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初体験

「ふふふ」


 かなり読んだぞ。全体の7分の1くらい。この部屋を埋め尽くす本の7分の1だぞ?頑張ったなあ。


「さて、帰るか」


 もう夕方。

 お昼も抜いて読書し続けてたから腹減ったよ。

 ……あれ、なんで俺こんなに本読んでるんだろう。


「……まあいいか」


 そのうち役立つだろ。





「ただいま」


 ……竜の咆哮はいないか。そのうち帰ってくるかな。


「……『風聞(ウィンドイアー)』」


 絶空魔法で聞き耳を立てる。

 この宿、宿の外、ギルドの近くまで音を拾う。からの多くの精神でそれを処理。人じゃできないね。


「……もうすぐ帰ってくるか」


 ギルドの中で彼らの話し声が聞こえる。別れの挨拶の途中かな?


「晩ごはんは……待ってようか」


 一緒に食べた方がおいしいからね。





「おかえりなさい、皆さん」


「ただいまユウカちゃん」

「ただいま……」

「おーう、あー腹減った」

「……ああ」


 やっぱりすぐ帰って来た。うーん、こういう魔法は便利だな。次は視覚も補う魔法作ってみるか……。


「早く食べましょ。ユウカちゃんは?」

「あ、ご一緒させてください」

「ならここね」

「は、はい」


 カレンさんの隣なのはもう定位置なんだろうか。


 注文して出てきたのはやっぱりいつもの肉定食。


「いただきます」


 ヴァリエーションェ……。




「ユウカちゃん今日は何してたの?」

「ずっと資料室に籠もって本読んでました」

「えぇ……」

「なんでそんなことを……?」

「やっぱり知識は重要ですからね。今のうちに、出来るだけ詰め込んでおかないと」


 まだ生きていた記憶喪失設定。忘れないでね?


「そう……頑張ってるのね」

「いい子ですね……よしよし」

「リュ、リュエルさん……少し恥ずかしいんですが……」

「あらあら、子供は撫でられてなんぼでしょ?よしよし」

「うぅ……カレンさんまで……」

「うーん、可愛いわあ〜」

「可愛いですねぇ……」

「ぅぅうう……」


 なんだこの公開処刑は。

 なんでこうなった。


「ご、ごちそうさまでしたっ!おやすみなさい皆さんっ!」

「あっ、逃げたー」

「ああ……もふもふが……」


 逃げるように離脱。いや実際逃げてるんだけども。周りの客の視線が生暖かすぎる。


 ……てかリュエルさん、もふもふって何ですか。





「ふう」


 部屋へ逃げ込んだ。もう安心。

 あ、ちなみに部屋代は今は自分で支払ってるし、今までの分も竜の咆哮に返済している。いらないって言われたけど、俺の気が済まないからね。


「さて」


 なんでも屋で買った鞄から本を取り出す。

 資料室から少し借りてきちゃった。どうせ誰も見ないからいいよね?


「ふんふふんふーん」


 寝るまで読みましょ。







 ◇







「……む」


 朝、か。

 寝落ちした。


「………」


 なんかダルい。


 すごく、やる気が出ない。


「……ん」


 二度寝しよう。







「……ぬ?」


 目が覚める。


 でも相変わらずダルい。


 なんでだろ。


「……ふわぁぁあ」


 まあ、こんな日があってもいいか……。


「う〜、っん」


 ベッドの中で伸び。


「……はあ」


 とりあえず、着替えるか。



 さっさと寝間着を脱い………………。



「…………」



 ……………。



「……カレンさーーーーん!!助けてーーーー!!」


 バンッ


「どうしたのユウカちゃんっ!?」


 来るの早っ!?

