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log174.空中要塞アバロン

 雲海の中より姿を現したアバロンは、まるで空中庭園のような姿をしていた。

 船体の上半分はドーム状の建造物……そのものずばり要塞のように見える。そして下半分には離陸時にでも引っ張ってきたのか巨大な岩石が引っ付いている。

 その圧倒的な質量は、セードーの遠近感を狂わせるには十分だった。まだ距離は遠いはずなのに、まるで目の前にあるかのような圧倒的な存在感だ。

 円卓の騎士(アーサーナイツ)にとっての絶対守護領域……それが、アバロンなのだ。

 しかし飛空艇と聞いて、船のようなものを想像していたセードーがいわく言い難い表情となった。


「あれがアバロン……?」

「なんやあれ……。なんちゅーか……ほら、あれちゃうん? 大昔の映画にあんなんなかった?」


 同じようにアバロンの姿に不審を覚えたらしいウォルフが何かを言いかけるが、それを遮るようにアスカが声を上げた。


「間違いなくあれがアバロンだ! 円卓の騎士(アーサーナイツ)の所有する空中要塞……! 最大収容人数は一千人を超えるぞ!」

「いっせんんん!? おいおい、聞きしに勝るなぁ、うん!」


 アバロンのスペックを聞き、アラーキーは素っ頓狂な悲鳴を上げた。


「そんなにすごいんですか?」

「すごいなんてもんかよ! 今まで確認されてきた飛空艇の収容人数は最大でも100なんだぜ!? その10倍とか、どんだけでかいんだアバロン……!」


 ミツキの不思議そうな問いに対するアラーキーの答えは今までになく逼迫している。

 最悪、敵の人数は一千人となるわけだ。まあ、今の円卓の騎士(アーサーナイツ)、特にノースにそこまでの求心力があれば、という話だが。


「規模としてはちょっとした町クラスか……。どう攻め込んだものか」

「ダンジョンが浮いてるようなものですね……」


 一千人を収容できるとなれば、内部も相応に複雑だろう。

 今更ではあるが、たった数人で攻め落とせる要塞ではないだろう。

 だがここまで来て引き返すのもむなしすぎる。


「んだよ、やるこたぁかわんねぇだろ!? とっとと行って、大将首へし折って終わりだろ!?」

「せやせや! ここまできてびびっとらんとぉー、行くでぇ!!」


 サンは若干怖気づいたように見えるセードーとキキョウを鼓舞するように叫び、一番槍を横取りするかのようにウォルフはアバロンへと突撃してゆく。

 それを見て、アスカは慌ててエアバイクのアクセルを開いた。


「あ、こら!? 待て、ウォルフ……!」

「おいこらウォルフー! 一番とるんじゃねぇよ、行けアスカー!」


 ウォルフを追いかけるアスカ。

 それに追随するように、アラーキー達の乗るフラムとセードーのエリアルボードが追いかける。


「元気ですねぇ、ウォルフさん……」

「先走っていきなり堕ちなきゃいいけどなぁ、うん」

「距離は開いています。余裕はあると思いたいですが……」


 先行するウォルフを追うように飛ぶセードー達。

 近づくにつれ、アバロンの巨大さ、その質量が与える圧迫感がセードー達の元にも届いてくる。


「本当に大きいです……!」

「こうした真っ当な城攻めはさすがに初めてだなぁ、うん」

「この間のマンスリーイベントは……さすがに参考にならないわねぇ」


 こうも巨大だと、さすがに攻めあぐねいてしまう。

 しかし猪突猛進を絵に描いたような男であるウォルフは、何も考えずにアバロンの外壁へと一気に近づいてゆく。


「はっはー! ワイが一番乗りやー!」

「おい! 不用意に近づくな!!」

「そーだぞ! 一番はあたしんだー!」


 そしてそれを追うアスカのエアバイク。

 サンもアスカの背中から乗り出さんばかりの勢いであるが、アスカは鬼気迫らんばかりの様子でウォルフを追いかけている。

 しかしウォルフにはそんなアスカの様子は欠片も伝わらず、余裕の表情でアバロンへと急接近していった。


「はーん! ハイエナばっかりやっとる軟弱ギルドの飛空艇がなんぼのもん――」


 円卓の騎士(アーサーナイツ)への嘲りを隠さない様子のウォルフに対し、アバロンからの一矢が届く。

 具体的には避けようのない速度でのレーザー光線という形で。

 ぴゅん、と言う音とともにウォルフのかけていたサングラスが吹っ飛んでゆく。


「………は?」


 かろうじて耳を掠めただけであったが、装着していたアクセサリーが一発で吹き飛ばされ、ウォルフは一瞬動きを止める。

 そんなウォルフを、アバロンの外壁に突如出現した無数の目の模様が見据える。


「は? は……」


 次の瞬間、目は瞬きと共に無数の対空レーザーをウォルフに向けて照射した。


「はっ、はぁぁぁー!?」

「呆けている場合かぁ!!」


 危うくレーザーに全身を貫かれるところであったウォルフであったが、寸前でその首根っこをアスカが引っさらう。

 虚しく虚空を貫くレーザーを避け、アスカは一旦アバロンから離れようとする。


「おがー!? ありがとう、しかしくびは! くびはやめぐぎゅ」

「喋るな! まだ射程距離から――!!」


 しかし、アバロン外壁に次々と現れた対空レーザー砲台はアスカを睨み据え、真っ赤な光線を彼女へと照射し始める。


「くっそ!」

「うぎゃぁー!? 目玉キモい、レーザーこえぇー!?」


 アスカはアクロバティックな機動で対空レーザーを回避してゆくが、逆に機動上にレーザーを置かれ、だんだんと追い込まれていってしまう。

 その状況に気が付き、サンは慌てて声を上げる。


