって駆け出す。


「やぁっ!」


 キキョウは棍を振るいECの体を叩く。

 先ほどのサンの一撃ほどではないが、ECは驚いたように飛び上がりそして水晶を振り回し始める。

 しばらくしてその混乱が落ち着き、ECはその体の色を緑色へと変化させた。


「たぁー!!」


 その変化を待っていたキキョウは、勢いよく飛び上がり竜巻を発生させるべく回転を始めていた水晶に棍を叩きつけた。

 再び響き渡る涼やかな音とともに、ECの体が透明へと変化する。

 着地したキキョウは、もはや確信へと変わった疑問を大きな声で口にした。


「やっぱり! 透明へと変化させるにはこっちの水晶を叩けばいいんですね!」

「なるほどぉ。さっきの私の一撃は回っていた水晶に偶然当たって……」

「ワイの一撃は、水晶にかすってたなそう言えば……!」


 攻撃の隙を逃さず、駆け出すウォルフ。

 セードーはECを挟んで反対側に回り込み、拳を握りこんだ。


「わかってみれば、単純な話だ……こいつに攻撃が通じそうな箇所は、本体か水晶かの二択だったな……チェイリャァァァァァ!!」

「種が割れたらあとは攻撃しまくるだけやな……シャラァァァァァ!!」


 鋭い気勢と共に放たれた二人の拳はECの体を挟み込み、その体に余すことなく衝撃を叩きつける。

 逃げ場なく攻撃を喰らったECは勢いよく飛び上がり、水晶体を振り回しながら逃げ惑う。

 逃げる先を見据え、ミツキはアクアボールを生み出す。


「じゃあ、私が水晶体を狙うわね? 場所が高いし、攻撃すればいいだけなら火力が低い私がやるべきでしょうし……」


 キキョウが棍を、サンが拳を構え、逃げるECを睨みつける。


「じゃあ、攻撃はみんなで一緒にやりましょう! ダメージが入るなら、その方が早いです!」

「止めはあたしが刺すからな! いいよな!」


 鼻息荒いサンの様子に苦笑しながら、セードーとウォルフも拳を握りしめる。


「気ぃの早いやっちゃなぁ。まだ終わりと決まったわっけやないやろうに」

「だが突破口は見えた。あとは、駆け抜けるだけだ」


 混乱が収まり、己の体を変色させるEC。

 黄色に変わったECの水晶体に、高速で迫った水球が叩きつけられた。


「じゃあ、早い者勝ちってことで、いいんじゃないかしら?」


 透明に変じ落下したECを見据えてそう提案するミツキ。

 四人は彼女のその一言を聞き、一斉に駆け出して叫んだ。


「「「「異議なしっ!!!」」」」


 そしてECの体に向けて、己の信ずる一撃を解き放つのであった。




なお、与えているダメージは一定量の模様。

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