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指輪

「ふむ」


 うん。


「思い付かねえや」


 助けてドラ○もーん。




 リンベルとのデートの日から数日。あの日はさっさと帰ってカメリアと合流した。リンベルはようやく空中散歩にも慣れてくれたようで、最後の方は完全に楽しんでた。またやってあげよう。

 次の日からはリンベルの観光に付き合ったり、適当にギルドの依頼をこなしたり、カメリアと戦闘訓練したり、雑に良さげな物件を探してみたりしてる。そろそろ物件探しを本格化するべきかね。

 いやまあそれはどうでもいいんだ。問題は別にある。


 そう、プレゼントだよ。結局あの日は何にも買えなかったし、今に至るまで何を贈ればいいのかすら分かってない。どうしたもんかね。


「そんなわけでさ、なんかいいアイデアない?」

「なんで俺にそれを聞くんだよ……」

「なんでって……そこにいたから?」


 たまたま前を通りかかった仮面売りの露店、そこにいたおっさん―――前に変装用の仮面を買った時の店主だ―――に適当な訊いてみる。幸い向こうも俺達のことは覚えてたみたいだし、丁度いい。


「お前さんよ、そういうのは心がこもってれば何でもいいんだよ。他人にどうこう言われて買ったモンを渡されても何にも嬉しくねえよ、あの嬢ちゃんはな」

「そんなもんかねえ」

「そんなもんだ」


 おっと、思ったよりちゃんとした答えが返ってきたぞ。でもなあ。


「そうかもしれないけど、結局私は何を渡せばいいのかな」

「自分で考えろよ」


 全くもってその通りで。


「……まあ、手頃なモンっつったら、髪飾りとか、指輪とかじゃねえの」

「髪飾りはともかく、指輪ねえ……なんか重くない?贈り物としては」

「俺が知るかよ。最近は若い奴らの中でそういう流行があるって聞いただけだ」

「ふーん……」


 うーん、指輪か……。


「そっか、ありがとうおじさん。参考にするよ」

「おう、とっととやれよ?」

「はは、まあなるべくね。……あ、これ買ってくよ」

「お、毎度あり」


 立ち話に付き合ってくれたし、何か買っていっておこう。リンベルが買ったのとおそろいの仮面でいいかな。





「ふーむ」


 指輪と聞いて微妙に心動かされてしまった。

 重いと言われても仕方ない。ただ、愛していると言っても過言ではないリンベルに指輪を贈る、絆を深める、ハッピーエンドだ。ずいぶんと素敵なことじゃないかい?


「どうでしょう、こちらはブルーナイトという宝石を散りばめた―――」

「次」

「……はいー……ではこちらは―――」


 ただなあ、やっぱりリンベルに似合いそうな物がないんだよなあ。あの真っ白な髪と肌に何を合わせればいいのか全く分からん。アルビノかって思うほどだからな。瞳が金色だからそんなことはないんだろうけど。てか考えてみれば金の瞳って珍しいな……。


「いかがてしょう?」

「あー、もういいや、ありがとう」

「…………またのご来店お待ちしておりますー……」


 そんなことを考えながら、昨日も立ち寄った宝石店から出る。やっぱりここにはピンと来る物はなかった。


「どうしたもんかなー……」





「ねえカメリア」

「はあ……」


 なんだその『私に聞かれても』って顔は。


「奴隷の私が、ユウカ様に参考になるような意見を出せるとは思えないんですが……」

「そこはまああれだよ、搾り出して」

「はあ……」


 なんだその『無茶言いやがる』みたいな顔は。



 ぶらぶら散歩から帰ってカメリアに突撃隣のプレゼント事情。あなたならどうしますかとお尋ねしますが、これ如何に?


「……つい先日まで閉じ込められていた世間知らずの奴隷の意見として聞いていただきたいのですが」

「うんうん、全然いいよ」

「分かりました……。私としては、指輪はとてもいい贈り物だと思います。邪魔にもならないですし、ユウカ様とリンベル様の、その、友(?)愛をよく表現できると思いますし……」

「ふむふむ」


 そうだね、それがいいところだ。


「でもそのリンベルに似合うような指輪が見当たらなかったんだけど、どうしよう?」

「………」


 なんだその『そんなこと言われても』って顔は。てかこの娘表情に感情が出やすいな。めちゃ分かりやすいぞ。


「……えーっと、その」

「何でも言っていいよ?」

「はい……あの、納得できるものがないのなら、ユウカ様がご自身で作る、というのはいかがでしょうか……?」


 ……ほう。


「なるほど?」

「い、いえ、これはそもそもユウカ様が指輪を作れるという前提がおかしいので……」

「いや、一理ある」

「ええっ!?」


 そうだよ、俺は何を弱気になっていたんだ。無いなら作れ、出来なくてもやれ、世界の基本じゃないか。(違う)


「ユウカ様は彫金までできるんですか!?」

「いや無理だけど」

「ええっ!?」

「まあ何とかなるでしょ、私だし」


 だいぶ前の話になるけど、一番最初『女神の領域』で生産系の才能にバリバリポイント振った気がする。だからきっと指輪も作れる、はずだ。初めて生産系の行動するから分からんけど。

