装備
「……ふ」
目が覚める。
確認。漏れなし。
「ふふふ」
勝った!ユウカが勝った!
我がパンツに一片の隙間なし!
生理は時代の敗北者じゃけえ……。
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!
「……朝ごはん食べよう」
相も変わらず身体はダルい。が、昨日ほどではない。これならリンベルのとこに行くことに支障はない。
「楽しみだなぁ」
とうとう今日だ。マイ刀ですよ、マイ刀。嬉しいなあ。
「何時行けばいいかなぁ」
いつ出来るか聞き損ねてた。後で一回行くか。
っと、その前に。
「おはようございます」
「ん、ああ、おはよう―――」
今日も始まりだ。
「お邪魔しまーす……」
突撃リンベルの朝ごはん。
「ぐぅー、すぴー」
「………」
「ふがっ……ぐぅー」
いびきおっさん臭え……。
「リンベルー……?」
「ぐぅー、ぐぅー」
ぐっすり寝てやがる。つまらんな。叩き起こしてやろうか?
「ユウカ様、どうかそのままにしておいてあげてくれませんでしょうか」
「む」
出てな、丁寧ギャップ星人。
「リンベル様は朝まで作業をして、今さっきようやく眠りにつかれたのです」
「………」
……俺の刀、だよね?
「……分かってます、さすがに起こしませんよ」
「ありがとうございます」
ふむ、でもこれじゃあ何時完成するのか分からないな。
「貴方は刀が何時完成するか、ご存知ですか」
「夕方頃……と、リンベル様は寝る前におっしゃってました」
夕方ね。おーけー。
「では、夕方頃また来ます」
「了解しました、リンベル様にも伝えておきます」
「お願いします」
鍛冶ギルドから出る。
うーん、また暇になっちゃったな。何しよう。
「……あ、服でも買おうか」
今着てる服はカレンさんから借りたものだ。
身体が成長して前まで着ていた服がキツくなったから(主に胸が)、今俺全く服持ってなかったんだ。
「どこで買えるのかな」
通りに出れば分かるかな。
◇
「いや〜ん、可愛い〜!」
「………」
服飾店にて。
「あら?何やってるの?」
「あ!見てください!すっごく可愛らしい娘が来たんですよ!」
「まあ本当っ!これは腕がなるわねー!」
「でしょ〜っ?」
「……あのー……」
「あっ!次これ着てみて!早く早く!」
「……はい」
着せ替え人形なう。
「これもか〜わ〜い〜い〜!」
「……素晴らしいじゃないの」
「………はあ」
なんでこうなった。
街の中心の方に服飾店を発見。
わりとオシャレ目な女性用店だったので入ってみたら、やたらフレンドリーな若い店員に捕まって、今に至る。
「やっぱり素材がいいと何着せても似合うわね〜」
「あ、これなんかどうかしら」
「あっ!いいじゃないですかっ!」
なんかたぶん偉い人も加わってるし。
「はい!次これね!」
「……はい」
渡されたのはフリフリのドレス。何時着るんだよこれ。
「………」
「きゃ〜!超可愛い〜!」
「似合うわねー……ならこっちの大人っぽいのはどうかしら?」
「いいですね〜!はいっ、次これね!」
「……はあ」
渡されたのは漆黒のドレス。背中がオールパッカーンしてるエロいやつ。いや何時着るんだよ。
「……出来ました」
「!??!? ぶはっっっ……と、尊い……っ」
「色気あるわね……」
「……はあ」
いつ終わるんだろうな、これ。
「「「「ありがとうございましたー」」」」
「また来てね〜!」
もう二度と行かない。
結局夕方までやりやがったこいつら。最後の方は店員全員参加してた気がするし。
迷惑料としてなんか大量の服をタダで渡されたけどさ。おかげで両手の革の鞄がパンパンだよ。あ、ちなみにこの鞄も店がくれたやつ。
「もう時間だな」
そろそろ完成する頃だろう。
一旦宿に帰って荷物を置いて、竜の咆哮も連れてリンベルのとこに行こう。
「楽しみだなぁ」
「リーンベールさーん」
「お、来たねユウカちゃん!刀出来てるよっ!」
「リンベル好きです愛してます」
「ふぇっ!!?いや、その……」
鍛冶ギルドへ到着。もちろん竜の咆哮も一緒に。
「はじめまして、リンベルさん。Aランク冒険者パーティー竜の咆哮でリーダーをしています、アレンといいます」
「同じく竜の咆哮のゲイルです、お会いできて光栄です」
ただカレンさんとリュエルさんは来なかった。大人数で押しかけても迷惑だろうってことらしい。
「……ああ、うん、よろしくぅ……」
あれリンベル、なんでそんなテンション低いんだい?