「おい! アスカ!」

「わかってる!!」


 アスカ以上に追い込まれていることを理解しているアスカも焦って叫ぶが、退路を見出しきれない。

 やがてレーザーの檻はアスカを袋小路へと追い込み、逃げ場を完全にふさいでしまう。


「くっそ……!」


 アスカは掴みっぱなしであったウォルフの首根っこを投げ捨て、あえてレーザーの照射先に身を躍らせる。


「サン! 飛べ!!」

「へ!?」


 そうしてサンに指示を飛ばし、彼女の体も放り投げる。


「ちょ、おいぃぃぃ!?」

「あと一人くらいなら、フラムに乗れるだろう!?」


 サンはそう叫び、対空レーザーを己の一心に集めるべく動く。

 対空レーザーはウォルフやサンではなく、忙しなく動くアスカへと狙いを絞る……彼女の狙い通りに。


(囮になるのは不本意だが……止むを得ない……!)


 アバロンの対空レーザー、いわゆる防衛機構はギルドハウスの罠として起動する。そして、罠はプレイヤーをリスポンへと追い込むのだ。例え、ギルドハウスに据えられたものであったとしても。


(重要なのは彼らが生き残ることだ……! 私なら、このレーザーにある程度耐えられる……!)


 レーザーの攻撃力は、アスカであれば数発耐えられる。

 その間に何かができるかどうかは怪しいが、闘者組合ギルド・オブ・ファイターズの誰かが浴びるよりはましだろう。彼らなら一発で蒸発する。

 レーザーが自身の体に照射される数瞬の間に、アスカは歯を食いしばる。


「できるなら……こうなりたくはなかったがな!」


 迂闊なウォルフに向けて呪詛を吐くアスカに、レーザーが集中する――。


「五体武装・闇衣――」


 その時。


「天之帳……!!」


 暗い、闇の波動が壁となり、アスカの身を守ってくれた。

 レーザーが闇の波動を焼く音が、やけに大きく響く。


「これは……!? セードー!?」

「属性は〈光〉のようだが……威力は大したことないな……!」


 エリアルボードに闇の波動を纏わせたセードーが、アスカの盾になるように飛び込んできたのだ。


「アスカ、今のうちに引け!」

「……! すまない!」


 身を挺し自身を守ってくれたセードーに一言礼を言い、アスカは一足飛びにレーザーの射線から逃れる。

 ひたすら浴びせられるレーザーに耐えるセードーはアスカが離脱したのを確認してから闇衣を解き、レーザーの雨を掻い潜ってゆく。

 迷路か何かのように伸びる対空レーザーを躱すセードーは、一介のスケートボーダーのようにも見える。

 瞬く砲台を横目で確認しながら、セードーは小さく笑った。


「射線は正確なようだが、まっすぐなのが幸いだな……!」

「あれが見えるとか、半端ないなぁ、うん」


 飛ばされたサンをワイヤーナイフで回収し、アスカのタンデムシートへと移してやるアラーキー。


「ほれ、アスカさんよ。ポイ捨て空中投棄はいかんぜ?」

「うわぁーん!? 割とマジで怖かったよぉー!!」

「……すまない」


 割と本気で泣きが入っているサンの声に、アスカは申し訳なさそうに謝罪する。

 緊急時とはいえ、さすがに乱暴に放るべきではなった。

 そしてなんとか自力で復帰してきたウォルフは、咳き込みながら問いかける。


「げほごほっ!! ……首根っこ掴まれましたワイへの謝罪は?」

「在ると思うのか?」

「スイマセンデシタ」


 迂闊に対空レーザーを起動させた馬鹿者(ウォルフ)を睨みつけるアスカ。

 殺気にも似た感情が込められた視線を前に、ウォルフは器用に土下座をして見せた。

 回避行動をとりながら距離を離そうとするセードーを眺めながら、ミツキはアスカへと問いかける。


「……あれがアバロンの防備だとすれば、どう潜り抜ければいいのかしら? 下手に近づくとハチの巣でしょ、あれじゃ」

「いや、あの対空レーザーが起動しない侵入ルートがあるんだ。元々アバロンは、飛空艇入手イベント時にはダンジョンそのものとして機能していた。当然、専用の攻略ルートがある。……起動した以上、もうそれは使えないが」

「へへー!」


 じろりとウォルフを睨むアスカ。

 ウォルフは再び土下座の体勢へと移行した。

 たまに飛んでくる流れ弾を回避しながら、アラーキーは軽く思案する。


「よっと。……なら、どうする? こうなると、向こうもこっちに気が付いたんじゃないか?」

「だろうな……。だが、やることは変わらない。となれば、ここからは強行突入になる。強引に突破するよりほかはないだろう」

「ナハハ、プランBってか。なら、外壁の一部を破壊して、そっから侵入かねぇ」


 アラーキーはそう言って、アバロンの外壁を観察する。

 壁という壁に目玉型の対空レーザー砲台が出現している。何もなかったはずなので、あれも魔法で出現したのだろう。

 だったら壁ごと破壊してしまえば、その部分の対空能力も破壊できるし、侵入経路にもなる。一石二鳥という奴だ。


「とりあえず、セードーの救出と、突入プランの作成と参りますかね!」

「ええ! プレイヤーと違い、ギルドハウスならこっちの攻撃も通る!」


 アスカは体勢を立て直し、アクセルを吹かす。


「先に行きます! アラーキーさんはセードー君の救出を!」

「おうさ!」

「ワイは?」

「今度は好き勝手にするな! 行くぞ!」


 叫んでアスカは一気にアバロンへと接近する。

 勇ましき突撃兵の背中を、アラーキー達が追いかける。




なお、対空レーザーの威力は、大体ウォルフ位なら即死する程度の模様。

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