 そういえば《毒薬作成》に影響するかもってことでそうやって配分したけど、結局関係あったのかね。現状困ってることもないから別にどうでもいいか。


「ありがとカメリア、すごい参考になったよ」

「それなら良かったです……」

「じゃあこれお礼の薬ね、また50錠渡しとくよ」

「…………………はい」


 なんだその『お礼それかよ』って顔は。


「じゃあリンベルに余った金属貰いに行ってくる」

「えっ、リンベル様から直接ですか!?」

「言わなきゃバレないからヘーキヘーキ」


 やっぱりこういうプレゼントはサプライズがいいよなー、とか考えながら寝室で爆睡中のリンベルに突撃。

 金属分けてもらって、まずは適当な練習からするかな。


「リンベルー起きろー」

「んにゃぁ……」




 ◇




 〈スキル《彫金Lv1》を獲得しました〉

 〈スキル《細工Lv1》を獲得しました〉


 〈《彫金》のLvが2に上昇しました〉

 〈《細工》のLvが2に上昇しました〉

 〈《彫金》のLvが3に上昇しました〉

 〈《細工》のLvが3に上昇しました〉

 …………

 〈《彫金》のLvが6に上昇しました〉

 〈《細工》のLvが6に上昇しました〉



「……ん?」


 なんかレベル上がるの早くない?


「……んー?」


 手に持つ試作品を見る。


 宝石店でちらっと見て覚えた通りの型、計5種。細部まで寸分違わず、最早市販されても違和感は全くないレベル。というよりむしろ市販品より高品質?


「……んんー」


 いや……やばいな。これが才能値の効果か。

 いや、確かに今までも明らかに俺の成長速度は異常だった。だって、そりゃそうだろ?たった数カ月でAランク、実力で言えばSランク相当にまでなるとか常軌を逸してる。この世界の人達は一生掛けてそこまで到達するってのに。いくら大量に魔物を倒してると言っても、それだけじゃ説明にならない。倒した数なら竜の咆哮のみんなの方が多いだろうし。

 ただ、今回は更に頭がおかしい。数時間作業しただけでもうスキルレベルは6だ。これはもうあれだ、バグだ。経験値っていうシステムの崩壊だよこんなん。不公平が過ぎる。女神は何やってんだ、調整ミスだろこれ。


「まあ、使えるなら使うんだけどさ」


 俺に不利益にならないならどうでもいいんだけどね。


 さて、これで俺自身が指輪を作れることが分かった。これから俺がするべきことは、リンベルに似合う指輪のデザイン考案に、それに相応しい金属の調達……はリンベルから巻きあげればいいか。あと生産スキルのレベル上げをして完成度を高めて、最後に完成品を作ればいいわけか。

 いや、それといつ指輪を渡すのかも決めておかないと。やっぱ竜神祭中がいいのかね。これは誰かに聞いておこう。


「んあー、肩凝るわー」


 ちまちました作業をするとどうしても身体が固くなる。パーッと運動して身体ほぐしたいな。

 うーん、よし。


「カメリアー」

「はい」

「ちょっとそこの空き地で一戦やろう。身体動かしたい」

「……はい」


 そういう時はカメリアとの殺し合いだ。丁度いい運動になるだろ。


「リンベルー、アイテムボックス借りるよー」

「は〜い」




 現在地。鍛冶ギルド近く、空き地。リンベルは鍛冶ギルドの中で鍛冶作業中。さっきまではリンベルに付き添い兼、道具を借りて指輪の製作をしてた。もちろんリンベルからは死角の場所でやってました。リンベルはわざわざ付いてこなくていいって言ってたけど、俺も用事があったからセーフ。


 カメリアとの試合は普段は冒険者ギルドの鍛錬場を使ってるけど、鍛冶ギルドからは少し遠いから、近場のここでやる。ちなみにここら一帯は鍛冶ギルドが近いために騒音問題がひどいらしく、人気が無くて空き地が目立つ。王都の他の地区はキッツキツなのにな。うーん、ここら辺の土地を買い取って拠点を建てるのもありかもしれない。


 いや、そんなことより試合だ。

 俺の持つ武器は特になし。《魔刃》と《魔遊剣》を刀っぽく使うか、単純に体術だけの時もある。蒼黒碧黒は試合に使うには鋭すぎるからね。

 対するカメリアはもちろん槍。ただし、その槍は今もアイテムボックスの中に入ってる。


「いつでもどうぞ」

「では」


 カメリアには殺す気で来るように言ってある。奴隷紋の効果で主人を害せないっていうのがあるけど、主人自身が認めていたらそれは許可される。そうでもしないと訓練にならないし、そもそも俺がカメリアに殺されるわけがない。3倍のステータスの差は絶対的だ。


「行きます」


 カメリアが強く踏み込み、アイテムボックスから槍を取り出す。試合開始だ。


 さて、それじゃあいつも通り、運動不足の解消といきますか。

5章までの大まかな流れだけ頭の中にあってそれを文に起こすのがめんどくて書かない、っていう状況が続いています

今後もこんな感じに不定期更新になると思われますが、エタるつもりはないです

早く書けって言う方には申し訳ないです

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、久し振りの更新はお疲れ様です! ユウカさんもそういう残念臭いの所が有りますねw まぁ、作者さんも学業生活とかが有りますから、ゆっくり頑張ってね!
[一言] 自分のペースで更新頑張って下さい
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