いつもの馬鹿リンベルはどこ行ったよ。
「……ちょっとユウカちゃん!男の人だけなんて聞いてないよ!(小声)」
「あれ、駄目でしたか?」
「ダメじゃないけど……私男の人苦手で……」
あー、確かに前そんなこと言ってたっけ。
「でも鍛冶ギルドの人達には普通に接してるじゃないですか」
「あの子達は……なんていうかこう、後輩だから大丈夫なのっ」
「えぇ……?」
なんじゃそりゃ。
「……まあとりあえず、話は後にして、私の刀見せてもらえませんか?」
「あっうん、いいよ」
さっきからドキドキワクワクだよ。
「ふふふ、今回はすごいのできてるからね……私の最高傑作だよっ!」
「おおお」
リンベルって凄い人なんだよな?その最高傑作ってなんか、凄そう(語彙力)。
「じゃーん!はいこれ!」
「おぉ……?」
リンベルが差し出してきたのは、2本の長い刀。
「……2本?」
「ユウカちゃん2本欲しそうだったから……余った素材で作っちゃったっ!」
……こいつぅ。
「……ありがとうございます、リンベル」
「いいってことよお!」
なんだよこんにゃろう、嬉しいじゃねえか。
「ふひゃ!あひゃひゃひゃ!くすぐったいよユウカちゃん!」
「おっと、すみません、つい」
リンベルをわしゃわしゃしてしまった。触り心地いいんだよな、リンベルの髪。
「これはなかなか……」
改めて手に持つ刀を見る。
1つはとても長く、1つはもう片方より少し短いが、それでも十分すぎるほど長い。
そしてそれぞれが、リンベルの髪のような純白の鞘に納められている。
その鞘には金色の……というか、たぶんオリハルコンの装飾が所々になされていて、縁や側面の中心に金の線が引かれており、引き締まって見える。
さらに、側面に金の龍が緻密に描かれており、とても美しい。
柄は金属で編み込まれた物。
これは俺の髪と同じような色合いで、少し青みがかった銀糸で作られている。これは……たぶんミスリルかな?これもやはり綺麗だ。しかもすごく握りやすい。最初から手に馴染む。
……なんだろう、これだけですごく高そうに見えるんだけど、凝りすぎじゃない?ていうかこれ3日で作ったの?凄すぎじゃない?
「……リンベル、凄いですね」
「ふっふ〜ん、やっとユウカちゃんも分かってくれたか〜!」
「ええ、素直に凄いです」
「えへへへぇ」
なんだその顔、可愛いじゃねえか。
「それよりユウカちゃんっ、刀身見てよっ!そっちの方がすごいんだから!」
「そうですね、もったいぶらずに見ましょうか」
刀身が長すぎて鞘から抜くのも大変だけどね。
「では」
その刀身を、解き放った。
漆黒。
純白の鞘との対比で、さらに目立つのはその黒さ。
あらゆる光を呑み込んでいると錯覚するほどの、深い黒。
それは優美な刃紋を描きながら、美しい曲線を象る。
「ほぅ……」
さらに、思わず息をはかせるような存在感がある。
弱い魔物なら、これを見せるだけで逃げていきそうなほど。
……なんで刀に存在感があるんですかね?
「……これは……素晴らしいですよ、リンベル」
「ふふっ、ありがとっ!」
これは本当に予想を超えてきた。素晴らしすぎるよ。
「ねえユウカちゃんっ、名前付けてあげて!」
「名前、ですか?」
「うんっ、まだ銘は付けてないの、これから使うユウカちゃんが付けなきゃと思って!」
「おや、それはありがとうございます……そうですね……」
白に、青に、黒か。
いや、ここは俺と刀の共通の特徴から……。
「決めました、『蒼黒』と『碧黒』にします」
長い方が蒼黒、短い方が碧黒だ。
刀の黒と、俺のイメージカラーの青から取った。
まあ、いい感じじゃない?
〈名称:蒼黒との契約が完了しました〉
〈名称:碧黒との契約が完了しました〉
……ん?
「あ、そうだ、これ鑑定してみてもいいですか?」
「あっいいね〜!私もいろいろ知りたいからやってやって!」
「では、《鑑定》&《見切り》」
あっ、これは昨日見つけたんだけど、鑑定と見切りを同時に発動すると効果が上昇するらしい。
うん、どうでもいいね。
さてと、鑑定結果は――――
名称:蒼黒(呪いの武器)
種族:生きた武器
等級:幻想級
製作者:リンベル=アルフォード
契約者:ユウカ=ロックエデン
スキル:《共鳴:碧黒・ユウカ=ロックエデン》《不壊》《呪斬》《自己回復》《威圧》《自我》《血ヲ吸ウ者》
備考:漆黒の刀身を持つ至高の武器。いずれ、その切っ先は神にも届く。刀身1m29cm。『碧黒』とは対。原料はオリハルコン、ミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイトetc……。ユウカ=ロックエデンの魔力により変質し、呪いが備わったほか、ユウカ=ロックエデンの願いに応えスキルが発現、さらに自我が芽生え、生きた武器となった。リンベル=アルフォード、ユウカ=ロックエデン以外の者が触れると、魔力を吸収される。
名称:碧黒(呪いの武器)
種族:生きた武器
等級:幻想級
製作者:リンベル=アルフォード
契約者:ユウカ=ロックエデン
スキル:《共鳴:蒼黒・ユウカ=ロックエデン》《不壊》《呪斬》《自己回復》《威圧》《自我》《血ヲ吸ウ者》
備考:漆黒の刀身を持つ至高の武器。いずれ、その切っ先は神にも届く。刀身97cm。『蒼黒』とは対。原料はオリハルコン、ミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイトetc……。ユウカ=ロックエデンの魔力により変質し、呪いが備わったほか、ユウカ=ロックエデンの願いに応えスキルが発現、さらに自我が芽生え、生きた武器となった。リンベル=アルフォード、ユウカ=ロックエデン以外の者が触れると、魔力を吸収される。
…………ナニコレ。
呪われてるんですけど。幻想級とかいう異世界序盤に見えちゃいけない文字が見えるんですけど。スキルめっちゃ付いてるんですけど。神にも届くとか書いてあるんですけど。
ナニコレ。
(よろしく)(………よろしく)
…………ナニコレ。