 いやでも今回はありがたい。

 だって―――



「か、カレンさん、こ、これは……」

「どう……って、あー……もしかして、初めて?」

「……はい」



 あそこのところが赤く染まった寝間着を見て、カレンさんは納得した表情を見せた。





 ―――男は、生理なんて知らないよ……。







「はあ……」


 いや、なんか下半身が冷たいなとは思ってたけどさ。


「血って洗えば落ちるのかな……」


 今までは返り血は避けるか、避けられない時は大体服自体がボロボロになるような相手だったからなあ……よく分からん。


「魔法使えば落ちるわよ」

「ああ、なるほど」


 そりゃ便利なことで。


「とりあえず着替えと……はいこれ」

「こ、これは……」


 な、ナプキン……だと……。これを俺が付けるというのか……。


「大丈夫?痛みとかはある?」

「痛みは大丈夫です」


 なぜなら《痛覚遮断》でカットされるから。もしくは『永劫なる悼み』の痛みでかき消されるから。


「なら、そこまで重くはないのかしらね」


 めちゃダルいんだけど。


「今日は寝てなさい。気怠いでしょ?」

「はい……分かりました……」


 ああ……今日も暇になってしまった……何しよう……。


「本でも読んでなさい」


 昨日やったよそれ……。



「お大事にねー。後で朝ごはん少し持ってくるから」

「ありがとうございます……カレンさん……」



 ああ、ダルい。

 今日はずっとこのままか……。


 寝たままでも出来ることはないか……。



「……あ、《鑑定》が欲しい」



 取得できるかな?







 ◆







 side:カレン






「ユウカちゃんが生理なんてねえ……」


 いきなり呼ばれたからビックリしたわ。

 まあ、初めてなら仕方ないか。


「これでよし、と」

「カレン、何やってるんだ?」

「ユウカちゃんに朝ごはんを届けるのよ」

「ん?そりゃまたなんで」

「体調悪いらしいからね。部屋まで持っていってくるから」

「なるほど、なら早く行ってやれ」

「分かってるわよ」


 お腹に優しそうなものを選んで盛り付けてもらう。肉はなしかしらね。

 お皿を受け取り、階段を昇ってユウカちゃんの部屋へ。


「……てい……(ブツブツ)……かん……」


 何か聞こえる気がするけど……まあいいか。



「ユウカちゃーん、朝ごはん……よ……」



「……鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定…………」



 そこには、天井の一点を見つめながらずっと『鑑定鑑定』と呟き続けるユウカちゃんの姿があった。



「……ひっ」



 ちょっと怖いよユウカちゃん何してるのっ!?






 ◇






「驚かせてすみません、これで《鑑定》が取得できないかと思って」

「ホントに驚いたわよ……というかそれで取得できるの?」

「どうでしょう……やってみないと分からないですね」


 今までこんなふうにやってたら取れてきたし、たぶんイケると思うけど。


「そ、そう……じゃあ、私は下に戻るわね」

「わざわざありがとうございました」



 軽めの朝ごはんを食べて《鑑定》(もどき)再開。



 いつ頃取得できるかな。







 ◇







 〈スキル《鑑定Lv1》を獲得しました〉



「ホイ来たぁぁぁぉあああ!!」



 おっと、つい素の口調が。

 いけないいけない。



「ふふふ、努力は勝利するのだ……」


 時刻は夜。

 晩ごはんの後のぐだぐだタイム。

 一日中続けていた鑑定チャレンジは、ついに実を結んだ。


「くくく、ふははは、あーっはっはっは」


 笑いの三段活用も出ちまうよ。


「やっと取れたか……」


 《鑑定》があれば相手のスキル構成を確認することができる、らしい。今俺の持っている《見切り》はそういうの見せてくれないから困ってたんだ。

 うん、実際にやってみよう。

 自分に向けて。


「いざっ、《鑑定》!」




 名称:ユウカ=ロックエデン

 称号:異』℉{¢"§¢“∃№“&§)∏℉

 職業:Bランク冒険者

 Lv:^)3ゞ

 体力:≪∃¿℉

 魔力:’’©¤£「‰

 スキル:《〉毒™∬Lv∧》《§∌〈遮∌Lv"》《〜【‡Lv∏€》……





「Fuuuuuu○k!(良い子は真似しちゃいけません)」


 何も見えねえじゃねえかっ!自分ですら見えないってどういうことだよっ!使えねえっ!


「ああ分かったよっ、やってやるよ、レベル上げればいいんだろっ!」


 いつかのレベル上げと同じだ!


「鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定……」



 今日中に3まで上げてやるよっ!









 〈《鑑定》のLvが2に上昇しました〉



 〈《鑑定》のLvが3に上昇しました〉







「鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定……」



 いつまでやろうかな、これ。

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